小細胞肺がんの治療-標準治療-


  • [公開日]2017.12.07
  • [最終更新日]2020.07.07

小細胞肺がんの標準治療について

小細胞肺がんは進行が速いがんであり、残念ながら腫瘍が発見された時には手術が適応にならない時期の腫瘍であることが多いのが現状です。小細胞肺がんに対して手術療法が選択される場合は、肺以外の他の臓器やリンパ節転移がない状態(I期)までであり、小細胞がんの治療は化学療法と放射線療法がメインです。小細胞肺がんは他の肺がんと比べて化学療法と放射線療法への反応性が良いのが特徴です。

小細胞肺がんの標準治療は化学療法と放射線療法ですが、小細胞肺がんの種類によって選択される治療内容は異なります。小細胞肺がんは限局型進展型の2種類があります。

限局型であっても治療の主軸となるのは化学療法と放射線療法ですが、腫瘍が他臓器やリンパ節転移がないI期に分類された場合は手術を行うこともあります。手術を行うことができれば、5年生存率は40%~70%であり、長期の生存が期待できます。手術は腫瘍とその周辺組織のみを摘出する部分切除術よりも、腫瘍ができた肺葉を摘出する肺葉切除術を行う方が予後は良いとされています。

しかし、手術適応になる場合でも全身状態が良くない場合は手術を選択しません。全身状態はEOGE PS(Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status)の分類を使って判断しています。PSは0~4までの数字で表すスコアで、数字が高くなるほど全身状態が良くないことを示しています。PSが3~4の場合は手術を選択しません。

0:病気になる前と同じように日常生活ができる状態。制限なく活動できる状態。
1:激しい身体活動は制限されますが、歩行はできる状態。
軽い家事や座ってできる仕事など軽作業はできる状態。
2:日中の50%以上はベッド以外で過ごし自分の身の回りのことを全て行い歩行できる状態。仕事などの作業はできない状態。
3:日中の50%以上をベッドが椅子で過ごし、限られた身の回りのことのみできる状態。
4:1日中ベッドか椅子で過ごし、全く動けず自分の身の回りのこともできない状態。

進展型小細胞肺がんは腫瘍が広がっているため、放射線療法で治療できる範囲をこえていることから全身状態(PS)と年齢によって化学療法を組み合わせながら治療を行います。進展型には根治的な放射線治療は適応外ですが、化学療法でがんがほとんど消えた場合は脳への転移を予防するために放射線療法を取り入れて全脳照射を行うことがあります。

臨床試験 臨床試験は新たな治療法や治療薬の効果、安全性をヒトで確かめる試験で、治療薬の開発に欠かせない重要なプロセスです。臨床試験の中でも各国の規制当局の製造・販売の承認を受ける目的で実施するものを日本では「治験」と呼んでいます。
 がん治療は、ガイドラインに示されるすでに確立された標準治療もありますが、近年はそれに加えて治験参加も新たな治療選択肢の1つとして考えられています。また、がんの進行程度によっては、がんに伴う症状の緩和を目的とした治療(緩和療法)へ移行することも少なくありませんが、治験を通じてがんそのものに対する治療を継続できることも珍しくなくなってきました。
 現在、日本国内では多くのがんの治験が行われています。治験の情報は、がん診療連携拠点病院のほか、がん情報サイト「オンコロ」の治験相談窓口にて情報収集・相談ができます。

■参照
・筑波大学オープンコースウェア「肺がんの手術療法
・特定非営利法人日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン2019年版
・東京慈恵会医科大学附属柏病院「肺がんの基礎知識

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