小細胞肺がんの治療-放射線治療-


  • [公開日]2017.12.07
  • [最終更新日]2020.07.07

小細胞肺がんの放射線治療

放射線治療は腫瘍に放射線をあてて、腫瘍細胞の増殖を防ぎ縮小させることを目的に行われます。小細胞肺がんでは放射線治療の適応は限局型です。

限局型小細胞肺がんの放射線治療は、標準的には、45Gyを30回に分けて1回1.5Gyを1日2回照射する「加速過分割照射法」を行います。治療期間は3週間となります。通常放射線治療は1日1回ですが、小細胞肺がんは進行が速いので、回数を増やすことによって短期間で多くの放射線を照射するメリットがあるため1日2回の治療を行います。照射する範囲は画像上で見える腫瘍と転移する可能性が高いリンパ節などです。

腫瘍が他の臓器やリンパ節に転移していない、I期の早期がんに対しては「定位放射線治療」を選択することがあります。定位放射線治療は腫瘍部分に集中して多くの放射線を照射する治療で、肺がんに対しての定位放射線治療は体幹部定位照射と呼ばれています。他の組織に照射せずに腫瘍だけに集中して照射できることがメリットです。多くの場合12Gyを4回照射して合計48Gy照射することとなります。一度に大量の放射線を照射することから、呼吸で腫瘍の位置が変わる肺がんはCT検査を利用して厳密に腫瘍の位置を判断する必要があります。通常の放射線治療は10分程度で終了しますが、体幹部定位照射は腫瘍の位置を厳密に確認するため照射に1時間程度かかることがあります。

他に、粒子線治療があります。腫瘍の深さや大きさに合わせて、効率よく照射することができるので、一部のがんで保険適応されています。しかしながら、肺がんに対しては保険適応はされておらず、先進医療として行われています。肺がん治療における粒子線治療については、保険収載を目指して現在、臨床試験が実施されています。

小細胞肺がんが検査をしても腫瘍を判定できないくらいまで縮小した場合は、脳への転移予防のために予防的全脳照射を行います。脳への転移予防のためには化学療法は有効ではありません。なぜならば、脳には血液脳関門といって血液中の有害物質が脳内に入り込まないように、ブロックするシステムがあるためです。化学療法を行っても血液脳関門によって抗がん剤が脳へ届かないのです。そのため放射線治療が用いられます。予防的全脳照射は1日1回2~3Gyの少ない線量を10回~15回照射します。照射が終了するまでには3週間必要です。

一般的な副作用

放射線治療を行うと化学療法と同様に副作用が出現します。皮膚炎、肺炎、食道炎、食欲低下、全身倦怠感などが主な副作用です。得に皮膚炎、肺炎、食道炎は化学療法と併用した治療を行うと早期に出現する副作用でもあります。

皮膚炎

放射線を照射しった皮膚が炎症を起こすことによって発症します。皮膚が赤くなったり、日焼けのように黒っぽくなったり、かゆみや痛みを感じることがあります。皮膚炎は放射線治療終了後、数週間で症状が軽減してきます。

肺炎

放射線治療を終了した1か月~2か月後に照射した部位に肺炎を発症することがあります。肺炎の症状は発熱や咳などですが、症状が出ない場合もあり自然に治癒します。しかしながら肺にもともと病気を抱えていたり、放射線治療の範囲が広いと症状がひどくなったり肺炎が長引くこともあります。

食道炎

肺がんの放射線治療では腫瘍へ照射をする時に食道にも放射線があたる場合があります。食道に放射線があたると炎症を引き起こし、食物を飲み込んだ時に痛みを感じることやしみる感じが出現します。食道炎は放射線治療開始後2週間すると出現しますが、治療が終了すると症状は次第に軽減していきます。

■参照
・オンコロBOOKシリーズ「小細胞肺がんと診断されたら知っておきたい治療のはなし」
・筑波大学オープンコースウェア「肺がんの手術療法
・特定非営利法人日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン2019年版
・東京慈恵会医科大学附属柏病院「肺がんの基礎知識

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