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スキルス胃がんの基礎知識


  • [公開日]2021.02.26
  • [最終更新日]2021.03.03

スキルス胃がんとは?

難治性のがん、スキルス胃がん

スキルス胃がんは、胃にできる悪性腫瘍のひとつです。胃がんの中だけでなく、人が発症するさまざまながんの中でも難治性のがんです。

スキルス胃がんは、胃壁や胃の組織にしみこんでいくように進行します。進行すると胃壁が硬く厚くなります。

通常の胃がんとは異なり、潰瘍などの病変を作らないため、内視鏡検査など肉眼で確認する検査では発見が困難です。また、スキルス胃がんは進行が早く、診断時には既に転移があるなど、かなり進行した状況で見つかることが多いという特徴があります。

スキルス胃がんの患者数

さまざまながんの中でも胃がんは発症者数が多いがんです。新規発症者数は、男性では第1位、女性では乳がん・大腸がんについて第3位です。日本では年間、人口10万に当たり男性で144.9人、女性で61.7人が新たに胃がんと診断されています(2017年のデータ)。

この胃がん全体の7%、進行胃がんに限ると15%がスキルス胃がんです。スキルス胃がんは手術ができる段階で発見されたとしても5年生存率が15~20%と、胃がん全体の実測生存率の61.5%(2010-2011年)と比べるととても低い状況にあります。

スキルス胃がんの好発年齢

胃がんの好発年齢は50代から増加し、80代でピークになります。これは胃がんの発症には喫煙やヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)などが影響しているとされているため、喫煙者の多い男性やピロリ菌を有している率の高い高齢者が胃がんを発症しやすいとされています。

一方のスキルス胃がんは、女性や20代といった若年層にも発症することがあります。そのためスキルス胃がん特有の発症原因があるのではないかと考えられています。実際に、発症につながる可能性のある遺伝子変異は見つかっていますが、現時点では確定した原因因子は見つかっていません。

スキルス胃がんの特徴

スキルス胃がんは«俗称»

スキルス胃がんは、胃がんのタイプのひとつの俗称であり、胃壁や組織にしみこんでいくように進行し、胃が硬く厚くなった状態のことを指します。つまり、早期の胃がんに対して「スキルス胃がん」という言葉は通常使われません。

スキルス胃がんは、正確には「胃癌取扱規約の肉眼的分類」の「4型」にあたります。肉眼的分類とは、内視鏡検査やX線検査など肉眼で見てわかる所見で分類する方法です。

一般的な胃がんでは、腫瘤の形成(1型)や、潰瘍の形成(2,3型)が見られるため、比較的初期の段階でも見つけやすいです。一方、スキルス胃がんにあたる4型は、びまん浸潤型と言い、目立った腫瘤や潰瘍の形成がなく、胃壁にしみこんでいくように進行してくため、診断時には広範囲に広がっていることが多いです。

非充実型の低分化腺がんが多い

スキルス胃がんに病理学的な定めはありませんが、非充実型の低分化腺がんが多いです。低分化腺がんとは、腺腔の形成が乏しいまたはほとんど見られない悪性度の高いがんのことを指します。

腺腔とは腺細胞にある分泌物を出す穴の様な部分のことです。これは胃を形成する通常の腺細胞に存在し、がん化した腺細胞もこの腺腔を形成する能力が残っています。この腺腔の形成度合いが高い場合、正常な細胞に近いと言えるため悪性度が低く、逆に腺腔の形成度合いが低いと悪性度が高いのです。

なお、がんの発生時には基本的には非充実型低分化腺がんというのは存在せず、主に印環細胞がんから変化して生じます。しかし、印環細胞がんのすべてがスキルス胃がんになるのではなく、初期段階に印環細胞がんであることは、スキルス胃がんの特徴のひとつにすぎません。

スキルス胃がんの原因

一般的な胃がんではピロリ菌などが因子

一般的な胃がんでは喫煙や塩分の多い食事の接種、そしてピロリ菌が発生の可能性を高めるとされています。特にピロリ菌は、WHO(世界保健機関)で「確実な発がん因子」と1994年に認定されています。

ピロリ菌の感染は、幼少時の整っていない衛生環境が原因とされており、衛生環境の改善とともに現在は感染者が減っています。2010~2015年の時点では、70歳以上の人の感染率は約80%でしたが、40歳未満の人の感染率は10%程度と大きく減少しています。これにより、胃がんの患者さん自体は年々減少傾向にあります。

発症原因不明なスキルス胃がん

スキルス胃がんの発症原因は、明らかになっていません。何らかの遺伝子変異が原因ではないかと考えられており、がん抑制遺伝子のE-カドヘリンとp53がスキルス胃がんの発生に係っているのではないかという研究が進められています。

動物実験の段階ではありますが、E-カドヘリンとp53を欠損させたマウスから、ヒトのスキルス胃がんによく似たがんが発症したという例も報告されています。しかし、未だ研究の域を超えておらず、スキルス胃がんの発症に対して、はっきりとした因果関係があるとまでは言い切れないのが現状です。

スキルス胃がんの症状

一般的な胃がんと区別のつかない症状

スキルス胃がんの症状は一般的な胃がんの症状と基本的にはかわりません。初期の段階では食欲の低下、胸やけなどの症状がでることもありますが、ほとんどの場合は症状が出ません。

がんが進行すると胃の痛み(みぞおち当たりの痛み)、不快感、食欲の低下や嘔吐など症状が見られます。

初期症状
お腹の不快感、食欲低下、胸やけ等
※初期の段階では症状が感じられないこともあります

進行期の症状
胃痛、不快感、食欲低下、嘔吐、倦怠感、黒色便、体重減少、食事がつかえる等

これらの症状は胃がんだけでなく、胃炎や胃潰瘍のときにも見られることがあります。しかし、胃炎や胃潰瘍の治療中に胃がんが見つかることもあるので、こうした症状が見られた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

スキルス胃がんの検査と診断

内視鏡やX線検査

腫瘤や潰瘍が見られる一般的な胃がんでは、内視鏡検査やX線検査で病変を確認することができます。一方、スキルス胃がんでは肉眼で確認できる所見がほとんど見られないため、内視鏡などの検査で見つけることは困難です。

しかし、スキルス胃がんも進行するにつれて胃の粘膜ひだが大きくなる、なめらかさがなくなるといった状態になることがあります。そのため、内視鏡検査でもスキルス胃がんを確認できる場合もあります。

また、先述の通りスキルス胃がんには、胃壁が硬くなり、胃の柔軟性が失われるという特徴があります。内視鏡検査時には胃に空気をいれて膨らませて検査を実施します。この時、胃が膨らみにくいということから、スキルス胃がんの疑いがもたれることもあります。

確定診断は生検で

スキルス胃がんの確定診断では、生検が行われます。スキルス胃がんは通常の胃がんに比べ、粘膜の下で進展していく傾向があるため、より深い部位にがん細胞が存在することがあります。

この場合、通常の鉗子(かんし)生検では、組織が採取できない可能性があるため、ボーリング生検などが検討されます。ボーリング生検とは、同じ個所に鉗子生検を繰り返し実施し、深部にある病変を採取する方法です。

転移部位の確認は、主にCT、PET-CT検査による画像診断で行われます。これらの画像診断の精度は近年あがってきており、他の臓器への転移やリンパ節転移などを確認するためには有用です。

しかし、腹膜播種についてはかなり進行した段階でないと、画像による診断は困難です。したがって、お腹を切り開いて患部を直接目視できる開腹手術をしたときに腹膜播種が見つかるというケースも少なくありません。
このように発見が難しい腹膜播種については、審査腹腔鏡というお腹に小さな穴をあけて、そこからカメラ(腹腔鏡)を挿入し、お腹の中を直接のぞく検査が実施されることがあります。

審査腹腔鏡は開腹手術でも目視しにくい場所(横隔膜下やダグラス窩など)を確認することもできます。お腹の中すべてを確認することは難しいですが、腹膜播種を起こしやすいとされているスキルス胃がんの検査としては、意義がある検査です。

スキルス胃がんの治療

がんの一般的な治療法は手術、化学療法、放射線療法の組み合わせです。スキルス胃がんも一般的な胃がんも、基本的には治療法に大きな違いはないため、がんの進行度合いに合わせてこれらの治療法を実施します。

手術療法

がんが胃に留まっている場合、一般的な胃がん同様にスキルス胃がんも手術による切除が第一選択です。腹膜播種や他の臓器への転移が見られる場合手術は実施しません。がんの大きさやどこまで浸潤しているかによって、術後に補助化学療法を実施する場合があります。

化学療法

現在、スキルス胃がん固有の化学療法というものはなく、一般的な胃がんと同様の化学療法が実施されます。

ただし、JCOG9912試験という臨床試験サブグループ解析では、「化学療法未治療の腹膜播種を要する未分化型胃がん」に対しては5-FUよりもTS-1の有効性が示され、SPIRITS試験ではTS-1単剤よりもTS-1とシスプラチン併用療法(SP療法)の方が治療成績がよい傾向にあることが明らかになりました。したがって、現在スキルス胃がんの第一選択薬にはTS-1単剤またはSP療法が用いられることが多いです。

また、近年ではHER2(上皮成長因子受容体)を標的とした分子標的治療薬の開発が進み、2011年にはハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)、2020年にはエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)が進行胃がんで承認されました。しかし、スキルス胃がんはHER2の過剰発現が少ないとされているため、これらHER2阻害薬を使用する症例は少ないと考えられています。

放射線療法

一般的な胃がんもスキルス胃がんも根治目的の放射線治療は行われず、あくまでも補助的な治療として用いられます。具体的には、術前や術後に放射線治療を用いることにより、切除率を上げるまたは残存病変を縮小させる目的で手術の補助として行われる場合などがあります。

また、手術のできない進行・再発の胃がんの場合、がんが増大して食事が通らないなどの症状を緩和させるなど、症状を緩和させる目的で放射線治療を行う場合があります。

スキルス胃がんの臨床試験

スキルス胃がんの臨床試験を見つけることは、難しいのが現状です。先述の通り「スキルス胃がん」という名前は俗称であり、臨床試験の名前や詳細の「スキルス胃がん」と記載されていることはほぼありません。

スキルス胃がんを絞り込むことは不可能ではありませんが、実際に探し出した試験に参加できるかどうかやその注意点などについて、患者さんご自身で判断することは困難です。

オンコロでは、スキルス胃がんをはじめさまざまながんの臨床試験について、患者さん・ご家族からのお問い合わせをお受けしています。臨床試験の参加を検討したい、気になる試験があるという方は、是非オンコロまでお問い合わせください。

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参考
■「胃がん」国立がん研究センター がん情報サービス
 https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/index.html
■日本胃癌学会編 胃癌治療ガイドライン 医師用2018年1月改定【第5版】
 http://www.jgca.jp/guideline/fifth/index.html
■「九州大学病院のがん診療 胃がん」九州大学病院 がんセンター
 https://www.gan.med.kyushu-u.ac.jp/result/gastric_cancer/index7
■「最新がん統計」国立がん研究センター がん情報サービス
 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
■「スキルス胃がんのマウスモデルを作成」東京医科歯科大学
 http://www.tmd.ac.jp/press-archive/20110826/index.html

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