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小細胞肺がんの治療-化学療法-


  • [公開日]2017.12.07
  • [最終更新日]2020.07.07

小細胞肺がんの化学療法

小細胞肺がんは限局型と進展型のどちらにおいても化学療法が行われます。多くの場合、限局型は放射線療法との併用、進展型は化学療法の単独で治療が行われることになります。

細胞障害性抗がん薬

直接がん細胞などに働いて増殖を止める「細胞障害性抗がん薬」ががん治療に用いられます。小細胞肺がんの治療ではその中でも白金製剤(プラチナ製剤)が治療の主軸になります。

白金製剤は細胞のDNAに結び付き、細胞分裂する時にDNAが分かれることができないようにします。DNAはアミノ酸が並んだ鎖のようなつくりをしており、2本の鎖が螺旋を描くようになっています。シスプラチンは2本のDNAに結合するので、細胞分裂する時にDNAが分かれることができず細胞の増殖を防ぐのです。小細胞肺がんの標準治療に用いられる白金製剤(プラチナ製剤)にはシスプラチンとカルボプラチンがあり、腎臓の機能が低下している人や高齢者ではカルボプラチンが選択されます。白金製剤と併用されるトポイソメラーゼ阻害薬と呼ばれる抗がん剤があります。これは、植物アルカロイドに分類される抗がん剤で、DNAの鎖構造を切断する働きがあります。DNAの構造を切断すると細胞分裂をする時にDNAの情報を新しい細胞に伝えることができないため、腫瘍細胞の増殖を防いでくれます。小細胞肺がんの標準治療ではエトポシドもしくはイリノテカン塩酸塩が用いられます。

免疫チェックポイント阻害薬

従来の薬物療法では、がん細胞に直接作用する細胞障害性抗がん薬のみが標準治療で用いられてきましたが、2019年に小細胞肺がんの領域でも免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤が登場しました。

ヒトのからだにはウイルスや細菌などの悪影響を及ぼす異物の排除役を担っている免疫細胞があり、それによってからだを守る仕組みがあります。免疫チェックポイント阻害薬は、その免疫細胞にがん細胞への攻撃を継続させる薬剤です。

免疫チェックポイント阻害薬について詳しくはこちら↓

化学療法の副作用

化学療法を行うと腫瘍細胞だけではなく、正常細胞も攻撃してしまいます。そのため、腫瘍に対する効果とともに副作用が出現します。小細胞肺がんで使用されることが多いシスプラチン、エトポシド、イリノテカン塩酸塩は以下の副作用が出現しやすいです。

腎機能の低下

腎臓は血液の老廃物を取り除き、尿をつくり水分を再吸収するところです。抗がん剤によって腎臓の働きが低下し、尿量や体重が減少してむくみが出現します。特にシスプラチンには腎機能の低下が投与後数日続くため、身体の水分量をしっかり確保する必要があります。水分量を確保するために輸液を行います。

肝障害

抗がん剤の影響で肝臓の細胞が障害を引き起こします。肝機能の低下は無症状のことが多く、採血をして肝機能の低下がないかを定期的にみていくこととなります。肝機能が低下すると食欲がなくなったり、皮膚が黄色くなったり(黄疸)、吐き気や嘔吐が出現します。

骨髄抑制

化学療法によって骨髄の正常な造血細胞が攻撃され、白血球、赤血球、血小板が減少します。白血球が減少すると、体外から入ってきた細菌などに対して対処する力が少なくなるため身体が感染しやすい状態となります。赤血球が減少すると貧血を引き起こします。血小板が減少すると、身体から出血した時に出血が止まりにくくなり、出血しやすくなります。

脱毛

化学療法開始後2~3週間で頭髪、腋毛、陰毛、眉毛やまつ毛が脱毛します。特に頭髪は半分以上脱毛することがあり、外見が変化することから男女ともに悩みとなる副作用です。頭髪が抗がん剤の影響を受けやすい理由は細胞分裂の速さにあります。体毛には毛周期といって、毛の成長と休止、脱毛を繰り返すサイクルがあります。毛の根元にある毛母細胞が細胞分裂をすることによって、5年かけて毛は成長します。その後休止期といって毛の成長が止まる約3か月の期間を経て自然に脱毛します。抗がん剤によって成長期の毛母細胞の細胞分裂が抑制されるため、毛が成長する前に脱毛してしまうのです。脱毛は抗がん剤による一過性の副作用なので、治療が終了すればまた毛が生えるようになります。

悪心・嘔吐

抗がん剤開始から24時間以内に発生する急性悪心・嘔吐、24時間以降に発生する遅発性悪心・嘔吐、抗がん剤開始前の不安などから発生する予期性悪心・嘔吐があります。いずれも延髄にある嘔吐中枢が刺激されておこります。

全身倦怠感

全身倦怠感が発生するメカニズムは明らかになっていませんが、腫瘍そのものや腫瘍に付随して発生する症状、薬剤の副作用、精神面など様々な側面の要因が重なって生じると考えられています。

アナフィラキシー

抗がん剤の投与から5~10分後に皮疹、発熱、呼吸困難などを引き起こします。これらの症状は身体が抗がん剤を異物として認識し身体が異物を排除しようとする反応です。

下痢

抗がん剤の影響によって腸の運動を活発にする神経が正常に働かなくなると、腸の運動が活発になり過ぎて下痢を引き起こします。下痢がひどくなると身体の電解質のバランスがくずれたり、脱水を引き起こしたり栄養状態が悪くなることがあります。

末梢神経障害

抗がん剤の影響で神経細胞を構成する軸索が障害されて発生すると考えられていますが、詳しい機序はまだ解明されていません。指先がしびれたり、温度感覚が障害されて熱いものがわからなくなったりします。神経細胞は細胞分裂をしないため、一度症状が出ると回復に時間がかかって症状が持続する場合があります。

聴覚障害や味覚障害

シスプラチンには耳の聴こえが悪くなる、高い音が聞こえづらくなる副作用があります。耳鳴りが出現することもあります。また抗がん剤に影響によって口腔内粘膜へダメージや亜鉛の不足、味覚に関わる神経の障害で食事の味がわからなくなります。

■参照
・オンコロBOOKシリーズ「小細胞肺がんと診断されたら知っておきたい治療のはなし」
・筑波大学オープンコースウェア「肺がんの手術療法
・特定非営利法人日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン2019年版
・東京慈恵会医科大学附属柏病院「肺がんの基礎知識

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