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診療科や職種の壁を越えた連携の時代へ:皆で議論し肺がんに立ち向かうために

[公開日] 2024.05.07[最終更新日] 2024.05.07

目次

第65回日本肺癌学会学術集会が、10月31日(木)~11月2日(土)にパシフィコ横浜ノースにて開催される。 そこで今回は、会長を務める大江 裕一郎先生(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長)に、本学術集会にかける想いや注目ポイントを伺った。 インタビュアー:がん情報サイト「オンコロ」コンテンツ・マネージャー 柳澤 昭浩

体育会系の精神でがんを治す内科医を目指す

柳澤:まずは先生の生い立ち(会長にまでなられた経緯)を教えてください。 大江:私は東京(蒲田)生まれ、東京育ちでです。勉強好きというよりもとにかく体育会系のやんちゃな子どもで、特に学生時代からずっと柔道に打ち込んできました。 医師を目指すようになったのは、なにか特別なきっかけがあるわけではなく、実家が開業医という家庭環境で育ったこと、また理系の科目が得意だったことから、自然な流れで医学部へ進学しました。そのため当時は実はあまり深く考えていませんでしたが、学生時代からメディカルオンコロジー(腫瘍内科)領域への興味をなんとなくずっと持っていたように思います。 柳澤:当時は薬でがんを治すことが難しい時代だったと思いますが、それでも外科ではなく内科を選んだのはなぜですか? 大江:誰が診ても治る病気を勉強するよりも、治らない病気と向き合うことに関心がありました。また、将来はがんが薬で治る時代が来るのではないかという希望を当時からなんとなく感じていたこともあり、敢えて腫瘍内科を選択しました。 柳澤:がんセンターにはいつから勤務されていたのですか? 大江:大学病院に勤務していた時代に1年間がんセンターで研修後、いったん大学に戻りましたが、その後はまたがんセンターに戻りずっと勤務しています。当時ついていた西條先生からの教えもあり、上の立場の先生にも臆せず積極的に質問や意見をぶつけていました。今は上に立つ立場となり、なかなか難しくなりましたが(笑)。 柳澤:そういうところから新しい発見が生まれることもあると思いますが、今は少し時代も変わってきてしまいましたね。

正しいがんの知識を医師も患者も皆で学べる学会に

柳澤:ここから本題に入りたいと思いますが、まずそもそも学会とは何か?ということについて、先生の言葉で説明をお願いします。 大江:学会は、医師や研究者がそれぞれ自身の研究を発表する情報発信の場であるとともに、それを共有し、学ぶ場でもあります。基礎的な知識から最先端の内容まで取り上げて、皆で議論していきたいと考えています。 柳澤:昨今では、患者さんやご家族の方も学会に参加できるようになってきたことについて、先生のお考えを教えてください。 大江:患者さんやご家族には、正しい知識を身につけてもらうことがなにもよりも重要だと考えています。インターネット上に情報が溢れている現代では、間違った情報を目にすることも多いと思います。でもせっかく勉強するのに教科書が間違っていては意味がないですよね。患者さんご自身で数ある情報の正誤を判断することは難しいと思いますので、ぜひ学会などに来て、正しい情報を得ていただきたいと思っています。

治療の複雑化に伴い“総合力”が問われる時代へ

柳澤:今回の学会のテーマとして掲げられている「総合力で肺がんに克つ」には、どのような想いが込められているのでしょうか。 大江:自身ががんに携わり始めたばかりの頃の肺がん治療は、病期などによって手術・放射線療法・薬物療法の対象症例の境界が明確であったため、他科との協力がそこまで必要とされていませんでした。しかしながら、だんだんと手術前後での薬物療法の実施や、放射線と薬物療法の併用など、さまざまな治療を組み合わせた治療法が開発されてきたため、それに伴い診療科を超えた医師同士の連携が必要になってきました。 また、医師に限らず、昔は関わりが少なかった薬剤師や看護師などの医療スタッフの方々に関しても、今では多くの病院で連携体制が確立されてきており、診断から治療、その後のケアまで、科や職を超えた協力が重要です。まさに総合力で肺がんと闘っていく時代だと感じています。 柳澤:がんセンターはそのような連携体制が整っていて、まさに患者さんが望む治療が実現されていると思いますが、診療科の壁がある病院もまだまだあると聞いています。そういう意味では、今回のテーマは、医療者に向けて改めて総合力の重要性を伝えるメッセージにも聞こえます。 大江:そうですね。今回のテーマの中には、がんセンターの総合力を示したいという隠れた想いも少し込められています(笑)。

学会の3日間を最後まで盛り上げていく工夫を:プログラム鋭意作成中

柳澤:学会プログラムについてはまだ現在検討中の段階だと思いますが、今回の先生のプログラムへのこだわりなどがあれば教えてください。 大江:どの学会も、会期が終わりに近づくにつれて、どうしても参加人数が減っていってしまい、寂しい閉会式になることも少なくないと感じています。そのため、今回はいかに学会を最後まで盛り上げるか、ということを重要視し、皆さんの関心が高いEGFR関連のシンポジウムなどを最終日の午前中に設けたり、プレジデンシャルセッションを閉会式の直前に実施するなど、プログラム構成を工夫しています。 また、今回のテーマである総合力を意識し、周術期治療など、さまざまな科が関わるような切り口でのセッションに重きを置いています。 柳澤:最後に、がん情報サイト「オンコロ」の読者や学会に参加される患者さんに向けたメッセージをお願いいたします。 大江:今、肺がん治療はものすごいスピードで進歩・変化しています。そのため、まずは最新の治療の流れに医療者がついていくことが大前提ですので、そのための学会という位置付けはもちろん重要です。ただし、私は治療を受ける患者さんご本人も、医療者と同じスピードで情報をキャッチアップしてほしいという想いがあります。今回の学会はその理想を実現できるような会にしたいと思っています。 (文責・浅野 理沙) 第65回肺癌学会学術集会開催概要 学術集会ホームページ: https://conference.haigan.gr.jp/65/index.html 会期 2024年10月31日(木)~11月2日(土) 会場 幕パシフィコ横浜ノース 〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1 会長 大江 裕一郎(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長) テーマ 総合力で肺がんに克つ 主催事務局 国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科 〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1 運営事務局 株式会社コンベンションリンケージ内 〒102-0075 東京都千代田区三番町2 E-mail: jlcs2024@c-linkage.co.jp TEL: 03-3263-8688 FAX: 03-3263-8693
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浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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