食道がんの基礎知識
食道とは
食道とは、咽頭と胃の間をつなぐ長さ約25cmの管状の臓器で、周囲には気管、心臓、大動脈、肺などの重要な臓器があります。食道の壁の厚さは4mm程度ですが、内側から外側に向かって粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜といった何層もの構造から成り、周囲にはリンパ節があります。食道は、壁の中の筋肉を動かすことで(蠕動運動)食べ物を胃に送ります。
食道がんとは、食道の内面をおおっている粘膜の表面から発生するがんのことです。
食道がんの罹患率と生存率
日本において食道がんと診断された患者数は、2019年の報告では124,319例(男性85,325例、女性38,994例)であり、男性の割合が女性の約2倍となっています。
食道がんの病期毎の5年のネット・サバイバルは、I期:79.1%、II期:48.8%、III期:28.2%、IV期:9.7%と報告されています。[院内がん登録生存率集計(2015年5年生存率)]
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食道がんの検査と診断
食道がんの検査
食道がんが疑われる場合には、まずがんの有無を確認後、治療方針などを決めるために、画像検査などによって進行度を調べます。
上部消化管造影検査(バリウム検査)
バリウムなどの造影剤を服用して、胃の形や病変を調べる検査です。病変の有無、大きさや深さ、場所などの診断が可能です。
上部消化管内視鏡検査
食道の粘膜を直接観察し、がんの有無や良性・悪性の判断、進行度などを推定する検査です。更に組織の一部を採取し、顕微鏡による病理検査をすることも可能です(生検)。
また、早期の食道がんは平坦で見逃されやすいため、色素で粘膜を染めたり、特殊な波長の光を当てたりすることで、画像に写るがんを際立たせることもできます。
上部消化管造影検査では見つかりにくい無症状の初期がんを発見しやすいというメリットを持ちます。
食道がんの治療
食道がんの治療の決め方
食道がんの治療では、病期分類に応じた標準治療を基本とし、更に個々の患者さんの全身状態や希望などを総合的に検討して決定されます。
代表的な治療には内視鏡治療、手術、放射線治療、薬物治療がありますが、根治率を高めるためにこれらを組み合わせて使うこともあります。
食道がんの内視鏡的切除
内視鏡を使って食道の内側からがんを切除する方法を内視鏡的切除術と言います。
内視鏡的切除には、内視鏡の先端から輪状の細いワイヤー(スネア)をかけて病変を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)と、粘膜下層から病変を高周波ナイフにより切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の二種類があります。
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