免疫チェックポイント阻害剤とは
私たちのからだには、ウイルスや細菌などの異物が入ってきたときに、免疫細胞のT細胞が活性化し、異物を攻撃 、排除して、からだを守る免疫機能が備わっています。一方で、免疫機能が過剰に働いて自分のからだを攻撃し過ぎないように、免疫チェックポイント分子を使ってT細胞の働きにブレーキをかける仕組みももっています。
がん細胞はこの仕組みを巧みに利用して、免疫細胞の攻撃をまぬがれていることがわかっています。たとえば、T細胞に発現する免疫チェックポイント分子のひとつであるPD-1(programmed cell death-1:プログラム細胞死タンパク質1)に、がん細胞の表面に発現しているPD-L1が結合することで免疫細胞の働きが抑制されます。また、T細胞表面に発現するCTLA-4(細胞殺傷性Tリンパ球抗原4)は、この刺激分子であるB7(CD80/CD86)と結合することによって、T細胞の働きにブレーキをかけます。
これらの免疫チェックポイント分子の働きを阻害し、免疫に対するブレーキを解除することで、免疫細胞が再びがん細胞を攻撃できるようにすることを目的としている薬が、免疫チェックポイント阻害剤です。
現在肺がんでは、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体の3種類の薬が使われています。
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肺がんで使われる免疫チェックポイント阻害剤
2024年5月現在、肺がんにおいて承認されているPD-1阻害剤は、テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)の二種類、PD-1阻害剤は、キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)の二種類、CTLA-4阻害剤はヤーボイ(一般名:イピリムマブ)、トレメリムマブ(一般名:イジュド)の二種類です。
周術期肺がんにおいて使われる免疫チェックポイント阻害剤は、術前療法として化学療法と併用して使われる場合、または術後療法として化学療法後に使われる場合があります。
また、局所進行肺がんにおいては、化学放射線療法後の地固め療法として免疫チェックポイント阻害剤が使われます。
進行期肺がんでは、PD-(L)1阻害剤単剤として使われるだけでなく、PD-(L)1阻害剤とCTLA-4阻害剤の併用、化学療法との併用、また一部ではアバスチン(一般名:ベバシズマブ)との併用によって使われます。多くの場合、遺伝子検査によるドライバー変異の有無やPD-L1検査によるPD-L1発現率によって、どのレジメンを使うかどうかを決めていきます。
免疫チェックポイント阻害剤の解説動画
参照元:
免疫チェックポイント阻害剤 効く人と効かない人がいるの?