免疫チェックポイント阻害薬の効果予測のためのPD-L1検査


  • [公開日]2018.10.11
  • [最終更新日]2020.05.01

PD-L1検査の結果で使う薬が変わる

私たちのからだには、ウイルスや細菌などの異物が入ってきたときに、免疫細胞T細胞が活性化し、異物を攻撃 、排除して、からだを守る免疫機能が備わっています。一方で、免疫機能が過剰に働いて自分のからだを攻撃し過ぎないように、免疫チェックポイントで攻撃するかどうか判断し、T細胞の働きにブレーキをかける仕組みももっています。近年、がん細胞がこの仕組みを巧みに利用して、免疫細胞の攻撃をまぬがれていることがわかってきました。

免疫チェックポイントはいくつか種類がありますが、その一つである免疫チェックポイント受容体PD-1に、がん細胞の表面にあるタンパクPD-L1が結合すると、ブレーキをかけるように指令が行き、免疫細胞の働きが抑制されます。免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体薬は、がん細胞より先に免疫チェックポイント受容体PD-L1と結合し、がん細胞がT細胞の働きにブレーキをかけるのを阻止する薬です。

免疫細胞のブレーキが解除されてT細胞が活性化され、がんを攻撃する力が強まります。この抗PD-1抗体薬は、肺がんでは2種類が使われており、そのうちの一つを使う際にPD-L1検査が行われます。PD-L1が50%以上のがん細胞で発現している場合は強陽性、1%以上50%未満なら陽性、1%未満なら陰性と判断されます。

PD-L1陽性、あるいは、EGFR、ALK、ROS1、BRAFといった4つの遺伝子検査が陰性で、かつPD-L1強陽性なら、この特定の抗PD-1抗体薬による治療が第一選択になります。



PD-L150%未満は抗がん剤の多剤併用

EGFR、ALK、ROS1、BRAFといった4つの遺伝子検査がすべて陰性で、かつPD-L1も陰性の場合は、プラチナ製剤を含む抗がん剤の併用療法が第一選択になります。遺伝子検査とPD-L1検査がすべて陰性という結果が出たときには、落胆する患者さんもいるかもしれません。しかし、多剤併用抗がん剤治療によって、肺がんによる症状が軽減する患者さんも少なくありません 。また、二次治療以降に、別の抗PD-1抗体薬や抗PD-L1抗体薬を用いた治療が受けられます。PD-L1検査でPD-L1が1%以上で、多剤併用抗がん剤治療による一次治療が効かなかったり、その後進行したりした場合には、別の抗PD-1抗体薬による治療が推奨されています。

PD-L1が1%未満であっても、扁平上皮がんの二次治療には、抗PD-1抗体薬による治療を行 います。非扁平上皮がんでPD-L1が1%未満の場合には、抗PD-L1抗体薬や最初の抗がん剤とは異なった種類の抗がん剤、あるいは抗PD-1抗体薬による治療が検討されます。

※この内容は「肺がんの薬物療法を受ける患者さんのための本」より引用/編集しました。

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