【PR】肝細胞がん 薬物治療と患者視点-がん治療の道しるべ【動画シリーズ】


  • [公開日]2022.07.08
  • [最終更新日]2022.07.08

提供:バイエル薬品株式会社

近年、肝細胞がんの薬物治療は大きく進歩し、効果のある薬剤が複数使えるようになりました。加えて今後も新しい薬剤が登場する見通しで、それは患者さんにとって選択肢が増えることを意味します。

本記事では、がん情報サイト「オンコロ」編集部とバイエル薬品が肝細胞がんの患者さんを対象に実施したインターネット調査の結果なども踏まえたうえで、患者さんとご家族が多様化する薬物治療を活用し、自分らしくよりよく生きるために欠かせない視点やサポートについて、肝細胞がんの第一線でご活躍の古瀬純司先生にお話を伺った、10本の動画をご紹介します。

古瀬純司 氏:地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立がんセンター総長
聴き手/川上祥子:がん情報サイト「オンコロ」編集部

近年の肝細胞がん薬物治療の進歩

―近年 肝細胞がんの治療をめぐる状況が大きく変化してきていると聞いています。どのように変わってきているのでしょうか。

古瀬:1990年代は局所療法しかなく、全身療法の薬がほとんどありませんでした。

当時、転移のある肝細胞がん患者さんは結局、全身療法であるシスプラチンなどで治療しても、緩和治療だけの人と生存が変わらず、結局、局所療法でやっていくしかありませんでした。それでもやはり予後は非常に悪く、全身療法の薬が欲しい、との思いがありました。

そのような状況で、いろいろながん種で分子標的薬の開発が進み、肝細胞がんでも新しい薬が出てきました。その分子標的薬が肝細胞がんに適用できたことが、大きなターニングポイントになりました。

いっぽうで副作用が強く、手足の皮膚反応や肝障害など大変でしたが、これには慣れてきて、患者さんに「こういう対応ができますよ」と、副作用コントロールができるようになりました。それがこの10年~15年の変化です。

治療選択肢の多様化の意味

―肝臓がんの治療にはたくさんの薬物治療が登場してきたとのことですが、治療選択肢の多様化は、患者さんにとって、どのような意味がありますか?

古瀬:2000年頃から分子標的薬が出てきて、臨床試験が進みましたが、2010年半ばまで1つの飲み薬しかなく、なかなか次の一手がありませんでした。そのなかで、複数の薬剤が出てきて、最近は注射薬が使えるようになりました。副作用も薬によって違い、結構きついものもあれば、マネージメントしやすいものもあります。薬の多様化が進んでおり、患者さんの年齢や考え方、生活様式に合わせて我々も「こういう薬もありますよ」という話ができます。

「経口薬がいい」という患者さんもいれば、病院に来て医師と話して決められる注射のほうが、安心感がある、という方もいます。患者さんにとって一番良い方法を一緒に考えて選択できるということは大きいです。

いま、6-7つの治療法が出てきていて、次にどういう治療をしようか、というとき、最初の治療がどれだけ大変だったか、どれだけ効いたか、次の治療はもう少し楽なほうが良いか、多少頑張れるか、など、次の治療を選択する意味でも、多様化は望ましいです。

肝細胞がん治療で留意すること

―肝臓がんの治療において、他のがん腫と比べて「肝臓がんだからこそ留意しておく点」はありますか?

古瀬:肝臓がんは診断された時に早期で見つかることが日本では多いです。ただ、治療を繰り返しているうちに肝臓のなかで進行していったり、肝臓の外に転移をしていったり、かなり長く治療をしていくことになります。また、切除、ラジオ波、動脈塞栓、薬物療法など、いろいろな治療をしていくところが、他のがん種と違うのではないでしょうか。

そうなると予後が悪いとは言いながら、かなり長期に治療されている患者さんが多いので、そういう意味で、患者さんの日常生活を損なわない、維持をさせる、そういう視点も大事です。

患者さんがどんな生活をされているのか、仕事をされているか、ご家族のサポートがあるのか、一人暮らしなのか、夫婦だけなのか、ご家族はたくさんいらっしゃるのか。いろいろな生活様式、生活背景を考えながら治療選択していくのが大事なのです。

また、長期にいろいろな治療をされてきていると、もう病気と付き合っていく、治るのも無理だな、と思われる患者さんが多いですね。患者さんから「あんまり厳しい治療はもういやです」と おっしゃる方もいるし、そのあたりが、肝臓がん患者の特徴なのかもしれません。

薬物治療を始める患者さんの意向~患者さんの意識調査から~

―オンコロでは、古瀬先生にご指導をいただき、薬物治療を始める際の患者さんのご意向について調査したことがあります。

肝細胞がんと診断されている患者さんに、現在の状態にかかわらず内服による薬物治療を受けることになったと仮定した上で、大切にする治療目標についてお聞きしたグラフをご紹介します。

結果を見てみると、薬物療法を始める肝細胞がんの患者さんは、仕事・家事などを続けることや、趣味を続けること、身の回りのことが自分でできること、そういったことを大切にされている意向があるようですが、こちらをどのようにご覧になりましたか?

古瀬:この患者さんの調査は、本当に貴重な経験でしたし、勉強になりました。最近、患者さんのサバイバーシップをどうするか、というアンケート調査は少しずつされています。私も、東京都のがん患者さんが、どんな感じで思われているか、調査をやったことがあるのですが、肝細胞がんの患者さんに特化して行った調査は初めてだと思います。本当にいろいろ学ばせていただきました。

肝細胞がん患者さんは長い治療経過があり、病気と上手く付き合っている、という感覚が自然に出てくる。それで治らなくてもいい、いい生活をしたい、家族と一緒に過ごしたい、仕事はなるべく長くしたい、趣味を続けたい。こういう感覚が、他のがん腫より多いということが本当に思い知らされました。そういう視点を持って、肝細胞がんの患者の治療、特に薬物療法を選択していくことが非常に大事なのだ、ということを痛感しました。

治療目標を共有することの意義と対話の工夫

―肝細胞がんの患者さんは経過後も長く、それだけ自分らしくがんと向き合っていきたいというご希望がある方も多い、ということでした。そのようななかで、治療目標を先生と患者さんが共有するということは、とても大事なことなのかと思いますが、これはどのような意義がありますか?

古瀬:目標設定は、とても大事だと思います。手術して取って治りました、がんがなくなりました、という治療もあれば、薬物療法のように、小さくはなってくるけれど消えない、という治療があります。今回、薬物療法、ということを考えると「治るわけではない」ということを患者さんに、いかにうまく伝えるか。そして治療目標を立てるか。が大事だと思います。

我々が使っている患者さんの説明文書にも入れているんですが、薬物療法は治るわけではありません。小さくすることもあれば進行を抑えることもある。結局、病気とうまく付き合っていく、症状をコントロールして長生きしていくということが目標ですよ、という話をしています。

患者さんによっては、治るつもりで薬の治療をやりたい、という患者さんも少なくないので、一回でなかなか解決する、理解できるというものではありません。ですから病状を説明したり、いくつかの薬の選択の話もしたり、目標を設定したり、特に家族にもその辺の情報共有をしていただいて、場合によっては看護師さんや薬剤師さんにも事前にお話に入ってもらったり、ソーシャルワーカーの人に入ってもらったり、など工夫しながら、その患者さんに応じて治療の選択、目標選択をして、という形で進めていく。

治療目標をしっかり患者さん・ご家族と我々が共有して、同じ目線で治療していくということは、長く治療を継続していく上でも大事だと思います。

薬物治療の有効性と安全性のバランス~患者さんの意識調査から~

―オンコロの調査では、患者さんがお薬による治療の有効性安全性のバランスについて、どのように考えておられるかも調査しました。その結果について教えてください。

古瀬:肝細胞がんと診断されている患者さんに経口薬による薬物療法を受けるということになった時、どういう治療目標を考えますか?希望しますか?という質問です。

我々も勉強になりましたが、がんを小さくすることを希望される方はそれほどいらっしゃらなくて、一番多かったのは、体力が落ちたり、日常生活に影響が出たりする副作用が起きにくいということ、でした。その次はより長く生きられるということでした。

ですからやはり、副作用が少なく、生活の質を維持しながら長生きする、という先程言った薬物療法の一番大事な目標というところを、患者さんはそのまま希望されているということで、これは、我々は非常に勉強になったし、興味深いし、肝細胞がんに限らずかもしれませんが、がんの薬物療法の目標設定、治療選択を考える上で非常に貴重なデータだと思います。

患者さんの日常生活に影響を与え副作用と対応方法

―患者さんたちが「自分らしくより長く生きたい」ということで、日常生活に影響の出る副作用については、お困りになると思いますが、そういった患者さんの日常生活に影響を与える副作用への対応方法について教えてください。

古瀬:肝細胞がんの薬物療法は大きく分けて分子標的薬 チロシンキナーゼ阻害薬と、それから注射薬の血管新生阻害薬免疫チェックポイント阻害薬などで、患者さんの状況に応じて使い分けています。

患者さんが1番つらい副作用としては、手足症候群です。手足が腫れて日常生活に支障が出てしまうと思います。これは分子標的薬共通の副作用で、治療継続ができなくなってしまう患者さんも多かったのですが、我々も長期に使用してきて、患者さんに対する説明や対応の仕方も周知して、かなりコントロールできるようになりました。

一番大事なのは手足を保護することです。タイトな靴を履かない、手足の保護の薬を塗る、厳しくなったら休薬をしてお休みをする、などが手足症候群、手足皮膚反応の対応で、これはマネージできることです。

次に患者さんがつらいのは、下痢です。これも多く出るのですが、あらかじめ下痢止めをお渡ししておいて、「少し下痢が出るようだったら飲んでくださいね」「水分とかスポーツドリンクなどをよく取ってください」という話をして、これもうまくいくようになりました。

その他、倦怠感や肝機能障害などかありますが、そういう時は少しお休みをして、回復したら減量して続ける、などです。こうしたことは、看護師さんや薬剤師さんとうまく連携してやっていくことが大事だと思います。

肝細胞がん治療における他職種との連携

―患者さんの治療と生活をサポートするためには、医師だけでなく他の職種の方々との連携も求められます。先生はどのような職種の方々と、どのように連携されていますか?

古瀬:とても大事なポイントです。昔の抗がん剤のように副作用の出方が薬によってそんなに違わない、という時代と変わって、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬、等々いろいろな薬が出てきて、副作用のマネージが本当に多様化して、難しくなってきています。そして患者さんのケアも大事になってきている。そういう治療の面と、 それから先ほど冒頭で申し上げた患者さんの多様化。高齢化、若い人もいる、ご家族の関係、仕事の関係・・、患者さんも多様化している。

こうなると、医者一人で薬物療法やっていくのは、もう不可能な時代になってきて、他業種との連携は必須ですね。チーム医療になってきています。これはがん治療の大きな進歩だし、変革です。その中で、一番大きな役割をしているのが看護師さん。それから薬剤師さん。それから、がん診療のいろいろなところと連携する橋渡し役のソーシャルワーカーの方々。それから食欲低下も多いので、栄養士さんにどんな食事がいいのかを聞くこともあります。事務の方も医療費の面で入ってくださったりする。そういう人たちとうまく連携していかないと、がん治療ができない、ということを実感しています。

具体的には、私たちは新しく薬物治療を始める時、看護師さん・薬剤師さんが「こういうことを注意してくださいね」、という詳しい説明をしてくれています。

免疫チェックポイント阻害剤のように、いろいろな診療科の先生たちが連携しなくてはならない時は、副作用マネージメントをどうするか、という勉強会を年に2回ぐらいやり、情報交換、情報共有をしていました。これからもいろいろな薬が出てくると思いますので、他の診療科、他業種との連携はますます大事になります。

患者さんが医師に望んでいること~患者さんの意識調査から~

―オンコロの調査では、「患者さんが主治医に望むこと」も伺いました。治療目標達成のために患者さんが主治医にしてほしいと思うことを5つ提示して、それぞれの項目ごとに当てはまる気持ちを5段階の中から1つ選んでもらいました。

その結果、「とてもそう思う」という回答が最も多かったのは、病気についてネガティブな情報、例えば病気がとても進行しているといったことなどを隠さずに共有してほしい、という項目で、合わせると88%の人が望んでいたという結果になりました。

そして「とてもそう思う」という項目が次に多かったのは、全ての治療選択肢について説明する、という項目で、これは多少そう思うということを含めると、89%の方が望んでいたのです。

このように5つの項目に全てに対して、80%以上の人が多少なりとも主治医にそうしてほしいと望んでいました。この結果について、先生はどのようにご覧になりますでしょうか。

古瀬:これも、我々医師にとって非常に大事で、興味深い結果だと思います。ネガティブな情報も隠さず医療者と本人家族と共有したい、というのを患者さんの方から言っていただくのは本当に有り難いことで、嬉しいですし、そうあるべきだと思います。

もう1つ、いろいろな治療選択肢を全部話してほしい、ということも、我々にとっては大事なポイントです。そうしなければいけない、ということですよね。つい、ガイドラインに掲載されている治療を「はい」と出したり、多少毒性が強くてもいま一番有効性が高く良い治療ですよ、と患者さんに出すだけではなく、副作用がこう違いますよ、効果もこう違う、いま、これだけ治療法が使えるものがありますよ、ということをお話しして、そして納得して使う、治療していくということは、患者さんにとっても大きいメリットだと思います。全部でこれだけあり、その中から選んだ、ということですね。

それからもう一つは、ネガティブな治療の情報を全てお話するいっぽうで、わずかかもしれないけれど、こういう良い方法もあります、ということも実際ありますので、そういった希望もあるということを含めてお話する、ということは、大事なことだと思います。

こうした話を30分でも1時間でもかけてしなければいけない、というタイミング、それから2-3分でさっと済んでしまうタイミング、そういうメリハリの付いた診療が大事ではないか、と常々思っています。

患者さん・ご家族・医療者へのメッセージ

―この動画をご覧になっている患者さんやご家族、そして医療者の方々へメッセージをお願いいたします。

古瀬:私のコメントが、患者さん、家族、医療者の皆さんに、少しでもお役に立てれば嬉しく思います。肝細胞がんは難治がんの1つと言われています。それは早期で見つかって治るということは決して少なくない、むしろ多いのですが、治癒したと思っても、ほとんどの患者さんが再発をしてしまう、そしてどこかで肝臓の外に転移をしてしまう、それが難治がんということだと思います。

昔はそれに対して全く我々お手上げでした。でも、この10年、15年、薬物療法がどんどん進歩して、1つしかなかった薬が3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、と、どんどん増えてきている。そして注射薬、経口薬、と多様化してきている副作用も効果も多様化してきています。このように治療選択肢が広がったことは、患者さん・ご家族に大きなメリット・貢献できることがあり、これらは医療の進歩の結果だと思います。

<患者さん・ご家族へ>
治療の選択肢がいろいろあるということを、担当の先生から詳しく聞いていただき、場合によっては薬剤師さんや看護師さん、ソーシャルワーカーから情報をもらって、自分に合った一番いい治療法で、その中から適切な治療を選んでいただく、選択する、ということが大事だと思います。自分らしく、生活の質を保って、長生きをして、ご家族と一緒に過ごしていただく。そういう時間を長く共有していただくことができる時代になったと思います。

そのためには、医者をうまく使っていただくことも大事です。一方的に押し付けられるわけではなく、自分の価値観をしっかり話をして、 思いを話して、私はこういうことを大事にしたい、ということを看護師さんや薬剤師さんも含めて話をして治療していく。それから副作用も我慢しないで、医者に言いづらければ看護師さんにちょっと話をしていただくと、チーム医療で必ず医者に繋がると思います。

<医療従事者の方々へ>
患者さんの多様化、治療の多様化は我々医療者にとって嬉しい反面、大変なことかもしれません。そのためにはうまくチームを作って、個々の力を合わせると大きな力になります。

医療は、一人一人の力を持ち寄って、良いシステム、ネットワークをつくることだと思っています。そういう意味で小さいネットワークから大きなネットワークを含めて、勉強しながら治療していく。がん治療の進歩に貢献していく。ということで、みんなで力を合わせてやっていきたいと思います。

古瀬純司 氏(ふるせ・じゅんじ)
1984年、千葉大学医学部卒業。
国立がん研究センター東病院、米国・トーマスジェファーソン大学留学等を経て2008年、杏林大学医学部・大学院医学系研究科 腫瘍内科学 教授。2022年4月より現職。

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