目次
非小細胞肺がん(NSCLC)
切除不能III期EGFR変異陽性NSCLCにおける化学放射線療法後のタグリッソ地固め療法の有効性を検討:LAURA試験
LAURA試験は、切除不能III期EGFR変異陽性NSCLCにおいて、化学放射線療法後のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)を評価した初の第3相試験。タグリッソがプラセボと比較して無増悪生存期間(PFS)を大幅に改善することが示された (39.1ヶ月 vs 5.6ヶ月)。 切除不能III期NSCLCの現在の標準療法は、PACIFIC試験の結果に基づき根治的化学放射線療法後のイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)地固め療法が使われているが、EGFR変異陽性症例に対する有効性は明確ではない。そのため今回の結果は、今後EGFR変異陽性症例に対してはタグリッソ地固め療法が標準治療となることが期待される注目を集めたデータであった。 ただし、同試験の中ではタグリッソを無期限に使用する設定となっており、副作用やコストの面など懸念が残る。全生存期間(OS)データも未成熟であることから、これからどのように実臨床へ導入していくのか、もう少し議論が必要かもしれない。「切除不能III期EGFR変異陽性非小細胞肺がんに対する根治的化学放射線療法後のタグリッソ、PFSを有意に改善」
ALK陽性進行NSCLCにおけるローブレナの有効性を検討:CROWN試験のアップデート
CROWN試験は、第三世代ALKチロシンキナーゼ阻害剤ローブレナ(一般名:ロルラチニブ)と第一世代のザーコリ(一般名:クリゾチニブ)を比較した試験。今回追跡期間5年のデータが発表され、PFSの大幅な改善が認められた(PFS中央値:未到達 vs 9.1ヶ月)。またローブレナ群の約92%で、60ヶ月経過しても頭蓋内病変の進行が見られず、脳転移への高い効果も持続されていた。 一つの懸念はローブレナの副作用であり、特に認知・精神障害に関しては、治療中開始から適切に管理し、すぐに減量による対処ができるような体制づくりが必要になりそうだ。 日本では、ALK陽性肺がんに対する現在の第一選択薬はザーコリ(一般名:クリゾチニブ)。今回の結果を受けて初回治療がどの程度ローブレナに置き換わるのか、注視していきたい。既治療のEGFR変異陽性進行/転移性NSCLCにおけるラゼルチニブとの併用療法としてのアミバンタマブの皮下投与と静脈内投与を比較:PALOMA-3試験
PALOMA-3試験は、オシメルチニブ及び化学療法後に進行したEGFR変異陽性進行/転移性NSCLCにおいて、第三世代EGFR-TKIラゼルチニブ併用下、EGFRおよびMETを標的とした二重特異性モノクローナル抗体アミバンタマブの皮下投与と静脈内投与を比較した第3相試験。皮下投与は静脈内投与と同等の薬物動態および有効性を示し、更に静脈内投与で懸念されていたインフュージョンリアクションおよび静脈血栓塞栓症の発現率の低下も認められた。 今回の結果から、アミバンタマブを皮下投与にすることで、効果を損なうことなく忍容性を改善し、投与時間も短縮できることが立証され、今後アミバンタマブが実臨床に導入されていく際に利便性の高い投与法として有用であると考えられる。高リスクEGFR変異陽性NSCLCにおけるアミバンタマブ+ラゼルチニブの効果を解析:MARIPOSA試験
MARIPOSA試験は、EGFR変異陽性NSCLCにおける初回治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブがタグリッソ(一般名:オシメルチニブ)単剤よりもPFS延長効果が高いことを示した試験。今回の解析では、予後不良因子とされるP53遺伝子変異、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の検出、診断時における肝転移または脳転移を有する高リスク集団に対しても、アミバンタマブ+ラゼルチニブが有意に無増悪生存期間を改善することが示された。 初回治療としてのアミバンタマブ+ラゼルチニブは既に日本での承認申請中であり、新たな標準治療として期待の持てる治療法である。一方で、現在使われているタグリッソは、毒性管理のしやすさや経口投与であるという利便性などのメリットもあり、今回の発表が使い分けのひとつの参考になりそうだ。 また、既にタグリッソ+化学療法の有効性も報告されているため、最適な治療法の判断が今後の課題になると考えられる。進行性肺がんにおける緩和ケアの提供法としての遠隔診療と対面診療の比較:REACH PC試験
REACH PC試験は、オンラインを使った遠隔診療による緩和ケアが、訪問による対面診療と比較して24週間後に同等の生活の質をもたらすことを示した試験。今回の結果は、遠隔診療が効果的な方法であることを立証しているが、同治験の登録候補患者のほぼ半数が参加を断っていたことから、今後はその理由の解明が必要だ。 がん治療の早い段階から緩和ケアによる介入を実施することの有用性が報告されている中で、アクセスの制限やマンパワー不足等の理由により、早期緩和ケアはなかなか浸透していない。今回の結果をもとに、実臨床においても遠隔診療サービスの導入が進み、緩和ケアの浸透につながることに期待したい。「進行非小細胞肺がんにおける遠隔による早期緩和ケア、対面診療と同等の有効性を示す」