ASCO 2024:その他のがんがん種別にみたポイント


  • [公開日]2024.07.02
  • [最終更新日]2024.07.02

悪性黒色腫

切除可能III期悪性黒色腫における術前オプジーボ+ヤーボイの有効性を検討:NADINA試験

NADINA試験は、切除可能III期悪性黒色腫(メラノーマ)において、術前オプジーボ(一般名:ニボルマブ)+ヤーボイ(一般名:イピリムマブ併用療法後に十分な奏効が得られていない場合のみ更に術後療法を追加する群と、術後オプジーボのみの群を比較した試験。現在の標準治療である術後療法(術後オプジーボのみ) と術前免疫療法を評価比較した初の第3相試験だ。今回の発表では、術前オプジーボ+ヤーボイ(+術後療法)による無イベント生存率 (EFS)の有意な改善が認められた。

術前の併用療法を受けた患者の59%が術後療法不要と判断され、2コースの術前オプジーボ+ヤーボイ以上の全身療法を受けなかった点は特筆すべきだろう。

同試験は、術前療法に対する奏効に基づいて術後療法の必要性を判断した点、また化学療法を使わずに免疫療法のみからなる術前療法レジメンを評価した点でも、意義深い試験であった。

血液がん

再発・難治性多発性骨髄腫におけるベランタマブ マホドチン併用療法の有効性・安全性を検討:DREAMM-8試験

DREAMM-8試験は、レナリドミドを含む治療歴のある再発・難治性の多発性骨髄腫において、多発性骨髄腫細胞に発現するB細胞成熟抗原 (BCMA) を標的とした抗体薬物複合体ベランタマブ マホドチン+ポマリスト(一般名:ポマリドミド)+デキサメタゾン併用療法と、ベルケイド(一般名:ボルテゾミブ)+ポマリスト+デキサメタゾン併用療法を比較した試験。ベランタマブ マホドチン併用群の方が有意に無増悪生存期間PFS)を改善した(ハザード比: 0.52)。また、懸念事項として眼毒性が認められたが、用量調整により対処可能であり、大部分で投与継続が可能だという。

類似試験として、既治療の再発・難治性多発性骨髄腫に対するベランタマブ マホドチン+ベルケイド+デキサメタゾンとダラキューロ(一般名:ダラツムマブ)+ベルケイド+デキサメタゾンの比較により、ベランタマブ マホドチンの優位性を示したDREAMM-7試験がある。今回の結果と併せて、ベランタマブ マホドチンが、再発・難治性多発性骨髄腫に対する有効な薬剤として標準治療のひとつになり得ることを示唆している。

フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病に対する初回治療としてのセムブリックスと既存のチロシンキナーゼ阻害剤を比較:ASC4FIRST試験

ASC4FIRST試験は、フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病の初回治療において、BCR-ABL1特異的アロステリック阻害薬セムブリックス(一般名:アシミニブ)と第1/2世代チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるグリベック、タシグナ、スプリセル、ボシュリフを比較した試験。セムブリックスにより、48週時点の分子遺伝学的大奏効(MMR)率の改善が認められた。

ただし、TKIの世代別に見ると、第1世代TKIであるグリベックに対してはセムブリックスの統計的優位性が示され一方で、副次評価項目である第2世代TKIとの比較における統計的優位性は認められていない。

今回の結果から、セムブリックスが既存のTKIと比較してより強力な薬剤である可能性が示唆されたものの、経済毒性の観点からも、従来のTKIよりも優先的に使うべきかどかを結論付けることはまだ難しそうだ。今後の長期追跡により、PFSや全生存期間OS)の結果が待たれるところである。

婦人科がん

進行卵巣がんに対する化学療法後の手術における後腹膜リンパ節郭清の必要性を検討:CARACO試験

CARACO試験は、リンパ節転移が疑われない進行卵巣がんにおいて、初回腫瘍減量手術または術前化学療法後の腫瘍減量手術の際に、後腹膜リンパ節郭清を受ける群と受けない群を比較した試験。両群でPFS・OSの有意な差は認めず、また後腹膜リンパ節郭清を省略することで、合併症のリスク軽減や手術時間および入院期間の短縮が期待できる結果となった。

初回手術の際にリンパ節が正常である進行卵巣がんにおいては、後腹膜リンパ節郭清の省略が可能であることは第3相LION試験によって既に示されていたが、今回の結果から、近年使用頻度が増している術前化学療法後の手術においても、後腹膜リンパ節郭清を安全に回避できることが示された。

今後は、リンパ節肥大やリンパ節転移が疑われる症例においても、後腹膜リンパ節郭清の有用性を評価していくことが必要になりそうだ。

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