ASCO 2024:乳がんがん種別にみたポイント


  • [公開日]2024.06.25
  • [最終更新日]2024.06.26

進行期

化学療法未治療のホルモン受容体陽性HER2(超)低発現症例におけるエンハーツの有効性を検討:DESTINY-Breast06試験

同試験の前に既にDESTINY-Breast04において、複数の化学療法治療歴があるホルモン受容体陽性HER2発現IHC 1+またはIHC 2+/ISH‑)乳がんに対するエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクスデカン)の有効性が示されている。これを受けて今回のDESTINY-Breast06試験は、化学療法未治療のより早い治療ラインを対象とし、更にHER2低発現に加えて超低発現(膜染色を認めるIHC 0及び0<IHC<1+)の症例も対象にしている。

治療ラインに関しては、同試験の結果高い無増悪生存期間PFS)の延長効果が認められたため、今後の全生存期間OS)の結果次第では、エンハーツを使うラインが早まる可能性がある。

またHER2超低発現症例において、HER2低発現症例と同等のエンハーツによるPFS改善が認められたことは非常に興味深い。今後実臨床でどのようにHER2(超)低発現症例を検出していくかが重要になりそうだ。

更に実臨床導入にあたっては、トラスツズマブ デルクスデカンに特徴的な副作用である間質性肺疾患(ILD)への対応も引き続き重要な課題だ。

CDK4/6阻害剤+内分泌療法で進行したホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんに対するCDK4/6阻害剤継続の有用性を検討:postMONARCH試験

postMONARCH試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんにおいて、初回治療のCDK4/6阻害剤+内分泌療法で進行後、フェソロデックス(一般名:フルベストラント)にCDK4/6阻害剤ベージニオ(一般名:アベマシクリブ)を追加することでPFSが改善することを示した試験。

初回治療で使用したCDK4/6阻害剤の種類によって結果にばらつきがあり、特に日本における初回治療で使われることの多いベージニオで進行後、さらにベージニオ追加の意義があるかどうかは解釈が難しい。日本においては、ベージニオの進行後の継続投与を検討したWJOG14220B試験の結果も待たれるところである。

HER2陽性進行/再発乳がんにおけるハーセプチン+パージェタに対するハラヴェン併用の有効性を検討:EMELARD試験

EMELARD試験は、HER2陽性進行/再発乳がんの標準療法であるハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)+パージェタ(一般名:ペルツズマブ)に対するタキサン抗がん剤併用療法と、ハーセプチン+パージェタに対するハラヴェン(一般名:エリブリン)併用療法を比較した日本からの報告。ハラヴェン併用療法でも、タキサン系抗がん剤を併用した場合と同等のPFS改善効果を有することが示された。

同試験は、副作用などの観点からタキサン系抗がん剤が使えない症例に対してのインパクトが大きく、今後ハーセプチン+パージェタに対するハラヴェン併用が第一選択薬のひとつとなり得る可能性を示した。

周術期

ホルモン受容体弱陽性乳がんにおける術後内分泌療法の必要性に関するデータベースを使った後ろ向き解析

ホルモン受容体(エストロゲン受容体:ER)弱陽性乳がんは、トリプルネガティブ乳がんに類似の性質を持ち、化学療法への反応性が高いとされており、内分泌療法の省略が検討されるケースもある。しかし今回の米国のデータベース(National Cancer Database)を使った後ろ向きに解析の結果、内分泌療法を省略することで有意にOSの短縮が認められた。

データベース研究という制限があるため、今回の結果からER弱陽性全例に内分泌療法が有効とは結論付けられないが、今後の実臨床において、ER弱陽性症例においても、術後の内分泌療法の実施を選択肢として考慮していくことが重要になってくるのではないか。

手術および標準的な周術期化学療法後に再発高リスクとされたトリプルネガティブ乳がんにおける術後療法としてのバベンチオの有効性を検討:A-BRAVE試験

A-BRAVE試験は、高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における術後1年間の抗PD-L1抗体バベンチオ(一般名:アベルマブ)の有効性を評価した試験。PFSの有意な改善は見られていないものの、OSの有意な改善が認められた。

同試験は、周術期免疫療法においてOS延長を認めた最初の試験であるが、現在の標準治療である周術期キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)併用のKEYNOTE-522試験でもOSの有意な延長が認められたことがつい先日発表され、今後の詳細な発表が待たれる。

術後のバベンチオが今後の実臨床にどのように使われていくかは、今後の詳細な解析次第だと思われるが、手術時に最初の予測よりも高リスクであることが判明した場合や、先行手術後に術後療法が必要と判断された場合、選択肢として有用と考えられる。

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