この記事の3つのポイント
・高リスク早期トリプルネガティブ乳がんを対象とした第3相A-BRAVE試験
・術後療法としての抗PD-L1抗体薬であるバベンチオの有効性・安全性を比較検討
・バベンチオは無病悪生存期間は改善しないが、全生存期間を延長
2024年5月31日から6月4日、米国・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会2024(ASCO 2024)にて、ハイリスク早期トリプルネガティブ乳がん患者に対する術後療法としての抗PD-L1抗体薬であるバベンチオ(一般名:アベルマブ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相A-BRAVE試験の結果がUniversity of PaduaのPier Franco Conte氏らにより公表された。
本試験は、ハイリスク早期トリプルネガティブ乳がん患者に対して術後療法として2週を1サイクルとしてバベンチオ単剤を1年間投与する群、もしくは経過観察をする群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無病悪生存期間(DFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同ランダム化の第3相試験である。なお高リスクの定義は、術前療法後で乳房、リンパ節での浸潤性残存病変がある患者(Stratum A)、術後のTNM分類で>pN2/any pT、pN1/pT2もしくはpN0/pT3である。
主要評価項目である3年無病悪生存率(DFS)はバベンチオ群の68.3%(95%信頼区間:61.9%-73.8%)に対して経過観察群で63.4%(95%信頼区間:56.8%-69.3%)と、バベンチオ単剤群で病勢進行または死亡のリスクを18%減少(HR:0.82,95%信頼区間:0.61-1.11,P=0.19)した。
Stratum A群の3年DFSはバベンチオ群の66.9%(95%信頼区間:59.8%-73.1%)に対して経過観察群で61.0%(95%信頼区間:53.6%-67.6%)と、バベンチオ群で病勢進行または死亡のリスクを19%減少(HR:0.81,95%信頼区間:0.58-1.11,P=0.194)した。
副次評価項目である3年全生存率(OS)はバベンチオ単剤群の85.2%(95%信頼区間:79.9%-89.2%)に対して経過観察群で78.2%(95%信頼区間:72.2%-83.1%)と、バベンチオ群で死亡のリスクを34%減少(HR:0.66,95%信頼区間:0.44-0.98,P=0.041)した。
Stratum A群の3年OSはバベンチオ群の83.1%(95%信頼区間:77.1%-87.8%)に対して経過観察群で76.6%(95%信頼区間:69.6%-82.1%)と、バベンチオ群で死亡のリスクを33%減少(HR:0.67,95%信頼区間:0.44-1.03,P=0.06)した。
以上の第3相試験の結果より、Pier Franco Conte氏らは「高リスク早期トリプルネガティブ乳がん患者に対する術後療法としての抗PD-L1抗体薬バベンチオ単剤療法は、DFSを大幅に改善しませんが、副次的評価項目であるOSは大幅に改善されました」と結論付けた。
参照元:・術後療法としての抗PD-L1抗体薬であるバベンチオの有効性・安全性を比較検討
・バベンチオは無病悪生存期間は改善しないが、全生存期間を延長
A-BRAVE trial: A phase III randomized trial with avelumab in early triple-negative breast cancer with residual disease after neoadjuvant chemotherapy or at high risk after primary surgery and adjuvant chemotherapy.(ASCO 2024)