ASCO 2024:消化器がんがん種別にみたポイント


  • [公開日]2024.06.26
  • [最終更新日]2024.06.26

胃がん

Claudin18.2陽性HER2陰性進行胃がんにおけるビロイ+mFOLFOX6併用療法の有効性の検討:SPOTLIGHT試験の最終解析

SPOTLIGHT試験は、Claudin18.2陽性HER2陰性の切除不能な局所進行/転移性腺がん、食道胃接合部腺がんの初回治療として、抗Claudin18.2モノクローナル抗体ビロイ(一般名:ゾルベツキシマブ)+mFOLFOX6の併用療法有効性を示した試験であり、今回の最終解析において継続した無増悪生存期間PFS)および全生存期間OS)の改善効果が認められた。

今回の解析から、毒性などの理由で早期離脱した症例を除いた場合、より早い段階からビロイの有効性が認められたこと、またビロイにより完全奏効または部分奏効が得られた症例は、より長い予後が期待できることが示された。

ビロイは今年3月に日本国内で承認を取得し、6月12日から販売がスタートしているため、今回のデータは今後実臨床で使っていく上で非常に参考になりそうだ。

食道がん

切除可能局所進行食道・接合部腺がんにおける術前化学放射線療法と術前・術後化学療法を比較:ESOPEC試験

ESOPEC試験は、切除可能局所進行食道・接合部腺がんに対する世界的な2つの標準療法である術前化学放射線療法(パクリタキセルカルボプラチン+41.4Gyの放射線:CRT)と術前・術後化学療法(5-FU+LV+オキサリプラチンドセタキセル:FLOT)を比較した第3相試験。今回の結果から、術前・術後化学療法群の方が有意にOSを改善することが示された。

日本における切除可能局所進行食道・接合部腺がんの標準療法では、FLOTやDCS(ドセタキセル、シスプラチン、S-1)をはじめとする術前化学療法が主流となっている。そのため今回の結果は、周術期化学療法としてドセタキセルを使う意義が示されたという観点から、日本にもインパクトがある結果であったと考えられる。

ただし現在の実臨床では、術前CRT+術後抗PD-1抗体オプジーボ(一般名:ニボルマブ)療法も治療選択肢であるため、最適な治療法の決定には更なる解析が必要だろう。

大腸がん

高頻度マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復機能欠損の切除不能/転移性大腸がんにおけるオプジーボ+ヤーボイ併用療法の有効性を検討:CheckMate 8HW試験の追加解析

CheckMate 8HW試験は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)切除不能/転移性大腸がんにおいて、初回治療としての抗PD-1抗体オプジーボ+抗CTLA-4抗体ヤーボイ(一般名:イピリムマブ)併用療法を化学療法と比較した試験。既に今年のASCO GI(米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム)にて、PFSの有意な改善が示されていた。

今回発表されたのは、PFS2 (ランダム化から二次治療による増悪あるいは死亡が認められるまで=2度目の増悪か死亡までの期間)の結果。同試験ではクロスオーバーが許容されていたため、化学療法群で後治療に進んだ症例の大部分は二次治療としてオプジーボ+ヤーボイを実施したが、それでもなお初回オプジーボ+ヤーボイ併用療法群が優位な結果となった(PFS2:未到達 vs 29.9ヶ月)。

今後、MSI-H/dMMR大腸がん患者に対する初回治療に、現在のキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)に加えてオプジーボ+ヤーボイが選択肢として入ってくることが予想される。また同時に、大腸がんの初回治療決定の際のMSI検査の重要性も高まっていくだろう。

高頻度マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復機能欠損の直腸がんにおけるドスタルリマブ単剤療法の有効性を検討:NCT04165772

MSI-H/dMMR局所進行直腸がんに対して6か月間のドスタルリマブ投与の有効性を検討。今回の発表では、ドスタルリマブによる治療を完遂した42人全員が完全奏効を達成し、その後の化学療法、化学放射線療法および手術を受けなくても局所再発や遠隔再発が起きていないことが示された。

MSI-H/dMMR直腸がんを対象にドスタリマブ単剤の有効性を検討するAZUR-1試験が進行中であり、日本の施設も参加している。今後、直腸がんの特定の集団において、免疫療法単独で寛解状態を維持できるようになることが期待される。

3cm以下の大腸がん肝転移におけるアブレーション(熱焼灼療法)と外科的切除の有効性・安全性を比較:COLLISION試験

COLLISION試験は、3cm以下の小さな肝転移を有する(肝以外の転移なしの)大腸がんにおいて、肝転移に対する外科的切除とアブレーションを比較した試験。アブレーションは外科切除と同等の局所制御が可能であり、全生存期間も損なわないことが示された。更に、治療に関連した死亡や有害事象はアブレーションの方が低く抑えられ、同試験は途中で有効中止となった。

同試験自体には日本は参加していなかったが、大腸がんの特定の集団に対するアブレーションの有効性が裏付けられ、実臨床における今後の治療選択にインパクトをあたえることが予想される。

肝細胞がん

切除不能な進行肝細胞がんの初回治療におけるオプジーボ+ヤーボイ併用療法とレンビマまたはネクサバールとの比較:CheckMate 9DW試験

CheckMate 9DW試験は、未治療の切除不能肝細胞がんの初回治療において、抗PD-1抗体オプジーボ+抗CTLA-4抗体ヤーボイの併用療法と、チロシンキナーゼ阻害剤レンビマ(一般名:レンバチニブ)またはネクサバール(一般名:ソラフェニブ)を比較した試験。併用療法によりOSの有意な延長が認められた。

進行肝細胞がんの初回治療に使える免疫チェックポイント阻害剤併用療法には、既にイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)+イジュド(一般名:トレメリムマブ)とテセントリク(一般名:アテゾリズマブ)+アバスチン(一般名:ベバシズマブ)の2つがある。今回報告されたオプジーボ+ヤーボイは、高い奏効率が特徴であるが、実臨床において複数ある免疫チェックポイント阻害剤併用療法をどのように使い分けていくのか、今後の課題となりそうだ。

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