悪性リンパ腫の化学療法


  • [公開日]2017.07.04
  • [最終更新日]2017.07.12

化学(薬物)療法について

悪性リンパ腫の治療では、複数の抗がん剤分子標的薬抗体薬)を組み合わせた薬物療法が行われます。使う薬の種類は、悪性リンパ腫のタイプや悪性度によって違います。薬物療法だけ、あるいは薬物療法と放射線療法を組み合わせた治療で治る人も増えています。

薬物療法は、抗がん剤などの薬を注射・点滴、内服することで、全身に散らばっているがん細胞を死滅させ、増殖を抑える治療法です。リンパ腫がある部分はもちろん、検査ではみつからないくらい微小ながん細胞をたたく効果も期待できます。

悪性リンパ腫は抗がん剤が効きやすく、複数の薬を組み合わせて投与する薬物療法だけ、あるいは放射線療法との併用で治癒する可能性のあるがんです。

治療に使う抗がん剤は、ホジキンリンパ腫か非ホジキンリンパ腫かによって、また悪性リンパ腫のタイプによって異なります。

ホジキンリンパ腫のABVD療法

ホジキンリンパ腫の薬物療法の標準治療は、ドキソルビシンアドリアマイシン(A))、ブレオマイシン(B)、ビンブラスチン(V)、ダカルバジン(D) を合わせて投与するABVD療法です。

1日目と15日目に4つの薬の注射・点滴を受けて1コース。これを4週間ごとに繰り返します。限局期(Ⅰ、Ⅱ期)ではABVD療法4コースの後、放射線療法を行い、進行期(Ⅲ、Ⅳ期)では放射線療法を行わず、ABVD療法のみ6~8コースが標準的です。

非ホジキンリンパ腫の薬物療法

低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫の薬物療法は、分子標的薬のリツキシマブ(抗CD20抗体)が中心です。リツキシマブは週1回ずつ計4~8回点滴します。この薬は骨髄抑制など従来型の抗がん剤にみられる副作用が軽いのが特徴です。ただ点滴開始後30分から2時間で急な発熱、悪寒、呼吸困難、血圧低下などが起こる「インフュージョン・リアクション(輸注関連反応)」が現れやすい傾向があります。

特に初回に起こりやすいので、1回目だけは入院で、2回目以降は外来で行うことが多くなっています。

化学(薬物)療法の副作用

薬物療法中や治療直後はアレルギー反応、血管外漏出、吐き気・嘔吐、3日〜2週間後に骨髄抑制、口内炎、倦怠感が出現しやすくなります。末梢神経障害、脱毛など2週間以降に出る副作用もあります。

副作用には、吐き気・嘔吐、発熱、下痢、便秘など自分でわかるものと、骨髄抑制(白血球・血小板・赤血球・好中球減少)、肝機能障害など、ほとんど自覚症状がなく検査でわかるものがあります。

また、副作用の種類、強さ、出現時期は、使う薬や投与方法によって異なります。実際には個人差が大きい面もありますが、主な症状が出やすい時期、対処法を知っておくとよいでしょう。

悪性リンパ腫の薬物療法に共通する主な副作用は、骨髄抑制、吐き気・嘔吐、食欲不振、全身倦怠感、薬が漏れて皮膚や皮下組織が腫れて痛みを起こす血管外漏出です。吐き気・嘔吐には点滴治療中から起こる急性の症状と、2~7日目から起こる遅延性のものがありますが、どちらも予防薬を服用することで症状を軽減できるようになってきています。

ABVD療法、CHOP療法、CVP療法では、便秘、味覚障害、脱毛、口内炎も出現しやすい傾向があります。ドキソルビシンは心臓に影響を及ぼす場合がありますし、シクロホスファミドは膀胱炎に要注意です。ビンクリスチンを使った薬物療法では、手足や口のしびれといった末梢神経障害が出現しやすくなります。

プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンは副腎皮質ホルモンの内服薬で、不眠、いらいら感、胃・十二指腸潰瘍、糖尿病の悪化、骨がもろくなる、感染しやすい、高血圧など、抗がん剤とは異なる副作用があります。ただし、この薬はリンパ腫を縮小し、抗がん剤の副作用を抑える効果があるので飲み忘れないようにしましょう。

リツキシマブ、ブレンツキシマブベドチン、モガムリズマブは、点滴開始後30分~2時間にインフュージョン・リアクションというアレルギー反応(輸注関連反応)が起きやすい薬です。まれですが、これらの薬やフルダラビン、ベンダムスチンは、治療後12~72時間以内に体内の尿酸が増え、カリウム、カルシウム、リンなど電解質のバランスが崩れる腫瘍崩壊症候群が出現することもあります。

点滴で水分を補給し予防薬を服用すれば予防できるケースが多いのですが、尿の量や回数が減ったときには医師や薬剤師、看護師に伝えましょう。副作用の種類と程度によっては薬の量や投与回数の軽減、薬物療法の休止が必要な場合があります。薬物療法を受ける前に、出やすい副作用とその対処法、どういうときに病院へ連絡すべきかを必ず確認しておきましょう。

副作用に対する薬の開発も進んできています。つらい症状や不安があったら担当医や薬剤師、看護師に相談することが大切です。副作用を怖がって薬物療法を勝手に中断したり我慢しすぎたりしないようにしましょう。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが出版する「もっと知ってほしい悪性リンパ腫のこと」より抜粋・転記しております。

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