膀胱がんの化学療法


  • [公開日]2015.01.04
  • [最終更新日]2019.01.31

化学(薬物)療法について

再発リスクの高い表在性がん、あるいは上皮内がんの場合にはBCG注入療法を、がんがリンパ節や別の臓器に転移している場合には、全身化学療法を行います。転移がない病期Ⅲの人にも、再発予防のために手術の前か後に薬物療法を実施することがあります。

膀胱がんは、初期のがんでも再発を繰り返すことが多いので、重い合併疾患があって抗がん剤治療ができない人以外は、再発予防のために薬物療法を受ける必要があります。

表在性がんの抗がん剤治療

表在性がんで再発リスクの低い人は、TURBT後24時間以内に1回だけアントラサイクリン系薬剤(エピルビシン、ドキソルビシンピラルビシン)、マイトマイシンCといった抗がん剤を膀胱内に注入します。

さらに、腫瘍が2個以上、3センチ以上、悪性度が高いなど、リスクの高い人はTURBT後2~3週目から週1回計6~8回程度、膀胱内に抗がん剤を注入する維持療法、あるいは膀胱内にBCGを注入する治療を外来で行います。

膀胱内BCG注入療法

膀胱内BCG注入療法は、結核予防ワクチンであるBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱に注入する方法です。再発リスクの高い表在性がんや上皮内がんの再発を予防するために、標準的には週1回計6~8回投与します。

また、効果がない場合や膀胱内に再発した場合、週1回計6~8回BCG注入療法が行われます。効果があった人でも、初期治療から3か月後に週1回計3回、その後は2年程度、半年に1回、週1回計3回BCGを膀胱内に注入する維持療法を行う場合があります。

ただ、BCG注入療法は表在性がんに対して行われる抗がん剤治療よりも副作用の強い治療です。ほかの病気で免疫力が下がっている人は結核に感染する危険があるので、この治療は行えません。

また、頻尿、排尿痛など膀胱刺激症状、血尿、関節痛、腰痛、発熱、発疹といった副作用がかなり高い割合で出現します。これらは2~3日で回復することが多いのですが、まれに、重篤なアレルギー症状や炎症によって膀胱が委縮して使えなくなる委縮膀胱が起こるリスクもあります。

副作用を軽減するために、BCGの投与量を減らす方法が国内外で検討されていますが、低用量のBCGでも同じような再発予防効果が得られるかどうかの結論が出ていません。

現段階では、80mg程度のBCGを投与する方法が最も再発リスクが低く、これが標準治療です。なお、BCG注入療法を2セット行っても、まったく効果がみられないときには、膀胱全摘除術が検討されます。

浸潤性がんの抗がん剤治療

浸潤性がんの場合には、再発を予防するために、手術前か後に複数の抗がん剤を合わせて投与する全身化学療法が行われます。膀胱がんに対する主な薬物療法には、メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチンを併用するM-VAC療法と、ゲムシタビンとシスプラチンを併用するGC療法があります。

1980年代からM-VAC療法を中心に治療が行われてきましたが、この治療法は副作用が大きいのが難点でした。GC療法は効果がM-VAC療法と同等でありながら副作用が少ないため、最近では、GC療法が第一選択になってきています。

GC療法では、1日目にゲムシタビン、2日目にシスプラチン、8日目、15日目にゲムシタビンを点滴します。その翌週は抗がん剤を投与せず28日間で1コース、計2~3コース行います。

薬物療法を術前と術後のどちらに実施するかは病院によって、また患者さんによっても異なります。膀胱全摘除術前の薬物療法が再発リスクを下げることは科学的に証明されていますが、効果がなければがんが進行してしまう恐れがあるからです。

その利点と欠点を聞き、術前と術後のどちらに薬物療法を受けるか、担当医とよく相談し、納得して治療を受けるようにしましょう。浸潤性がんで膀胱温存治療を希望する場合には、足のつけ根にカテーテルを入れ、そこからシスプラチンなどの抗がん剤を注入する動注化学療法と放射線療法が同時併用されます。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2015年1月に出版した「もっと知ってほしい 膀胱がんのこと」より抜粋・転記しております。

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