卵巣がんの治療


  • [公開日]2023.01.01
  • [最終更新日]2023.01.23

卵巣がんの治療の決め方

卵巣がんでは、まず治療目的かつ進行期を判断するために、手術が行われます。がんが進行していて手術で取りきることが難しいと判断された場合には、手術の前に薬物療法を行い、がんを小さくしてから手術を行うこともあります。

その後、がんの手術進行期や組織型、異型度、遺伝子変異の有無などに応じて標準治療が決まっています。実際には、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態なども考慮し、総合的に検討して治療を決定していきます。

卵巣がんの手術

初回(一次的)腫瘍減量手術・進行期決定回復手術

目に見えるがんをできるだけ取り切ることを目的とし、両側の卵巣と卵管を同時に摘出する両側付属器摘出術、子宮全摘出術、大網切除術などを行います。

また、手術進行期を診断する目的で、腹腔細胞診、腹腔内各所の生検、骨盤・傍大動脈リンパ節郭清などが実施されます。

試験開腹術

がんの進行などにより初回腫瘍減量手術が難しい患者さんに対して、組織型の確定と可能な範囲内での進行期の確認のみを目的として行う手術です。

中間腫瘍減量術

初回手術が試験回復術だった場合や、がんが取り切れずに1cm以上がんが残った場合に実施される手術です。薬物療法による治療を行い、がんの縮小状況を見ながら手術を検討していきます。

妊よう性温存療法

がんの悪性度が低く、片側の卵巣・卵管だけにとどまっている場合などには、がんのない方の卵巣と卵管を切除せずに、妊娠の可能性を残す手術ができる場合もあります。

ただし、手術進行期がⅠA期で異型度が低い(グレード1)がんであることなどの条件があります。

また、妊娠への強い希望があり、患者さん本人とそのご家族が、がんの状態や治療、再発リスクについて十分理解していること、治療後も長期にわたり慎重に経過観察を続けることなどが必要です。

卵巣がんの放射線療法

卵巣がんでは、初回の治療として放射線治療が選択されることはありません。

再発・転移が見られ、痛みや出血などがある場合には、症状を緩和する目的で局所的に放射線を使うことがあります。また脳転移に対しては、症状緩和だけでなく、予後改善の目的で放射線を照射することもあります。

卵巣がんの薬物療法

卵巣がんの薬物療法には、初回手術の前、または試験開腹術後に根治手術の可能性を高める目的で行う術前薬物療法、手術の効果を高める目的で行う術後薬物療法、寛解後に長期生存を目的として行う維持療法、そして再発時や初回療に抵抗性を示した場合に行う二次療法があります。

細胞障害性抗がん剤

タキサン製剤であるパクリタキセルと、プラチナ製剤であるカルボプラチンの併用療法(TC療法)が卵巣がんの初回療法として使われる代表的な初回の標準治療です。また、タキサン製剤を毎週投与することで総投与量を増やすdose-dense TC療法も、標準治療として使われます。

再発後の治療に関しては、再発までの期間が6カ月未満(プラチナ抵抗性再発)の場合、プラチナ製剤が効きにくいがんであると考えられるため、異なる種類の薬を単独で使用する治療を検討します。また、分子標的薬を追加して治療することもあります。

一方再発までの期間が6カ月以上(プラチナ製剤感受性再発)の場合は、プラチナ製剤を含む複数の細胞障害性抗がん薬を使った治療を中心に検討します。また、追加で維持療法を行うこともあります。

分子標的薬

がん細胞は、栄養や酸素を供給するために新しく血管を作ることが知られており、この血管新生には血管内皮増殖因子(VEGF)が重要な働きをしています。このVEGFをターゲットとして血管新生を妨げ、がんの増殖を抑える分子標的薬のひとつが、ベバシズマブ(製品名:アバスチン)です。卵巣がんでは、TC療法にベバシズマブを追加した治療も標準治療として検討されます。薬の効果により寛解が見られた場合には、ベバシズマブを維持療法として使うことも検討します。

また、損傷したDNAを修復するPARPという酵素をターゲットとしたPARP阻害剤も、卵巣がんで使われる分子標的薬です。BRCA1/2変異が原因で起きる「遺伝性乳がん卵巣がん」における初回化学療法後の維持療法として、またはプラチナ製剤感受性再発の患者さんにおける維持療法として使われます。具体的な薬剤としては、オラパリブ(製品名:リムパーザ)やニラパリブ(製品名:ゼジューラ)などがあります。

またニラパリブは、3回以上の抗がん剤治療歴があり、相同組み換え修復欠損がある場合と分かった場合の治療としても使用されます。

免疫チェックポイント阻害剤

頻度は高くありませんが、遺伝子検査でマイクロサテライト不安定性が高い場合(MSI-H)であれば、免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブが提案されます。

薬物療法の副作用

細胞障害性抗がん薬の副作用としては、吐き気、食欲不振、白血球減少、血小板減少、貧血、口内炎、脱毛、しびれなどの末梢神経障害などが挙げられます。

ベバシズマブの主な副作用としては、出血、高血圧、タンパク尿、血栓塞栓症、創傷治癒遅延(傷の治りが遅くなること)、消化管穿孔などがあります。

また、PARP阻害剤の副作用としては、悪心、嘔吐、貧血などに加え、維持療法として長期にわたって使う場合には、二次がんの発生にも注意が必要とされています。

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