[公開日] 2023.01.01[最終更新日] 2024.10.03
卵巣とは
卵巣は、子宮の両側につながっている卵管の先にある、親指大の楕円形の臓器です。卵巣の表面を覆う上皮(表層上皮)、卵子のもとになる胚細胞、性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を作る性索細胞、間質細胞などから成ります。女性ホルモンを分泌し、閉経までの間、卵子を発育、・放出する働きをしています。
卵巣にできるがんを卵巣がんと言いますが、悪性であるがんの他にも、「良性腫瘍」や悪性と良性の中間的な性質をもつ「境界悪性腫瘍」があります。
がんの発生源となる組織によって、「上皮性腫瘍」、「胚細胞腫瘍」、「性索間質性腫瘍」の3つに分けることができ、卵巣がんの約90%が上皮性腫瘍です。
卵巣がんの罹患率と生存率
日本において、卵巣がんと診断された患者数は、2019年の報告で13,388例です。病期毎の5年相対生存率は、I期:91%、II期:74%、III期:45%、IV期:27%(国立がんセンターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」より)となっています。
卵巣がんの原因
卵巣がんの危険因子としては、加齢の他に、出産未経験や、高脂肪食、肥満などが挙げられます。
また、遺伝的に乳がんや卵巣がんになりやすい家系の患者さんが約10%を占めており、その代表例が遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。遺伝性のがんの場合には、若年でも発症するリスクが高くなります。
卵巣がんの症状
卵巣がんは、初期には自覚症状がほとんどないのが特徴で、かなり進行してから発見される場合も少なくありません。腹部膨満感(お腹の張りや痛み)や、下腹部のしこり、食欲不振などをきっかけに見つかることもあります。また、がんが進行すると、腹水が溜まることでお腹が突き出てきたり、がんによって膀胱や直腸が圧迫されて頻尿や便秘が起きることもあります。
卵巣がんの種類
卵巣がんには様々な種類があり、予後や治療の効き方がそれぞれ異なります。
例えば、卵巣がんの大部分を占める上皮性の卵巣がんは、漿液性がん、明細胞がん、類内膜まくがん、粘液性がんなどの組織型に分類されます。
また、がんの悪性度の高さを示す異型度による分類もあります。
例えば、漿液性がんは、低異型度と高異型度の2つに分けられます。低異型度のがんは、発生源である正常な組織や細胞に近い形態をしていて、悪性度はそれほど高くありません。一方、高異型度のがんは、悪性度が高いという性質を持っています。
類内膜がんの異形度は1~3に分けられ、グレードが上がるにつれて悪性度が高くなります。
また明細胞がんは、すべて悪性度が高い性質を示すため、異型度がつかない組織型となっています。
さらに、一部の卵巣がんは、BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子の異常が原因で発症するため、遺伝子変異に応じた治療が検討されます。(詳しくは【卵巣がんの薬物療法】の項目を参照ください。)。
卵巣がんの予後
卵巣がんでは、手術により取り切れたかどうかが予後に大きく影響するため、残っているがんが小さいほど予後良好の傾向があります。
また、手術や化学療法後の再発が多いため、治療終了後も定期的に受診し、再発を早く発見することが大切です。
がん種一覧
卵巣がん