2025年7月23日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて、BRCA変異陰性のプラチナ抵抗性または難治性高悪性度漿液性卵巣がんに対するPI3K阻害剤アルペリシブ+リムパーザ(一般名:オラパリブ)の有効性・安全性を評価した
第3相EPIK-O試験の結果が報告された。
試験デザイン
対象
プラチナ抵抗性またはプラチナ不応性のBRCA変異陰性卵巣がん患者
治療法(レジメン)
試験群:アルペリシブ+リムパーザ(n=180)
対照群:主治医選択の化学療法(n=178)
評価項目
主要評価項目:盲検下独立中央評価委員会(BIRC)による無増悪生存期間(PFS)
副次評価項目:全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)など
結果
追跡期間中央値は9.3ヶ月であり、データカットオフ時点で試験群の33名(18.3%)、対照群の30名(16.9%)が治療を継続していた。
全体で35.2%にPARP阻害剤の投与歴が、また79.6%にアバスチン(一般名:ベバシズマブ)の投与歴があった。
有効性
主要評価項目であるPFSの中央値は、試験群で3.6ヶ月に対して対照群で3.9ヶ月であり、統計学的な有意差は認められなかった(ハザード比:1.14、95%信頼区間:0.88-1.48、片側p=0.84)。
副次評価項目については、ORRが試験群で15.6%(95%信頼区間:10.6-21.7%)に対して対照群で13.5%(95%信頼区間:8.8-19.4%)、DORの中央値が7.4ヶ月(95%信頼区間:5.0-12.9ヶ月)に対して5.6ヶ月(95%信頼区間:3.8ヶ月-測定不能)であった。
またOSに関しては、主要評価項目であるPFSが優位性の基準を満たさなかったため、統計的な検証はなされなかったが、OSの中央値の参考値は試験群で10.0ヶ月に対して対照群で10.6ヶ月であった(ハザード比:1.22、95%信頼区間:0.87-1.71)。
探索的なバイオマーカー解析により、PI3K経路の異常と相同組換え修復欠損(HRD)陰性の症例に相関が認められ、これらの集団がアルペリシブ+オラパリブに反応する可能性が示唆された。
安全性
試験群の安全性プロファイルは、個々の薬剤のプロファイルと一致していた。
全グレードの有害事象の発現率、および重篤な有害事象発現率は、試験群でそれぞれ98.9%と51.1%、対照群ではそれぞれ97.6%と30.5%と報告された。
試験群において最もよく見られた有害事象は、吐き気(61.7%)、高血糖(52.2%)、嘔吐(41.7%)、下痢(41.1%)であり、グレード3以上では高血糖 (18.9%)、次いで嘔吐(10.0%)、吐き気(9.4%)、貧血(7.2%)であった。
結論
プラチナ抵抗性または難治性のBRCA変異陰性卵巣がんに対するアルペリシブ+リムパーザの併用療法は、有効性の基準を満たさず、更なる治療開発の必要性を示している。
参照元:
Primary Analysis of EPIK-O/ENGOT-ov61: Alpelisib Plus Olaparib Versus Chemotherapy in Platinum-Resistant or Platinum-Refractory High-Grade Serous Ovarian Cancer Without BRCA Mutation(J Clin Oncol. 2025 DOI: 10.1200/JCO-25-00225.)