急性骨髄性白血病(AML)の症状
急性白血病の症状には、下記の2種類があります。
造血障害では、成熟して血液細胞としての役割を果たしてくれる細胞が減ってしまうことが原因で引き起こされます。(出血傾向は血小板減少によりますし、易感染性は外界からの異物や寄生虫を排除してくれる白血球が減ってしまうことが原因です。貧血は酸素を運ぶ赤血球が減ってしまうことが原因ですね)。
AMLの1つである急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL(M3))では、播種性血b管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation : DIC)を合併すると、顕著な出血傾向をきたすことが知られています。以下に理由を説明します。
DICは急性前骨髄性白血病に合併することがよく知られている疾患です。急性白血病ですと、白血病細胞の中にある血液を凝固させる物質によっていったんは凝固が亢進するのですが、その働きが長く続いてしまうために凝固因子が次第に減少します(凝固因子が足りなくなるわけです)。
さらに、血液凝固がいったん亢進してしまったがゆえに、代償性に血液をサラサラにしようという働きが強まります(線溶といいます)。
凝固と線溶が釣り合っているうちは良いですが、凝固が弱まり、線溶系が亢進したままになると、けがをして出血したところがなかなか治らない(=出血傾向)という病態を呈するわけです。これが、急性白血病とDICを合併した際に顕著にみられるのです。
造血障害は比較的早期の急性白血病によくみられます。一方で、臓器浸潤の方は診断までの期間が遅れた急性白血病で起こります。造血障害→臓器浸潤という時系列です。
臓器浸潤は骨髄の中で白血病細胞が増殖しすぎて、そこにはとどまりきれなくなった白血病細胞たちが行き場を探して本来存在しないはずの臓器に浸潤していくことです。浸潤先は様々で、脾臓、肝臓、リンパ節、皮膚や脳髄膜まで浸潤することもあります。
脳髄膜へ浸潤すると中枢神経症状をきたし、肝臓や脾臓、リンパ節に浸潤すれば、浸潤先の臓器が腫大します。
AMLの診断
AMLを発見し診断するために、血液、骨髄を調べる検査が行われます。
•理学的所見および既往歴
➡全身を調べて、しこりや何か異常にみえるものなど疾患徴候を含めた一般的健康状態をチェックする。また患者さんのこれまでの生活習慣や過去の疾患および治療の病歴についても調べる。
•全血球数算定検査(CBC)
➡血液サンプルを採取し、下記の項目を調べる手法:
・赤血球、白血球および血小板数
・赤血球中のヘモグロビン(酸素を運ぶ蛋白質)量
・サンプルにおける赤血球の構成比率
•末梢血塗抹標本
➡芽細胞、白血球の数と種類、血小板数、血球細胞の形の変化について、血液サンプルを調べる手法
•骨髄吸引・生検
➡寛骨または胸骨に中空針を挿入して骨、血液および骨髄組織の小片を摘出する。病理医が骨髄、血液、骨を顕微鏡下で観察し、がんの徴候があるかどうかを調べる。
•細胞遺伝学的分析
➡染色体に変化があるかどうかをみつけるために血液、骨髄サンプルを顕微鏡下で調べる検査室検査。染色体における変化を調べるために蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)など他のテストが行われることもある。
•免疫表現型
➡細胞表面上の抗原またはマーカーのタイプに基づいて細胞を同定するために用いられる手法。この手法は免疫系の正常な細胞とがん細胞を比較することでAMLのサブタイプを診断するために用いられる。たとえば、細胞化学検査ではサンプルのある変化を調べるために、化学製品(染料)を用いて組織のサンプルの細胞を検査する。
•逆転写ポリメラーゼ連鎖反応検査(RT-PCR)
➡組織サンプル中の細胞が、遺伝子の構造か機能におけるある変化を探すために、化学物質を用いて行われる検査室検査。この検査は急性前骨髄球性白血病(APL/M3)を診断するために行われる。
AMLの予後
AMLの予後(治癒の可能性)と治療法の選択は以下の条件によって異なります。
•患者さんの年齢
•AMLのサブタイプ
•患者さんが別のがんの治療に対して過去に化学療法を受けているかどうか
•骨髄異形成症候群などの血液障害の既往歴があるかどう。
•がんが中枢神経系まで拡がっているかどうか
•がんが以前に治療されているか、または再発(再燃)しているかどうか
白血病の基本情報