急性白血病の再発について
具体的な話の前に、総論的な説明をします。急性白血病では完全寛解後も微小残存病変(MRD)が存在していて、それが再び増殖してくることを再発と呼びます。寛解導入療法中や、終了後にも再発が起こる場合があります。
急性白血病の場合だと完全寛解後3~5年以内に起こることが多いです。再発した場合は、再発前に用いていた化学療法を行っても効果を期待できないので、以前とは異なる化学療法(救援療法/サルベージ療法)や、造血幹細胞移植を行うことが多いです。
ここからはそれぞれの疾患特異的に説明していきます。
急性骨髄性白血病が再発・転移した場合
急性骨髄性白血病が再発するケースは初回寛解導入療法によって一度寛解したのち、予後良好と判断されたため、もしくは予後中間・不良と判断されたが同種造血幹細胞移植のドナーがいないために地固め療法を行っていた場合に再発することがあります。
再発してしまったらまず再寛解導入療法を行います。この他、同種造血幹細胞移植も可能かどうか検討します。この時期の急性骨髄性白血病では患者さん個人にあった治療を検討していく必要があります。
また、急性骨髄性白血病のなかでも急性前骨髄球性白血病が再発した場合では、それまで用いていたオールトランス型レチノイン酸(ATRA)がそのまま用いることができたり、抗CD33抗体療法を行うことができたりする場合があります。
治療効果が認められない場合は緩和医療に切り替えるなど、患者さんに寄り添った医療を提供する必要があります。
次に転移についてですが、白血病には転移という概念と言うより浸潤という概念で理解したほうがよろしいかと思います。骨髄で白血病細胞がこれ以上増えるスペースがない!となった場合、本来血液細胞は骨髄や末梢血中にしかないわけですが、白血病細胞がリンパ節に腫瘍として出てきたり、中枢神経に浸潤して精神症状を呈したりします。
普通のがんでいうところの転移は他の臓器に飛んでそこでまた癌細胞として増殖していきますが、白血病では骨髄で増えたものが飽和して血液を介して全身に飛んで行って腫瘤を形成するイメージです。
急性リンパ性白血病が再発・転移した場合
成人の急性リンパ性白血病の再発例は一般に予後不良とされますが、再寛解導入療法を行った後に同種造血幹細胞移植が可能な場合は予後改善が期待できます。
また、再発は治療のどの段階においても発生しますが、発生した時期や前治療歴によって再寛解導入療法の内容を検討する必要があります。
例えば、AdVP療法(アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン併用療法のことです)やHyper CVAD療法(シクロホスファミド+ビンクリスチン+ドキソルビシン+デキサメタゾンの併用療法)、ステロイド薬併用療法などが再発した急性リンパ性白血病に対する再寛解導入療法として治療成績が報告されていますので、これらを中心に検討します。
イマチニブに対して抵抗性を獲得しながら再発することもあるので、一般にフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病におけるイマチニブ継続中の再発例ではイマチニブをダサチニブに変更することが妥当であるとされます。
ダサチニブはイマチニブよりも新しい薬で、イマチニブの325倍、フィラデルフィア染色体への効果があるとされています。
また、転移についてですが、急性リンパ性白血病における転移は急性骨髄性白血病と同様に、臓器浸潤という形で考えられます。病態は同じなので急性骨髄性白血病の項をご覧ください。
慢性骨髄性白血病が再発・転移した場合
慢性骨髄性白血病においては、一度は治療によって、一度は寛解または治癒と判断されたのち、また白血病細胞が出現することを再発、再燃と呼びます。
慢性骨髄性白血病では当初、有効であった分子標的薬が治療効果を示さなくなったり、治療していたのにもかかわらず慢性期から移行期や急性転化期に移行してしまったりした場合に増悪とみなし、治療方針の再検討が行われます。
再発した慢性骨髄性白血病に対する治療としては、チロシンキナーゼ阻害剤を用いた分子標的療法、ドナー幹細胞移植、ドナー白血球輸注療法、生物学的療法(インターフェロン、新しいタイプか大量投与の標的療法とドナー幹細胞移植の臨床試験などです。
これらの治療も効果が得られない場合は、患者さんのQOL(Quality of life)を維持しながら病気と付き合っていくことを持奥表にした治療が行われます。
慢性リンパ性白血病が再発・転移した場合
慢性リンパ性白血病においては、一度は寛解あるいは治癒と判断されたのちに再び癌細胞が出現し、症状が現れるようになり、積極的な治療を行う必要が出てきたときに再発とみなします。
治療を開始していた慢性リンパ性白血病において、再発してしまったり治療抵抗性を示したりした場合には、一般には救援療法を行います。
救援療法とは今までに使用していない抗がん剤を組み合わせて治療を行うことで、慢性リンパ性白血病の場合「CHOP療法」や「Hyper- CVAD療法」、これらにリツキシマブという分子標的薬を追加した治療法などが良く用いられていますが、個人間でどの種類の薬を組み合わせるのかは異なってきます。
CHOP療法というのはB細胞由来の腫瘍(慢性リンパ性白血病は異常なB細胞が異常に増殖してしまう疾患です)に用いられる治療法で、3種類の抗がん剤(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン)に副腎皮質ホルモンであるプレドニゾロンを組み合わせた治療法です。
原則3週間ごとにCHOP療法は行われます。1日目は4剤すべてを使い(プレドニゾロンだけ内服であとは点滴)、2日目~5日目まではプレドニゾロンだけを内服し、6日目~Ⅱ1日目までは休薬します。
これを3週間1サイクルとして、何サイクル行うかは病気のタイプや進行度によって左右されます。
予測される副作用には食欲不振や嘔吐、便秘、手足のしびれや発熱、脱毛など自覚症状があるものと、骨髄抑制や肝機能低下、腎機能低下など自覚症状に乏しいものがあります。
Hyper-CVAD療法ではシクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾンの併用療法です。
脱毛や末梢神経障害、悪心・嘔吐・食欲不振、便秘などの自覚症状のあるものと、骨髄抑制や貧血、血小板減少など血液検査を行うことで分かる副作用があります。
これらは慢性リンパ性白血病の治療が終わったのちの定期的なフォローアップによって再発が認められた場合に行います。
出典
病気がみえる Vol.5 血液 第二版
http://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/odjrh3000000ul0l-att/133.pdf#search=%27%E6%85%A2%E6%80%A7%E9%AA%A8%E9%AB%84%E6%80%A7%E7%99%BD%E8%A1%80%E7%97%85+%E5%86%8D%E7%99%BA%27
白血病の基本情報