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オプジーボをはじめ夢の薬と言われる5つの免疫チェックポイント阻害薬について知っておいて欲しい6つの現実

[公開日] 2017.09.28[最終更新日] 2017.09.28

目次

2017年9月27日現在、世界で発売されている抗PD-1/PD-L1抗体薬の免疫チェックポイント阻害薬といえば、抗PD-1抗体薬のニボルマブ(商品名オプジーボ)、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)、抗PD-L1抗体薬のアテゾリズマブ(商品名テセントリク)、アベルマブ(商品名バベンシオ)、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)の計5剤である。 この5剤の中でオプジーボは、世界に先駆けて日本で2014年9月2日に発売され、その作用機序が既存の標準治療薬にはなく画期的で、かつ効果も優れることから巷では「夢の薬」とまで言われたほどだ。 たしかに、オプジーボをはじめとした抗PD-1/PD-L1抗体薬は夢の薬という名に相応しい効果を臨床で示している。例えば、キイトルーダはPD-L1発現率50%以上のステージIV非小細胞肺がんの一次治療として既存の標準治療薬に上回る治療成績を示したことから、肺がん患者の治療法にパラダイムシフトを起こしたのは事実である。一方、PD-L1抗体デュルバルマブは、ステージ3非小細胞肺がんの併用化学放射線療法後の維持療法として効果を発揮し、ステージ3非小細胞肺がんの治療を20年ぶりに変えると期待される。 しかし、夢の新薬といえど、効果が期待できるがん患者は限られており、がん種、治療ラインによっては抗PD-1/PD-L1抗体薬よりも、既存の標準治療薬が治療成績を上回ることさえもある。 そこで本記事では、抗PD-1/PD-L1抗体薬の治療を今後受ける可能性のある方々に知っておいて欲しい夢の薬の現実について紹介する。 なお、夢の薬の現実とは、5剤のPD-1/PD-L1抗体薬が実施した第3相臨床試験の主要評価項目において未達成項目のものに限定されること、有害事象により安全性面で治験中止したものと定義する。

ステージIV期非小細胞肺がん患者に対する一次治療としてのニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法

ニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法の治療成績は、ステージIV期非小細胞肺がんの一次治療としてプラチナ製剤ベースの化学療法よりも劣る。 この現実を証明した科学的根拠は、未治療のステージIV期の非小細胞肺がん患者を対象に、オプジーボ単剤療法またはプラチナ製剤ベースの化学療法を投与し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を比較検証した第III相試験(CheckMate-026試験、NCT02041533)の結果である。 本試験の結果、無増悪生存期間(PFS)の中央値はオプジーボ群4.2ヵ月に対して化学療法群5.9ヵ月(ハザード比1.15、95%信頼区間:0.91~1.45、p=0.25)であることが判った。 つまり、未治療のステージIV期非小細胞肺がん患者の場合、既存の標準治療であるプラチナ製剤ベースの化学療法を受ける代わりにオプジーボ単剤による治療を受けることは、病勢進行または死亡する確率が15%高くなるということだ。 進行非小細胞肺がん初回治療、キイトルーダ有効性を確認、オプジーボはセレクションが必要 ESMO2016(2016.10.11)

ステージIV期非小細胞肺がん患者に対する一次治療としてのデュルバルマブ(商品名Imfinzi)+トレメリムマブ併用療法

抗PD-1/PD-L1抗体薬とは異なる作用機序を持つ免疫チェックポイント阻害薬の抗CTLA-4抗体薬トレメリムマブ+デュルバルマブ(商品名Imfinzi)併用療法の治療成績は、ステージIV期非小細胞肺がんの一次治療においてプラチナ製剤ベースの化学療法と変わりはない。 この現実を証明した科学的根拠は、未治療のステージIV期の非小細胞肺がん患者を対象に、デュルバルマブ単剤療法、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法療法、またはプラチナ製剤ベースの化学療法を投与し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を比較検証した第III相試験(MYSTIC試験、NCT02453282)の結果である。 本試験の結果、プラチナ製剤ベースの化学療法に対するデュルバルマブ単剤療法、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法ともに、無増悪生存期間(PFS)の優越性を証明できなかった。 つまり、未治療のステージIV期非小細胞肺がん患者の場合、既存の標準治療であるプラチナ製剤ベースの化学療法でも、デュルバルマブ単剤療法でも、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法でも、3つの治療法のどれを受けても病勢進行または死亡する確率は統計学的に差はないということだ。本試験の詳細データは、2017年9月27日現在公表されていない。 なお、本試験は3つのプライマリーエンドポイントが設定されており、本結果だけで、デュルバルマブ単剤療法、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法パフォーマンスを結論付けるのは早いとされることに注意したい。

ステージIV期尿路上皮がん患者に対する二次治療としてのアテゾリズマブ(商品名テセントリク)単剤療法

アテゾリズマブ(商品名テセントリク)単剤療法の治療成績は、ステージIV期尿路上皮がんの二次治療においてプラチナ製剤ベースの化学療法と変わりはない。 この現実を証明した科学的根拠は、プラチナ製剤ベースの化学療法後に増悪したステージIV期の尿路上皮がん患者を対象に二次治療としてテセントリク単剤療法、または化学療法(vinflunine、パクリタキセル、またはドセタキセルのいずれか)を投与し、主要評価項目である全生存期間(OS)を比較検証した第III相試験(IMvigor211試験、NCT02302807)の結果である。 本試験の結果、テセントリク単剤療法の全生存期間(OS)は化学療法に対する優越性を証明できなかった。つまり、プラチナ製剤ベースの化学療法後に増悪したステージIV期の尿路上皮がん患者の場合、既存の標準治療であるvinflunineでも、パクリタキセルでも、ドセタキセルでも、テセントリク単剤療法でも、4つの薬剤どれを受けても死亡する確率は統計学的に変わりがないということだ。 なお、全生存期間の優越性を証明できずとも、海外では本適応で承認されており、現状承認取り消しもなされていないことや、未治療期の転移性尿路上皮がん対象のテセントリクの試験が実施中であることには留意したい。

ステージIII/IV期頭頸部がん患者に対する一次治療としてのペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法

ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法の治療成績は、ステージIII/IV期頭頸部がんの治療において現在の標準治療と変わりはない。 この現実を証明した科学的根拠は、標準治療後の再発または遠隔転移を有する頭頸部がん患者を対象にペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法または現在の標準治療(メトトレキサート、ドセタキセル、またはセツキシマブのいずれか)を投与し、主要評価項目である全生存期間(OS)を比較検証した第III相試験(KEYNOTE-040試験,NCT02252042)の結果である。 本試験の結果、標準治療(メトトレキサート、ドセタキセル、またはセツキシマブのいずれか)に対してペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法の全生存期間(OS)の優越性を証明できなかった。 つまり、標準治療後の再発または遠隔転移を有する頭頸部がん患者の場合、既存の標準治療である化学療法(メトトレキサート、ドセタキセル、またはセツキシマブのいずれか)でも、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法でも、どちらの治療を受けても死亡する確率が統計学的に変わりがないということだ。 なお、この試験には日本が参加していなかったこと、未治療期のステージIII/IV期頭頸部がん対象のキイトルーダの試験が実施中であることには留意したい。 再発又は遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮がん患者に対するキイトルーダ単剤療法の全生存期間(OS)延長が認めらず(2017.07.28)

再発性/難治性の多発性骨髄腫患者を対象としたペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)と既存治療を掛け合わせ

2017年7月6日、FDA(米国食品医薬品局)は、再発性/難治性の多発性骨髄腫患者対象の2つのキイトルーダの第III相試験について中断勧告(Clinical Hold )を下した。 1つの試験は、再発性/難治性の多発性骨髄腫患者で、少なくとも2つの前治療を受けた方を対象にキイトルーダとポマリドミド(商品名ポマリスト)と低用量デキサメタゾンの3剤併用療法をポマリストと低用量デキサメタゾンの2剤併用療法と比較する第3相臨床試験(Keynote-183、NCT02576977)、自己幹細胞移植に適格ではない新たに診断された未治療多発性骨髄腫の患者においてキイトルーダ、レナリドマイド(商品名レブラミド)および低用量デキサメタゾンの3剤併用療法をレブラミドと低用量デキサメタゾン併用療法と比較する第3相臨床試験(Kyenote-185、NCT02579863)。 キイトルーダ群で死亡例が発生し、Keynote-183試験の全生存期間のハザード比1.61と約50%も死亡リスクが増加、リスク&ベネフィットの観点からリスクが上回ったことによる判断となる。 なお、2017年9月7日に、FDA(米国食品医薬品局)は、上記結果を加味し、ニボルマブ(商品名オプジーボ)およびデュルバルマブ(商品名Imfinzi)の似通った臨床試験についても中断勧告(Clinical Hold )を下している。 多発性骨髄腫 免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダの2つの第3相臨床試験が登録中断(2017.06.15)

膠芽腫の初回再発患者を対象のニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法

膠芽腫(GBM;グリオブラストーマ)の初回再発患者にはニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法は、ベバシズマブ単剤療法と比較して全生存期間の改善を達成しなかった。 膠芽腫の初回再発患者を対象にオプジーボ単剤療法またはオプジーボ+イピリブマブ(商品名ヤーボイ)併用療法の有効性と安全性を評価した第3相試験(CheckMate-143、NCT02017717)の、オプジーボ単剤コホートの結果である。 なお、現在、膠芽腫のファーストライン治療に関する2つの臨床試験として、O6-メチルグアニン-DNA メチルトランスフェラーゼ(MGMT)メチル化陰性およびメチル化陽性患者を対象に、テモゾロミド(商品名テモダール)との併用または非併用で評価するCheckMate-498(NCT02617589)試験、オプジーボと放射線療法の併用療法を評価するおよびCheckMate -548(NCT02667587)試験を実施しているが、これらの試験は予定通り進められているとのこと。 膠芽腫(グリオブラストーマ) オプジーボ単剤は効果を示さず(2017.04.06)

夢の薬の現実

以上のように、夢の薬である抗PD-1/PD-L1抗体薬であってもその治療成績は既存の治療薬と変わりがない、もしくは劣ることが科学的根拠の高い5つの臨床試験で証明されているのが現実である。 もちろん、5剤の抗PD-1/PD-L1抗体薬合わせて現在進行もしくは完了している第III相試験の数が150本以上もある中で、たった5つの臨床試験だけが現実的な結果を示したことを考えると、夢の薬と言わないまでも夢を見れる可能性がある薬と言えるだろう。

その他の免疫チェックポイント阻害薬のまとめ記事

がん免疫療法の新薬キイトルーダ(ペムブロリズマブ)とオプジーボ(ニボルマブ)の違い(2017年9月28日更新 ) オプジーボ(ニボルマブ)やキイトルーダ(ペムブロリズマブ)など、5つの免疫チェックポイント阻害薬の違いを6つのがん種別にまとめてみた(2017年8月2日更新) 文:山田 創(肺がん、尿路上皮がん、頭頚部がん) & 可知 健太(多発性骨髄腫、膠芽腫)
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山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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