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再発又は遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮がん患者に対するキイトルーダ単剤療法の全生存期間(OS)延長が認めらず
[公開日] 2017.07.28[最終更新日] 2017.07.28
2017年7月24日、MSD株式会社より頭頸部扁平上皮がんの新しい標準治療薬として期待されていた免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の第Ⅲ相試験であるKEYNOTE-040試験(NCT02252042)の主要評価項目である全生存期間(OS)の結果が公表されたが、その結果は頭頸部扁平上皮がん患者をはじめとした関係者の期待に反するものであった。
KEYNOTE-040試験(NCT02252042)とは、プラチナ製剤を含む前治療歴が1回もしくは2回ある再発又は遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮がん患者に対してペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法を投与する群または治験担当医師が選択した治療(メトトレキサート、ドセタキセル、セツキシマブ[商品名アービタックス]のどれか1つ)を投与する群に分け、主要評価項目である全生存期間(OS)を比較検証した第3相試験である。なお、本試験に日本は参加していない。
本試験は2014年11月より開始され、合計で495例もの頭頸部扁平上皮がん患者を対象に実施された大規模試験であることからもその結果は注目されていた。しかし、主要評価項目である全生存期間(OS)は、治験担当医師が選択した治療法に対するペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法の優越性を証明することができなかったのだ。(ハザード比 [HR]0.82; 95%信頼区間[CI]:0.67-1.01; p = 0.03)
ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)がプラチナ製剤を含む化学療法の実施中または実施後に疾患が進行した再発または遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮がん患者に対する効能で米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認されたのは2016年8月5日。
本承認は第1b相試験であるKEYNOTE-012試験(NCT01848834)の主要評価項目である客観的奏効率(ORR)に基づく条件付きの承認であった。本試験は、胃がん、尿路上皮がん、トリプルネガティブ乳がん、そして頭頸部がんのマルチコーホートを対象に実施され、プラチナ製剤を含む化学療法の実施中または実施後に疾患が進行した再発または遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮がん患者174人に対しペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法(10mg/kgを2週に1回または200mgを3週に1回)が投与された。
その主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は16%(95%信頼区間[CI]:11~22%)であり、また奏効を示した28人の内23人(82%)で6ヶ月以上の持続した奏効が示されていた。この結果より頭頸部扁平上皮がんに対するペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法の有用性が米国食品医薬品局(FDA)に認められたが、本承認は第1b相試験に基づくものであるためにMSD株式会社に対してはペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が標準療法よりも優れることを証明する多施設共同無作為化試験の実施が条件として課せられていた。
その条件の1つであったKEYNOTE-040試験にて、主要評価項目である全生存期間(OS)の標準療法に対するペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法の優越性が証明できなかったことは非常に残念であると筆者は考える。
しかし、承認条件として課された臨床試験にはKEYNOTE-040試験以外にも第3相試験であるKEYNOTE-048試験(NCT02358031)が現在進行中である。本試験では、再発または遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮がん患者に対する一次治療としてペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法の標準治療に対する無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の優越性などの検証を目的としている。
免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が頭頸部扁平上皮がんの新しい標準治療薬として確立するかどうかの判断は、KEYNOTE-048試験の結果が出るのを待つことが賢明であろう。
記事:山田 創
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