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多発性骨髄腫 免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダの2つの第3相臨床試験が登録中断

[公開日] 2017.06.15[最終更新日] 2017.06.15

目次

6月12日、米Merck社は、多発性骨髄腫対象のペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の2つの第3相臨床試験を中断したと発表した。 本中断は、独立データモニタリング委員会による決定であり、キイトルーダ群で死亡が認められたためである。両試験は2015年10月に開始され、日本でも実施されている。 1つの試験は、再発性/難治性の多発性骨髄腫患者で、少なくとも2つの前治療を受けた方を対象にキイトルーダとポマリドミド(商品名ポマリスト)と低用量デキサメタゾンの3剤併用療法をポマリストと低用量デキサメタゾンの2剤併用療法と比較する第3相臨床試験(Keynote-183、NCT02576977)である。参加した患者は、28日間を1サイクルとして、ポマリストを1日目~21日に毎日4mg服薬、デキサメタゾンを1、8、15および22日目に40mg服薬(1週間毎服薬)、キイトルーダ群の患者はこれらに加えキイトルーダを3週間毎200mg静脈点滴投与された。治療は、進行または許容できない毒性発現まで続けられた。 もう1つの試験は、自己幹細胞移植に適格ではない新たに診断された未治療多発性骨髄腫の患者においてキイトルーダ、レナリドマイド(商品名レブラミド)および低用量デキサメタゾンの3剤併用療法をレブラミドと低用量デキサメタゾン併用療法と比較する第3相臨床試験(Kyenote-185、NCT02579863)。参加した患者は、28日サイクルを1サイクルとして、レブラミドを1日目~21日に毎日25mg服薬、デキサメタゾンを1、8、15および22日目に40mg服薬(1週間毎服薬)、キイトルーダ群の患者はこれらに加えキイトルーダを3週間毎200mg静脈点滴投与された。治療は、進行または許容できない毒性発現まで続けられた。 ポマリストもレブラミドも免疫調整薬という分類の薬剤である。 独立データモニタリング委員会によると、キイトルーダ群の死亡を「よりよく理解する」ために、多くのデータを収集しながら、新たな登録を中止することを推奨したとのこと。現在登録されている患者は治療を継続する。 なお、この決定は他のキイトルーダの臨床試験には影響しない。 Merck Provides Update on Multiple Myeloma Studies KEYNOTE-183 and 185 of KEYTRUDA® (pembrolizumab) in Combination with Other Therapies (Merck News Release June 12, 2017)

キイトルーダ/ポマリスト/デキサメタゾン3剤併用療法の可能性 ASH2016

2016年12月3日から6日に開催された第58回米国血液学会議(ASH2016)において、メリーランド大学のAshraf Z. Badros氏により、キイトルーダ/ポマリドマイド/デキサメタゾン3剤併用療法が再発性/難治性の多発性骨髄腫患者において有効である可能性が示唆されている。 メリーランド大学で実施された単施設臨床試験における42名の奏効率は(ORR)は65%であり、患者の29%が非常に良好な部分寛解(VGPR)以上であった。厳密完全寛解(sCR)率は7%であり、完全寛解(CR)率は2%であった。この結果は、二次療法不応患者や細胞遺伝学上高リスクを有する患者においても一貫していた。 2016年10月15日時点で解析されたデータは、フォローアップ期間の中央値は9.6ヶ月であり、奏効持続期間の中央値は16.3ヵ月(95%CI、9.8-19.1)であり、無増悪生存期間(PFS)中央値は17.4ヵ月(95%CI、11.7-18.8)であった。解析時点で、全生存期間中央値はまだ達成されていなかった(95%CI、18.8-未到達)。 二次療法不応患者(32名)の奏効率は68%であり、非常に良好な部分寛解(VGPR)率は24%以上であった。細胞遺伝学的高リスク患者(27名)の患者では、奏効率は56%であり、非常に良好な部分寛解(VGPR)率は15%であった。 PD-L1発現の評価可能な29名の患者について、50%以上発現(PD-L1陽性)患者は13名だった。PD-L1陽性患者において、奏効率が77%であり、非常に良好な部分寛解(VGPR)率は54%(P = 0.05;PD-L1陰性患者と比べてき統計学的に有意)であった。PD-L1陰性患者(10名)の奏効率は60%、非常に良好な部分寛解(VGPR)率は20%であった。PD-L1陰性患者の無増悪生存期間中央値 は17.4ヶ月(95%CI、10.6-18.4)である一方、PD-L1陽性患者では、PFS中央値にまだ達していなかった。 安全性については、好中球減少症(40%)、高血糖症(25%)、貧血(21%)、上気道感染症(21%)、リンパ球減少症(15%)、疲労(15%)、発疹(10%)、血小板減少(8%)が認められた。免疫関連有害事象としては、間質性肺炎(13%)、甲状腺機能低下症(10%)、経膣炎(6%)が認められた。 全体的に、肺炎(3名)、息切れ(1名)および疲労(1名)を含む有害事象により5人の患者が治療を中止した(全体の11%が中止した)。また、半数の患者は、キイトルーダの投与量を減らす必要があった。 Pembrolizumab in Combination with Pomalidomide and Dexamethasone for Relapsed/Refractory Multiple Myeloma (RRMM) (ASH2016 Abstract 490) Merck Pauses Enrollment in 2 Pembrolizumab Myeloma Trials(ONCLIVE) 記事:可知 健太 この記事に利益相反はありません。
ニュース 多発性骨髄腫 免疫チェックポイント阻害薬

3Hメディソリューション株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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