オプジーボ、キイトルーダおよびテセントリクなど、5つの免疫チェックポイント阻害薬の違いを6つのがん種別にまとめてみた2018年10月2日更新


  • [公開日]2017.08.02
  • [最終更新日]2020.03.18

免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)とは

免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)とは、がん細胞を攻撃するT細胞の働きにブレーキをかけている蛋白質であるPD-1とPD-L1の結合を阻止することで、PD-L1により抑えられていたT細胞の働きを活性化することで抗腫瘍効果を発揮させる薬である。
※免疫チェックポイン阻害薬は、抗CTLA-4抗体等が存在するが、本稿では抗PD-1抗体薬、抗PD-L1抗体薬について述べる。

がん細胞に対するT細胞の攻撃が抑制されるその作用機序はがん細胞の表面に発現するPD-L1がT細胞の表面に発現するPD-1受容体に結合するからであり、免疫チェックポイント阻害薬はこの結合を阻止することでT細胞の攻撃力を復活させる。

PD-L1がPD-1に結合することを阻止する免疫チェックポイント阻害薬は2種類ある。1つはPD-1を標的とし、PD-L1の代わりにPD-1と結合する抗PD-1抗体薬。もう1つはPD-L1を標的とし、PD-1の代わりにPD-L1と結合する抗PD-L1抗体薬である。

これら抗PD-1抗体薬、抗PD-L1抗体薬をまとめて免疫チェックポイント阻害薬と呼ぶ。世界で初めて発売された免疫チェックポイント阻害薬は、日本の製薬会社である小野薬品工業が2014年発売したニボルマブ(商品名オプジーボ)であるが、以降他の免疫チェックポイント阻害薬が次々と開発され、現在までに5つの免疫チェックポイント阻害薬が世の中に存在している。

開発が進んでいる免疫チェックポイント阻害薬は5剤。抗PD-1抗体薬としてはニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)の2剤、抗PD-L1抗体薬としてはアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)、アベルマブ(商品名バベンチオ;以下バベンチオ)、デュルバルマブ(商品名イミフィンジ;以下イミフィンジ)の3剤である。この他に、ノバルティスファーマ株式会社が開発する抗PD-1抗体 PDR001などがある。

抗PD-1抗体薬であるオプジーボとキイトルーダは抗体の種類やPD-1への親和性(結合力と同義)がことなる。オプジーボは改変IgG4抗体、キイトルーダはヒト化IgG4抗体である。親和性に関してはオプジーボは2.6nM/K2、ペムブロリズマブ29pM/K2と、キイトルーダの方が親和性が高い。(ただし、親和性高い=効果があるというわけではないことに注意)

抗PD-L1抗体薬である3剤も抗体の種類や親和性が異なるが、この3剤のうちバベンチオは強いADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)を有すること有することが特徴である。

本記事では有効性が確認された各免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験の結果に基づき、がんの種類、がんの進行具合(ステージI/II/III/IV)、治療ライン(1次/2次/3次以降)、併用薬の有無、患者背景などの要素に分けてこの5剤の違いを紹介している。

本来ならば、免疫チェックポイント阻害薬同士で直接比較した臨床試験が存在すればその違いは簡単に分かるのだが、残念ながらそのような臨床試験は現在のところ存在しない。

そのため、免疫チェックポイント阻害薬の違いを本当の意味では理解できないが、少なくとも試験デザインが酷似した臨床試験の結果を比較することである程度の違いが見えてくるであろう。

なお、有効性が確認されているとは、2018年10月2日現在で免疫チェックポイント阻害薬を開発した企業が主導する第III相試験において主要評価項目の結果が公表されていることと定義する。

マンガで学ぶ免疫チェックポイント阻害薬

キイトルーダ、オプジーボ等、免疫チェックポイント阻害薬と免疫療法について解説したマンガです。

免疫療法について解説したマンガ「免疫のシゴト」公開

監修・アドバイス:慶応義塾大学医学部先端医科学研究所 河上 裕 先生、北里大学医学部新世紀医療開発センター 佐々木 治一郎 先生

肺がんと免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)

肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の第III相臨床試験は、他のがん種と比べて多数存在し、現在までに進行中の臨床試験も含めてその数は40を超える。

なかでも肺がんの約80%~85%を占めるステージⅣ非小細胞肺がんに対して有効性が検証されている臨床試験は、40ある内の半数以上を占めている(上図)。

ステージIV非小細胞肺がんに対する現在の治療方針としては、扁平上皮がんなのか?非扁平上皮がんなのか?の組織型で大きく分かれ、非扁平上皮がんであればEGFR遺伝子変異陽性か?ALK遺伝子変異陽性か?などの遺伝子変異の有無にもとづいて治療が決定されている。

免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験においても組織型や遺伝子変異の有無が治療決定の時に考慮されたが、既存の治療方針を立てる要素に加えてPD-L1発現率が陽性なのか?陰性なのか?さらに言うとPD-L1発現量は50%を超えるか?についても考慮された臨床試験が多数存在する。

一方、非小細胞肺がんに比べて小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の第III相臨床試験は少ない。小細胞肺がんに対する現在の治療方針としては、がんの進行具合が限局型(LD)なのか?進展型(ED)なのか?のがんの進行具合により治療が決定されているが、免疫チェックポイント阻害薬の有効性が検証されている第III臨床試験は進展型(ED)のみである。

2018年8月17日に、「プラチナ製剤による化学療法および1種類以上の前治療後に病勢進行した進展型(転移性)小細胞肺がん患者」について、オプジーボの使用が承認された。(日本では未承認)

この承認は、プラチナ製剤による化学療法後に病勢進行した患者を対象にオプジーボを評価した、進行中の第Ⅰ/Ⅱ相CheckMate-032試験(NCT01928394)のSCLCコホートのデータに基づいている。

プラチナ製剤による化学療法および1種類以上の前治療後に、オプジーボの投与を受けた患者109例のうち、PD-L1発現状態にかかわらず、盲検化された独立中央評価委員会の評価において、12%(109例中13例)で、奏効が認められ、患者12例(11%)が部分奏効、1例(0.9%)が完全奏効だった。奏効が認められた患者において、DOR中央値は17.9カ月であった。

また、2018年10月12日、治療歴のある再発小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるオプジーボ単剤療法の有効性を検証した第III相のCheckMate -331試験(NCT02481830)の主要評価項目の結果が公表された。

CheckMate -331試験とは、プラチナ製剤ベースの化学療法治療歴のある再発小細胞肺がん患者に対してオプジーボ単剤療法を投与する群、または現在の標準治療であるアムルビシンまたはトポテカン単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間OS)、副次評価項目として無増悪生存期間PFS)を検証した第III相の試験である。

本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)はオプジーボ単剤療法、アムルビシンまたはトポテカン単剤療法の両群間で統計学有意な差を示すことができなかった。

その他、抗PD-L1抗体薬であるテセントリクが進展型(ED)小細胞肺がん患者に対する有効性を検証した第III相のIMpower133試験(NCT02763579)の結果が出ている。

IMpower133試験とは、化学療法治療歴のない進展型小細胞肺がん患者に対する一次治療としてテセントリク+カルボプラチン+エトポシド併用療法を投与する群、またはカルボプラチン+エトポシド併用療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同二重盲検化下の第III相試験である。

本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)ともにカルボプラチン+エトポシド併用群よりもテセントリク+カルボプラチン+エトポシド併用群で統計学的有意に改善し、両主要評価項目を達成することが示された。

上表では、40以上ある各免疫チェックポイント阻害薬の第III相臨床試験の中から、現時点で結果が公表されている臨床試験を抽出している。有効性が確認されている臨床試験の中でその試験デザインが酷似しているものは、ステージIV非小細胞肺がんの1次治療2次治療としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の2種類ある。

ステージIV非小細胞肺がんの2次治療としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の有効性を検証した臨床試験は、オプジーボのCheckMate-017試験(NCT01642004)とCheckMate-057試験(NCT01673867)、キイトルーダのKEYNOTE-010試験(NCT01905657)、テセントリクのOAK試験(NCT02008227)がある。

これら臨床試験はステージIV非小細胞肺がんの2次治療として免疫チェックポイント阻害薬単剤療法と標準化学療法を比較するなどその試験デザインは酷似している。

そのため、これら臨床試験の結果を比較することで免疫チェックポイント阻害薬の違いが見えてくるのだが、臨床試験の評価項目として設定している無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)のいずれか、又は両方ともが4つの臨床試験すべてで免疫チェックポイント阻害薬側に優位な結果が出ているため比較のしようがない。

なお、2018年2月15日、抗PD-L1抗体薬であるバベンチオはプラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行した切除不能転移性または再発非小細胞肺がん患者に対する有効性を検証した第III相のJAVELIN Lung 200試験(NCT02395172)の結果を公表した。

JAVELIN Lung 200試験とは、 プラチナ製剤2剤併用化学療法後に病勢進行したPD-L1発現陽性切除不能転移性または再発非小細胞肺がん患者に対してバベンチオ単剤療法を投与する群、またはドセタキセル単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同オープンラベルの第III相試験である。

本結果の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)においてドセタキセル単剤療法に対するバベンチオ単剤療法の優越性を示すことができなかった。つまり、免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の中で唯一、バベンチオは治療歴のある非小細胞肺がん患者に対する単剤療法でネガティブな結果を示した。

それでは、一次療法の臨床試験に目を向けてみると、オプジーボのCheckMate-026試験(NCT02041533)、キイトルーダのKEYNOTE-024試験(NCT02142738)がある。

どちらの臨床試験もステージIV非小細胞肺がんの1次治療として免疫チェックポイント阻害薬単剤療法と標準化学療法を比較する試験デザインである。しかし、これら臨床試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の結果は命運が分かれた。

オプジーボ群が標準化学療法群によりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長できなかったのに対して、キイトルーダ群は標準化学療法群よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長した。

同じ作用機序を持つ抗PD-1抗体薬のオプジーボとキイトルーダの間でこのように違った結果が出た理由の1つとして、キイトルーダの臨床試験に参加した患者のPD-L1発現率が高かったためであるとも考えられている。

以上の臨床試験の結果より、少なくともステージIV非小細胞肺がんの一次治療においては免疫チェックポイント阻害薬間に違いが確認できる。さらに、2018年4月9日、抗PD-1抗体薬であるキイトルーダはPD-L1発現率1%以上の局所進行性又は転移性非小細胞肺がん患者に対する一次治療としてのキイトルーダ単剤療法の有効性を検証したKEYNOTE-042試験(NCT02220894)の結果を公表した。

KEYNOTE-042試験とは、少なくともPD-L1発現率1%以上のEGFR遺伝子変異陰性ALK融合遺伝子変異陰性局所進行性又は転移性非小細胞肺がん患者に対する一次治療としてキイトルーダ単剤療法を投与する群、または治験医師判断による下記に示したプラチナ系抗がん剤2剤併用療法(カルボプラチン+パクリタキセル、カルボプラチン+ペメトレキセド)を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてPD-L1発現率1%以上、PD-L1発現率20%以上、PD-L1発現率50%以上それぞれの全生存期間(OS)、を比較検証した日本を含む国際多施設共同非盲検の第III相試験である。

本結果の結果、主要評価項目であるPD-L1発現率1%以上の患者における全生存期間(OS)は、プラチナ系抗がん剤2剤併用療法に比べてキイトルーダ単剤療法で統計学有意に延長することを示した。また、PD-L1発現率20%以上、PD-L1発現率50%以上それぞれの患者群においても同様の結果が確認されている。

本結果の結果は、PD-L1発現率5%以上の局所進行性又は転移性非小細胞肺がん患者に対する一次治療としてのニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法が、全生存期間(OS)の優越性を証明できなかっただけに非常に臨床的意義の高い。

また、ステージIV非小細胞肺がん患者に対する1次治療としての免疫チェックポイント阻害薬併用療法の有効性を示した第III相試験は、抗PD-1抗体薬である商品名キイトルーダで1本、抗PD-L1抗体薬であるテセントリクで3試験ある。

キイトルーダでは、転移性非小細胞肺扁平上皮がん患者に対する一次治療としてのキイトルーダ+カルボプラチン+パクリタキセルまたはナブパクリタキセル併用療法の有効性を第III相のKEYNOTE-407試験(NCT02775435)で検証している。

KEYNOTE-407試験とは、未治療の転移性非小細胞肺扁平上皮がん患者に対して一次治療としてキイトルーダ+カルボプラチン+パクリタキセルまたはナブパクリタキセル併用療法を投与する群、またはプラセボ+カルボプラチン+パクリタキセルもしくはアブラキサン併用療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を比較検証した二重盲検下の第III相試験である。

本結果の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)ともにキイトルーダ群で統計学的有意に改善することが示されている。

ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)と同じ併用薬でアテゾリズマブ(商品名テセントリク)の有効性を検証した第III相試験としては、化学療法治療歴のないステージIV非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対するアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+カルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法の有効性を示したIMpower130試験(NCT02367781)、未治療の進行性非小細胞肺がん患者に対するアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+カルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法の有効性を示したIMpower131試験(NCT02367794)がある。

両試験ともに対照群としてカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法を設定しており、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を比較検証している。

両試験の結果、カルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法に比べ、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)+カルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法で無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長した。また、IMpower130試験においては全生存期間(OS)もアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+カルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法群で統計学的有意に改善した。

以上のペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)のKEYNOTE-407試験、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)のIMpower130試験、IMpower131試験の結果より、ステージIV非小細胞肺がん患者に対する1次治療としての免疫チェックポイント阻害薬+カルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法は、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)ともに同様の有効性を示した。

一方、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)はペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン併用療法の有効性を比較検証した第III相のIMpower132試験(NCT02657434)の結果も既に出ている。

IMpower132試験とは、進行性非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対する一次治療としてアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+ペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン併用療法を投与する群、またはペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン併用療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を比較検証した非盲検下の第III相試験である。

本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン併用療法群に比べてアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+ペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン併用療法群で統計学的有意に改善した。なお、もう一つの主要評価項目である全生存期間(OS)はイベント数未達のため結果が出ていない。

以上の第III相試験の結果より、ステージIV非小細胞肺がん患者に対する1次治療としての免疫チェックポイント阻害薬併用療法において、複数の併用レジメンとのエビデンスを有する免疫チェックポイント阻害薬は現時点でアテゾリズマブ(商品名テセントリク)である。

上記以外に、デュルバルマブ(商品名イミフィンジ)がステージIII非小細胞肺がんの術後放射線化学療法後維持療法とし、てその有効性をPACIFIC試験(NCT02125461)で唯一証明した免疫チェックポイント阻害薬であることにも注目したい。

胃がんと免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)

胃がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検証する第Ⅲ相臨床試験の本数は、肺がんに比べて4分の1程度である。また、現時点で第Ⅲ相臨床試験の結果が公表されている免疫チェックポイント阻害薬はニボルマブ(商品名オプジーボ)のみであり、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)、アベルマブ(商品名バベンチオ)以外の免疫チェックポイント阻害薬にいたっては第Ⅲ相まで臨床試験が進行していない。

そのため、胃がんに対する免疫チェックポイント阻害薬間の違いは現時点でなんとも言えない。しかし、ただ1つ言えることは、ニボルマブ(商品名オプジーボ)がステージⅣ胃がんの標準治療後の標準治療としてその有効性が認められているということである。


この有効性を証明した臨床試験はONO-4538-12試験(NCT02267343)である。この臨床試験は、ステージⅣ胃がんの標準治療後の治療として免疫チェックポイント阻害薬単剤療法またはプラセボ療法を投与し、主要評価項目である全生存期間(OS)を比較検証したものだ。

その結果は、プラセボ療法群が全生存期間(OS)中央値4.14ヶ月に対して、ニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法群が5.32カ月(p<0.0001)と有意に延長した。

対照群が標準治療でなくプラセボ療法であるため賛否両論ある臨床試験の結果ではあるが、標準治療後の標準治療を確立したことは、治療選択肢の限られたステージⅣ胃がんの治療成績を向上させることになるであろう。

乳がんと免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)


乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検証する第Ⅲ相臨床試験の本数は、胃がんよりもさらに少なくなる。現時点で第Ⅲ相臨床試験の結果が公表されている免疫チェックポイント阻害薬は抗PD-L1抗体薬であるテセントリクのみである。

ただし、胃がんに対する免疫チェックポイント阻害薬よりも、乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬に対する期待値は高いかもしれない。なぜなら、免疫チェックポイント阻害薬の有効性が検証されている乳がんは、乳がんの中で最も予後が悪いとされるトリプルネガティブ乳がんであるからだ。

トリプルネガティブ乳がんとは、乳がんの治療効果の予測因子とされるエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、HER2の因子すべてががん細胞に発現していない状態(ネガティブ)である。つまり、他の乳がんでは確認できている治療効果予測因子がトリプルネガティブ乳癌には存在しないため有効とされる治療選択肢が限られている。

治療選択肢が限られているトリプルネガティブ乳癌の治療において、既存の治療効果予測因子とは関係ない因子で有効性の可能性がある免疫チェックポイント阻害薬への期待は大きい。それは、現在進行しているトリプルネガティブ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の第Ⅲ相臨床試験はステージⅣを中心に、ほとんどの臨床試験がプラセボでなく現在の標準治療薬との直接比較試験であるためである。

2018年7月2日、テセントリクは未治療の転移性局所進行性切除不能トリプルネガティブ乳がん患者に対するテセントリク+ナブパクリタキセル併用療法が、プラセボ++ナブパクリタキセル併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的に延長することを第III相のIMpassion130試験(NCT02425891)にて証明した。

IMpassion130試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を、ITT群、PD-L1陽性群の患者背景の違いに分けて無増悪生存期間(PFS)を検証したが、病勢進行または死亡(PFS)のリスクを患者背景に関係なく減少する結果を示した。また、PD-L1陽性群における全生存期間(OS)において、テセントリク+ナブパクリタキセル併用群で死亡(OS)のリスクを減少する傾向が示唆されており、次回の解析結果が期待されている。

大腸がんと免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)


大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検証する第Ⅲ相臨床試験の本数は、乳がんよりもさらに少なくなる。現時点で第Ⅲ相臨床試験の結果が公表されている免疫チェックポイント阻害薬は抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク)のみである。しかし、抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が第II相試験の結果に基づいて大腸がんの効能で米国にて承認済みである。

正確には、製造販売承認を取得した適応は、大腸がんでなく”マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)の固形がん”である。

第Ⅲ臨床試験の結果が出る前に第Ⅱ相以下の臨床試験に基いてペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が承認された背景としては、薬剤に対して高い臨床的有用性を推測させる相当の理由が認めらからである。

マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)とは、DNA複製の時に生じる塩基配列のエラーを修復する機能が低下することでマイクロサテライト反復配列が異なる反復回数を示す現象である。また、その原因はミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)が原因で発症すると考えられている。

ステージⅣ大腸がん患者の約3〜4%はマイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)とされ、そのため当初は大腸がんの効果予測因子となるバイオマーカーとして考えられ、免疫チェックポイント阻害薬の開発が進められていた。

例えば、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の第Ⅱ相臨床試験(NCT01876511)では、ミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)の有無で大腸がん患者に対する免疫チェックポイント阻害の臨床的利益を比較検証したところ、ミスマッチ修復機構の欠損を有する患者の方が無増悪生存率(PFS)をはじめとした治療成績が良好であった。

また、大腸がん以外にもミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)を有する子宮内膜膜がん、胃腸系のがん患者なども上記第Ⅱ相臨床試験(NCT01876511)には含まれており、その結果は大腸がんと同様であった。

以上の臨床試験の結果などを踏まえ、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)は大腸がんという原発腫瘍の部位ではなく”マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)の固形がん”というバイオマーカーに基づいた承認がされた初の免疫チェックポイント阻害薬となった。ちなみに、免疫チェックポイント阻害薬史上だけでなく、がんの新薬として史上初である。

一方、抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク)は複数治療歴のある局所進行性または転移性大腸がん患者に対するアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+MEK阻害薬であるコビメチニブ併用療法の有効性を比較検証した第III相のIMblaze370試験(NCT02788279)の結果が既に出ている。

ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が有効性を証明した第II相試験とは違い、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)は第III相試験であるだけに、その結果は期待されていたが残念ながらネガティブであった。

IMblaze370試験とは、少なくとも2レジメン以上の治療歴のある局所進行性または転移性大腸がん患者に対してアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+MEK阻害薬であるコビメチニブ併用療法を投与する群、またはアテゾリズマブ(商品名テセントリク)単剤療法を投与する群、またはスチバーガ単剤療法を投与する群に2対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した国際多施設共同非盲検下の第III相試験である。

本結果の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+コビメチニブ併用群8.9ヶ月に対してスチバーガ単剤群8.5ヶ月、両群間における死亡のリスク(OS)に統計学的有意な差は確認されなかった(ハザード比:1.00,95%信頼区間:0.73-1.38,P=0.9871)。

また、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)単剤群の全生存期間(OS)中央値は7.1ヶ月、スチバーガ単剤群に比べて死亡のリスク(OS)を19%増加した(ハザード比:1.19,95%信頼区間:0.83-1.71,P=0.3360)。

以上の結果より、複数治療歴のある局所進行性または転移性大腸がん患者に対するアテゾリズマブ(商品名テセントリク)併用療法、単剤療法は、スチバーガ単剤療法に比べて全生存期間(OS)を改善しないことが示された。

しかし、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)はステージⅢ大腸がん患者に対する術前化学療法としてのFOLFOX併用療法、ステージⅣ大腸がん患者に対する一次治療としてのFOLFOX+ベバシズマブ(商品名アバスチン)併用療法の有効性を検証する2本の第III相試験が進行中である。この結果を待って、大腸がん患者に対するアテゾリズマブ(商品名テセントリク)の有効性を判断したい。

尿路上皮がんと免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)


尿路上皮がん対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検証する第Ⅲ相臨床試験の本数は大腸がんと同様に多くはない。しかし、5剤の免疫チェックポイント阻害薬すべてが第II相以下の臨床試験の結果に基づいて尿路上皮がんの適応で米国では製造販売承認がされている。

これは、大腸がんのように免疫チェックポイント阻害薬の標的とされるバイオマーカーが発見されたためではなく、局所進行性又は再発尿路上皮がんに対して有効性を示した治療選択肢がこれまでは限られていたためである。

尿路上皮がんのキードラッグはシスプラチン(商品名ブリプラチン/ランダ)であり、このプラチナ系抗がん剤と他の抗がん剤を組み合わせた治療レジメンが、現在の標準治療である。しかし、この治療に効果を示さなかった場合、又はこの治療に適応がなかった場合、その患者さんに残された治療選択肢はほとんどないに等しかった。

そのため、免疫チェックポイント阻害薬5剤が”プラチナ製剤を含む化学療法による治療中または治療後に病勢進行した、またはプラチナ製剤を含む化学療法による術前または術後補助療法から12カ月以内に病勢進行した、局所進行または転移性尿路上皮がん(膀胱がん等)”の適応で製造販売承認を米国で得たことは、治療選択肢の幅を広げることになるであろう。では、尿路上皮がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の違いはあるのだろうか?

5剤ともすべて尿路上皮がんに対する製造販売承認を得ているため違いがないと考えるかもしれないが、有効性の結果が出ている第III相臨床試験の中で試験デザインが酷似している臨床試験を比較すると、1つだけ免疫チェックポイント阻害薬間の違いが見つかる。

その違いとは、ステージ4尿路上皮がん患者に対する2次治療としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の臨床試験の結果である。上記表のペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)のKEYNOTE-045試験(NCT02256436)、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)のIMvigor211試験(NCT02302807)がそれに該当するが、2つの臨床試験の主要評価項目である全生存期間(OS)の結果が異なった。

ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤療法が対照群の標準化学療法(パクリタキセル/ドセタキセル/ビンフルニン)に対して有意に全生存期間(OS)を延長させたのに対して、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)単剤療法は同じ標準化学療法標準化学療法(パクリタキセル/ドセタキセル/ビンフルニン)に対して全生存期間(OS)を有意に改善しなかった。

もちろん、試験デザインが酷似しているとはいえペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の臨床試験と、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)の臨床試験の患者背景は異なるし、免疫チェックポイント阻害薬同士を直接比較した臨床試験の結果ではないので決定的な違いと言い切ることはできない。

しかし、尿路上皮がんにおける免疫チェックポイント阻害薬5剤すべてが適応を取得している現状を考えると、ステージ4尿路上皮がんに対する2次治療としての免疫チェックポイント阻害剤単剤療法はペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)をはじめアテゾリズマブ(商品名テセントリク)以外の免疫チェックポイント阻害薬の方が有効である可能性は十分にあるだろう。

腎細胞がんと免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)とは


腎細胞がん対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検証する第Ⅲ相臨床試験の本数は尿路上皮がんよりも多くて、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)以外の免疫チェックポイント阻害薬4剤で9つの臨床試験が実施されている。

その内の5つの臨床試験では、ステージⅣ腎細胞がんの一次治療として現在の薬物療法の標準治療薬であるスニチニブ(商品名スーテント)単剤療法に対する免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の有効性を検証する試験デザインとなっている。この試験デザイン内容からも、免疫チェックポイント阻害薬が腎細胞がんの新しい標準治療薬として確立されることが期待されていると容易に想像できる。

また、ステージⅣ腎細胞がんに対する一次治療としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の有効性を検証する臨床試験に次いで2番目に本数が多い臨床試験は、術後化学療法としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法である。

腎細胞がんにおける術後化学療法の有用性を証明した科学的根拠は現在のところ存在しないが、腎細胞がんでは遠隔転移を有する場合でも手術可能であれば腎摘出手術が実施することもある。そのため、ステージⅣのように癌が進行した状態であっても手術療法が選択される可能性が他の癌種に比べて高いので、術後化学療法としての免疫チェックポイント阻害薬の有用性が認められる臨床的意義は非常に高いであろう。

以上のように腎細胞がんにおいて免疫チェックポイント阻害薬が期待されている主な治療ラインは、ステージⅣ腎細胞がんに対する一次治療としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法、併用療法、術後化学療法としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法である。2018年9月24日現在、術前化学療法としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法、一次治療としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の有効性が確認された第Ⅲ相臨床試験は現在のところ存在しないが、一次治療としての免疫チェックポイント阻害薬併用療法の有効性を証明した第Ⅲ相臨床試験は2本ある。

1本目の臨床試験は、未治療の進行性腎細胞がん患者に対する現在の標準治療であるスニチニブ(商品名スーテント;以下スーテント)単剤療法に対するオプジーボ+ヤーボイ併用療法の有効性を比較検証した第III相のCheckMate-214試験(NCT02231749)である。

本試験では、主要評価項目として腎細胞がんのリスク分類であるIMDC分類による中リスク(Intermediate)、高リスク(Poor)患者群における全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を設定しており、その結果は下記の通りである。

主要評価項目である12ヶ月全生存率(OS)はオプジーボ+ヤーボイ併用群80%(95%信頼区間:76%-84%)に対してスーテント単剤群72%(95%信頼区間:67%-76%)、オプジーボ+ヤーボイ併用群で全生存期間(OS)をい統計学的有意に改善することを示した。

もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はオプジーボ+ヤーボイ併用群11.6ヶ月(95%信頼区間:8.7ヶ月-15.5ヶ月)に対してスーテント単剤群8.4ヶ月(95%信頼区間:7.0ヶ月-10.8ヶ月)、オプジーボ+ヤーボイ併用群で病勢進行又は死亡のリスクが18%減少(ハザードリスク比:0.82,P=0.03)するも両群間に統計学的有意な差は確認されなかった。

2本目の臨床試験は、未治療の転移性腎細胞がん患者に対するテセントリク+ベハジズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法の有効性を検証した第III相のIMmotion151試験(NCT02420821)である。

本試験では、主要評価項目としてPD-L1発現率1%以上のPD-L1陽性患者における主治医評価による無増悪生存期間(PFS)、全ての患者群における全生存期間(OS)を設定しており、その結果は下記の通りである。

主要評価項目であるPD-L1陽性患者における主治医評価による無増悪生存期間(PFS)中央値はテセントリク+アバスチン併用療法群11.2ヶ月、スーテント単剤療法群7.7ヶ月、テセントリク+アバスチン併用療法群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが26%統計学的有意に減少した。また、ITT集団における無増悪生存期間(PFS)においてもテセントリク+アバスチン併用療法群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが17%減少した。

もう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)中央値においては死亡イベント数が未達のため、スーテント単剤療法群に比べたテセントリク+アバスチン併用療法群の優越性は証明されていない。

以上の2本の臨床試験の結果より、ステージⅣ腎細胞がんに対する一次治療としての免疫チェックポイント阻害薬併用療法としてオプジーボ、テセントリクの2剤において異なる結果が出た。

まず、オプジーボが中リスク(Intermediate)、高リスク(Poor)という限られた患者群において全生存期間(OS)の優越性を示した点である。そして、無増悪生存期間(PFS)の優越性をテセントリクが示したのに対してオプジーボが示さなかった点である。

両試験は対照群をスーテント単剤療法に設定している点では共通するが、併用する薬剤がオプジーボが抗CTLA-4抗体薬であるヤーボイであるのに対してテセントリクは抗VEGF抗体薬であるアバスチンである。そのため、異なる結果が出た理由が免疫チェックポイント阻害薬によるものなのか?併用薬剤によるものなのか?は明らかではないが、ステージⅣ腎細胞がんに対する一次治療としての免疫チェックポイント阻害薬併用療法は患者背景の違いにより異なる結果が出た。

では、上記以外の治療ラインで免疫チェックポイント阻害薬の有用性が認められている第Ⅲ相臨床試験の結果はあるのだろうか。上記表のニボルマブ(商品名オプジーボ)のCheckMate025臨床試験がそれに該当する。

本臨床試験(CheckMate025:NCT01668784)は、ステージⅣ腎細胞がんの二次治療以降の治療としてニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法、又はエベロリムス(商品名アフィニトール)単剤療法を投与し、全生存期間(OS)を主要評価項目として比較検証した第Ⅲ相臨床試験である。

結果は、ニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法群の全生存期間(OS)中央値が25.0ヵ月(95%信頼区間:21.8ヶ月~推定不能)であるのに対して、エベロリムス(商品名アフィニトール)単剤療法群が19.6ヵ月(95%信頼区間:17.6~23.1ヶ月)と、ニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法群で有意に全生存期間(OS)の改善(P=0.002)が確認された、

以上の臨床試験の結果から、ニボルマブ(商品名オプジーボ)は国内で唯一”根治切除不能又は転移性の腎細胞癌”の適応が認められた免疫チェックポイント阻害薬となっている。他の免疫チェックポイント阻害薬がステージⅣ腎細胞がんの二次治療以降での第Ⅲ相臨床試験を進行していない状況からも、腎細胞がんにおいてはニボルマブ(商品名オプジーボ)の開発が一歩先に進んでいる。

免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)の違いとは

以上のように、同じ作用機序を持つ免疫チェックポイント阻害薬でも、がんの種類を中心に、がんの進行具合(ステージⅠ/Ⅱ/III/Ⅳ)、治療ライン(1次/2次/3次以降)、併用薬の有無、患者背景などの要素に分けてその違いを見ていくと、2017年7月6日現在でいくつかの違いが見つかる。

現在進行中の第III相臨床試験の本数が複数あることを考えると、この先いくつもの違いが免疫チェックポイント阻害薬の間で見つかるに違いない。この違いが、免疫チェックポイント阻害薬の化合物自体により生じた違いなのか?臨床試験のデザインにより生じた違いなのか?その真因は免疫チェックポイント阻害薬同士の直接比較試験を実施しない限りは明らかにならない。

しかし、その臨床試験の結果を待っていては何十年か先、下手すれば何十年経ってもその結果が出ない可能性は十二分にあり得る。そのため、科学的根拠レベルの信頼度が高いとされる第III相臨床試験を参考に、臨床試験のデザインが酷似した免疫チェックポイント阻害薬同士を比較することで何かしらの違いを見出すことは臨床的意義があると言えるだろう。

関連情報

記事:山田 創 加筆修正:可知 健太

×

リサーチのお願い


この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン