目次
胃がん
周術期胃がんにおける術前・術後化学療法に対するペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)の上乗せ:KEYNOTE-585試験【Abstract#LBA74】 周術期胃がんにおける術前・術後化学療法に対するデュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)の上乗せ:MATTERHORN試験【Abstract#LBA73】
KEYNOTE-585試験では、キイトルーダ上乗せによる病理学的奏効率の改善が認められたにもかかわらず生存期間の延長に結びつかない、という結果であった。「局所進行胃/食道胃接合部腺がんに対する周術期化学療法のキイトルーダ追加、病理学的完全奏効率は改善も無イベント生存期間は延長せず」
またMATTERHORN試験に関しては追跡期間が短く、病理学的奏効率の改善傾向までは認めらたが、今後の長期追跡により再発抑制や生存期間の延長につながるのかが注目される。 周術期胃がんに対する免疫療法に関しては、以前にATTEACTION-5試験において、術後化学療法によるニボルマブ(製品名:オプジーボ)の上乗せ効果が認められなかったという背景があり、今回の2つの試験結果と併せて、今後胃がんにおける周術期化学療法への免疫療法の追加の検討の方向性が気になるところ。ディスカッションの中では、PD-L1やMSI-highなどのバイオマーカーで絞る戦略などが提案された。HER2陽性進行性胃がんにおけるトラスツズマブ(製品名:ハーセプチン)+化学療法に対するキイトルーダ上乗せ:KEYNOTE-811試験【Abstract#1511O】
標準療法に対するキイトルーダの上乗せの効果が示された試験。特にPD-L1陽性に対する良好な効果が認められ、同日にHER2陽性PD-L1陽性に対する同治療法がESMOのガイドラインにも反映された。 PD-L1とHER2は共発現することが報告されており、HER2陽性症例ではキイトルーダ上乗せの恩恵を受ける症例が多いことが期待される。 一方の日本では、中間解析の時点で全生存期間の改善傾向はみられているものの、最終解析が重要視されると思われるため、今後の日本における承認状況の動向に注視していきたい。「HER2陽性転移性胃がん/食道胃接合部がんに対する初回治療としてのキイトルーダ+標準治療、無増悪生存期間を有意に改善」
MSI-High進行性胃がんの初回治療におけるオプジーボと低用量イピリムマブ(製品名:ヤーボイ)の併用:NO LIMIT試験(WJOG13320G)【Abstract#1513MO】
オプジーボとヤーボイの併用の有効性に関しては、CheckMate-649試験の中で検討されていたが、安全性の観点から中止となった背景がある。 今回発表されたNO LIMIT試験は、有効性が期待できるMSI-Highの症例に絞り、より低用量のヤーボイで再検討した日本の医師主導試験。腫瘍評価項目として高い奏効率が認められるとともに、安全性においても重大な問題は認められず、化学療法フリーの治療法として非常に期待が持てる結果であった。 MSI-Highは進行性胃がんの数%であるため、大規模臨床試験などが難しい非常に希少な対象症例であるが、実臨床への早期導入に期待したい。食道がん
化学放射線療法後の食道がんに対する積極的サーベイランス:SANO試験【Abstract#LBA75】
術前化学療法により臨床的完全奏効(CCR)が得られた症例では、サーベイランスにより局所再発が疑われた時点で手術介入をするで、術前療法後すぐの手術と同等の予後であり、かつ良好なQOL(生活の質)を維持できることが示された。積極的サーベイランスが標準手術の代替となる可能性が示唆されるデータである。 ただし、放射線への感受性が高い扁平上皮がんとそうではない腺がんという性質が異なる組織型を一緒に評価した試験であるため、今後は組織型別の解析などが望まれる。 また試験の中では、CCRを「術前療法後6週および12週で残存病変なし」と定義しているが、この間に完全奏効が得られなかった症例の予後に関しては現時点で情報がない。CCRの評価のタイミングなども今後検討が必要になるかもしれない。「化学放射線療法後の食道がんに対する積極的サーベイランス、手術に対して非劣勢を示す」