国立がん研究センターは6月2日、同センター東病院の設楽紘平先生(同センター消化管内科長)ら研究グループが実施した国際共同第3相LEAP-015試験の結果を発表した。
同試験は、HER2陰性の進行・転移性胃/胃食道接合部腺がんに対するレンビマ(一般名:レンバチニブ)+キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)に化学療法を追加することの有効性と安全性を検証した試験。同センターの臨床研究グループは、進行胃がんに対する一次・二次治療としてのレンビマ+キイトルーダ療法を検討した第2相の医師主導治験(EPOC1706)において、
良好な奏効割合(69%)を既に報告している。今回は一次治療としての化学療法とレンビマ+キイトルーダの併用療法を化学療法単独と比較することを目的として実施された。
同試験には、グローバル157施設より880例(レンビマ+キイトルーダ+化学療法群443例、化学療法群437例)が登録された。PD-L1発現率は登録時に検査され、全体の約80%に相当する688例がCPS(Combined Positive Score)≥1を示した。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、PD-L1 CPS ≥1の集団において、併用療法群のPFS中央値が7.3ヶ月に対し、化学療法群では6.9ヶ月であり、統計的有意な改善が認められた(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62–0.90、p=0.0012)。全体集団においても、併用療法群のPFS中央値は7.2ヶ月に対し、化学療法群では7.0ヶ月であり、統計学的に有意な改善が認められた(ハザード比:0.78、95%信頼区間:0.66–0.92、p=0.0019)。

(画像はリリースより)
一方、もう一つの主要評価項目である全生存期間(OS)については、PD-L1 CPS ≥1の集団において、併用療法群の中央値が12.6ヶ月に対し、化学療法群では12.9ヶ月であった(ハザード比:0.84、95%信頼区間:0.71–1.00、p=0.0244)。また全体集団におけるOSの中央値は、併用療法群で13.1ヶ月に対し、化学療法群で13.0ヶ月を示した(ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.75–1.01)。いずれの集団においても、併用療法によるOSの統計学的に有意な改善は確認されなかった。

(画像はリリースより)
後治療の使用割合については、併用療法群で46%に対して化学療法群で63%であり、抗PD-1/PD-L1抗体が5%に対して19%、血管新生阻害剤が19%に対して29%であった。
全グレードの治療関連有害事象は、併用療法群で97%に対して化学療法群で92%であり、グレード3以上の有害事象は、それぞれ65%および48%に発現した。治療中止に至った有害事象は、併用療法群で20.4%に対して化学療法群で11.3%であった。
頻度の高かった治療関連有害事象(全グレード)は、好中球減少症(併用療法群で46%、化学療法群で45%)、嘔気(39%に対して40%)、下痢(38%に対して25%)、高血圧(32%に対して0%)、食欲減退(30%に対して 18%)、蛋白尿(21%に対して1%未満)などであった。併用療法群では、レンビマ特有の高血圧および蛋白尿が多く見られた。また免疫関連有害事象は併用療法群で46%、化学療法群で12%に発現し、グレード3以上のものは10%に対して1%であった。治療関連死は併用療法群で5%に対して化学療法群で1%未満であった。
全般的な健康状態・生活の質(QOL:EORTC QLQ-C30スコアにて評価)の経時的変化に関しては、両群間で大きな差は認められなかった。下痢および食欲低下のスコアに関しては、併用療法群で一時的に悪化が認められたが、時間経過とともに回復傾向を示した。
以上の結果から、レンビマ+キイトルーダ+化学療法の併用により、PFSの改善を認める一方で、OSの有意な改善は認められず、副作用が増加することが確認された。研究グループは今後、この併用療法が最適な患者さんを同定するバイオマーカーの同定や適正使用の検討が重要な課題としている。
なお、同試験結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)における発表と同時に、科学雑誌「Journal of Clinical Oncology」に掲載されている。
参照元:
国立がん研究センター 研究トピックス