2025年5月30日-6月3日、米国シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)にて、ホルモン受容体(HR)陽性乳がんの内分泌療法中に経験する血管運動神経症状(ホットフラッシュなど)に対するニューロキニン(NK)-1,3受容体阻害薬elinzanetantの有効性・安全性を検証した
第3相OASIS-4試験(NCT05587296)の結果が発表された。
試験デザイン
対象
HR陽性乳がんの術後治療、あるいは乳がん発症リスクの高い症例の予防介入としての内分泌療法中の18歳から70歳までの女性
治療法(レジメン)
試験群:elinzanetant 120mgを1日1回、52週間投与(n=316)
対照群:プラセボを1日1回、12週間投与→elinzanetant 120mgを1日1回、40週間投与(n=158)
評価項目
主要評価項目
ベースラインから投与開始4週目および12週目における中等度-重度の血管運動神経症状の1日平均発現頻度の変化量
結果
有効性
ベースラインにおける中等度-重度の血管運動神経症状の1日平均発現頻度は、試験群で11.4回(95%信頼区間:10.7~12.2)、対照群で11.5回(95%信頼区間:10.5~12.5)であった。
血管運動神経症状の発現頻度は、1週目から減少が認められた(試験群:-4.0回、対照群:-1.8回)。
投与開始から4週目時点におけるベースラインからの平均変化量は、試験群で-6.5回(95%信頼区間:-7.2~-5.8)、対照群で-3.0回(95%信頼区間:-3.9~-2.2)を示し、試験群で血管運動神経症状発現の統計的有意な改善が認められた(P<0.001)。
また、投与開始から12週目時点における平均変化量は、試験群で-7.8回(95%信頼区間:-8.5~-7.1)、対照群で-4.2回(95%信頼区間:-5.2~-3.2)を示し、試験群で血管運動神経症状発現の統計的有意な改善が認められた(P<0.001)。
安全性
投与開始から12週までの治療関連有害事象(TEAE)発現率は、試験群で220例(69.8%)に対して対照群で98例(62.0%)であり、重篤なTEAE発現率はそれぞれ8例(2.5%)と1人(0.6%)であった。最も多く報告されたTEAEは、頭痛、倦怠感、傾眠などであり、試験群でより多く報告されたTEAEは、倦怠感、傾眠、および下痢であった。
結論
Elinzanetantは、内分泌療法による血管運動神経症状の発現頻度を有意に改善し、忍容性も高かったことから、血管運動神経症状の管理に対する新たな選択肢として期待される。
なお同試験結果は、学会発表と同時に、海外雑誌「
The New England Journal of Medicine」に掲載された。
参照元:
Efficacy and safety of elinzanetant for vasomotor symptoms associated with adjuvant endocrine therapy: Phase 3 OASIS 4 trial.(ASCO 2025)