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肺がんに対する5種類のALK阻害薬の違いザーコリ、アレセンサ、ジカディア、ローブレナ、ブリガチニブ

[公開日] 2018.10.18[最終更新日] 2018.10.18

目次

ALK阻害薬とは

未分化リンパ腫キナーゼ(略称ALK;以下ALK)融合遺伝子は、非小細胞肺がんの約3~5%に認められ、非小細胞肺がんのなかでも腺がんに特異的にみられる遺伝子である。ALK融合遺伝子はがん細胞の増殖に関わる遺伝子のなかでも特にがん増殖能が強いため、肺がん治療における重要なターゲットとして注目されている。

このALK融合遺伝子を標的にした薬はALK阻害薬と呼ばれ、2018年10月18日現在、”ALK融合遺伝子陽性切除不能進行・再発非小細胞肺がん”の効果・効能で国内承認されているALK阻害薬は4種類ある。

2012年承認された第1世代ALK阻害薬であるクリゾチニブ(商品名ザーコリ;以下ザーコリ)、2014年承認された第2世代ALK阻害薬であるアレクチニブ(商品名アレセンサ;以下アレセンサ)、2016年承認された第2世代ALK阻害薬であるセリチニブ(商品名ジカディア;以下ジカディア)、2018年承認された第3世代ALK阻害薬であるロルラチニブ(商品名ローブレナ;以下ローブレナ)である。

なお、国外では既に承認されており、2019年頃国内承認予定のALK阻害薬であるブリガチニブ(商品名ALUNBRIG)を加えると、ALK阻害薬は計5種類存在する。この5種類のALK阻害薬をどのように使い分けるべきか?本記事では種類のALK阻害薬の第II/III相臨床試験の結果を中心に、各ALK阻害薬を紹介する。

ALK阻害薬の使い分け

2018年9月25日現在、国内で承認されているALK阻害薬は第1世代ALK阻害薬ザーコリ、第2世代ALK阻害薬アレセンサ、第2世代ALK阻害薬ジカディア、第3世代ALK阻害薬ローブレナの4剤である。『肺癌診療ガイドライン2017年版』では、これらALK阻害薬の使い分けをする基準として「治療ライン」「Performance Status(略称PS;以下PS)」の因子を考慮することが推奨されている。なお、2018年9月に国内承認されたローブレナについて、『肺癌診療ガイドライン2017年版』では記載されていない。


肺癌診療ガイドラインより転載

上記図は、『肺癌診療ガイドライン2017年版』におけるIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する治療方針を示している。ご覧の通り、PS2-4のIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療においてはアレセンサが推奨されているが、それ以外ではALKチロシンキナーゼ阻害薬(略称TKI;以下TKI)として記載されているように、基本的にはどのALK阻害薬でも使える。では、どのようにしてALK阻害薬を使い分けるべきなのだろうか?そのためには、各ALK阻害薬の臨床試験を参考にするべきである。

ALK阻害薬ザーコリ

ザーコリは国内で最も早期に承認された第1世代ALK阻害薬である。ザーコリはIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療、2次治療の2つの治療ラインにおいて、第III相試験でその有効性を証明している。

IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてのザーコリ単剤療法の有効性を証明した第III相試験はPROFILE1014試験(NCT01154140)である。PROFILE1014試験とは、IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてザーコリ単剤療法を投与する群、またはシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した試験である。

本試験の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はザーコリ群10.9カ月に対してシスプラチン+ペメトレキセド併用群7.0ヶ月、ザーコリ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを55%統計学的有意に減少(HR:0.45,95%信頼区間:0.35-0.60,P<0.0001)した。

また、IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する2次治療としてのザーコリ単剤療法の有効性を証明した第III相試験はPROFILE1007試験(NCT00932893)である。PROFILE1007試験とは、IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する2次治療としてザーコリ単剤療法を投与する群、またはペメトレキセドもしくはドセタキセル単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した試験である。

本試験の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はザーコリ群7.7カ月に対してペメトレキセドもしくはドセタキセル群3.0ヶ月、ザーコリ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%統計学的有意に減少(HR:0.49,P<0.0001)した。

以上の2つの第III臨床試験の結果で示されたように、ザーコリ単剤療法はIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療、2次治療において有効性が証明されたALK阻害薬である。なお、『肺癌診療ガイドライン2017年版』においてIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてのザーコリは推奨度「2A」である。

ALK阻害薬アレセンサ

アレセンサは国内で2番目に承認された第2世代ALK阻害薬である。アレセンサはIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療においては第III相試験、2次治療においては第II相試験でその有効性を証明している。

IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてのアレセンサ単剤療法の有効性を証明した第III相試験はJ-ALEX試験(JapicCTI-132316)である。J-ALEX試験とは、IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてアレセンサ単剤療法を投与する群、またはザーコリ単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した試験である。

本試験の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はアレセンサ群未到達に対してザーコリ群10.2ヶ月、アレセンサ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを66%統計学的有意に減少(HR:0.34,P<0.0001)した。なお、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はアレセンサ群26.2%に対してザーコリ群51.9%、アレセンサ群で少なかった。

以上のJ-ALEX試験の結果より、『肺癌診療ガイドライン2017年版』においてIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてのアレセンサはザーコリよりも推奨度が「1A」として推奨されている。ただし、J-ALEX試験では全生存期間(OS)の結果が得られていない点は留意しておきたい。

また、アレセンサ単剤療法はザーコリ耐性後のIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する2次治療として、第I/II相試験、第II相試験においてその有効性を証明しており、その結果は無増悪生存期間(PFS)中央値8.1-8.9カ月、客観的奏効率(ORR)48-50%と良好な成績であった。

以上の臨床試験の結果より、アレセンサ単剤療法はIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療として最も推奨度の高いALK阻害薬である。ただし、ALK阻害薬治療後のIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する2次治療としての有効性も示しているため、ザーコリ単剤療法後の2次治療も選択肢となり得る。

ALK阻害薬ジカディア

ジカディアは国内で3番目に承認された第2世代ALK阻害薬である。ジカディアはIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療、2次治療以降の治療ラインにおいて、第III相試験でその有効性を証明している。

IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてのジカディア単剤療法の有効性を証明した第III相試験はASCEND-4試験(NCT01828099)である。ASCEND-4試験とは、IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてジカディア単剤療法を投与する群、またはプラチナ+ペメトレキセド併用療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した試験である。

本試験の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はジカディア群16.6ヶ月に対してプラチナ+ペメトレキセド併用療法群8.1ヶ月、ジカディア群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを45%統計学的有意に減少(HR:0.55,P<0.0001)した。

以上のASCEND-4試験の結果より、『肺癌診療ガイドライン2017年版』においてIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてのジカディアは推奨度「2B」である。アレセンサのように他のALK-TKIと直接比較した第III相試験の結果がないため、ジカディアの推奨度は他のALK-TKIに比べて低い。

また、ジカディア単剤療法はザーコリおよび1レジメンまたは2レジメンの前治療としての化学療法後のIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する2次治療以降としてその有効性を第III相のASCEND-5試験(NCT01828112)で証明しており、その結果は無増悪生存期間(PFS)中央値ジカディア群5.4ヶ月に対してドセタキセルないしペメトレキセド群1.6ヶ月、ジカディア群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%統計学的有意に減少(HR:0.49,P<0.0001)した。

ALK阻害薬ローブレナ

ローブレナは国内で4番目に承認された第3世代ALK阻害薬である。ローブレナは耐性変異がみられる変異型ALKに対しても効果が期待されている。ローブレナはALK-TKIに抵抗性又は不耐容のIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する2次治療以降において第II相試験でその有効性を証明している。ALK阻害薬に抵抗性又は不耐容のIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する2次治療以降としてのローブレナ単剤療法の有効性を証明したのは第II相試験である。

第II相試験では、脳転移がない、あるいは無症候性の脳転移(治療歴の有無を問わない)を有するIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者を各コホート別(未治療のALK融合遺伝子陽性群、ザーコリの治療歴のあるALK融合遺伝子陽性群、ザーコリ以外のALK阻害薬の治療歴のあるALK融合遺伝子陽性群、2または3レジメンのALK阻害薬の治療歴のあるALK融合遺伝子陽性群、ROS1融合遺伝子陽性群)に割りつけ、ローブレナ単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、頭蓋内客観的奏効率(ORR)を検証した試験である。本試験の結果は下記の通りである。

・未治療のALK融合遺伝子陽性群:客観的奏効率(ORR)は90%(95%信頼区間:74%-98%)、頭蓋内客観的奏効率(ORR)は75%(95%信頼区間:35%-97%)

・ザーコリ治療歴のあるALK融合遺伝子陽性群:客観的奏効率(ORR)は69%(95%信頼区間:56%-81%)、頭蓋内客観的奏効率(ORR)は68%(95%信頼区間:50%-82%)

・ザーコリ以外のALK-TKI治療歴のあるALK融合遺伝子陽性群:客観的奏効率(ORR)は33%(95%信頼区間:16%-54%)、頭蓋内客観的奏効率(ORR)は42%(95%信頼区間:15%-72%)

・2または3レジメンのALK-TKI治療歴のあるALK融合遺伝子陽性群:客観的奏効率(ORR)は39%(95%信頼区間:30%-49%)、頭蓋内客観的奏効率(ORR)は48%(95%信頼区間:37%-59%)

・ROS1融合遺伝子陽性群:客観的奏効率(ORR)は36%(95%信頼区間:23%-52%)、頭蓋内客観的奏効率(ORR)は56%(95%信頼区間:35%-76%)

以上の第II相試験の結果より、ローブレナは複数回のALK阻害薬の治療歴を有する患者群に対しても良好な客観的奏効率(ORR)、頭蓋内客観的奏効率(ORR)が確認され、獲得耐性、脳転移の出現により既存の治療法では十分な効果が期待できないIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者の新たな治療選択肢として期待されている。

なお、第Ⅲ相のCROWN試験(NCT03052608)にて、IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてローブレナ単剤療法を投与する群、またはザーコリ単剤療法を投与する群を直接比較した非盲検無作為化群間比較試験が現在進行中である。

ALK阻害薬ブリガチニブ(商品名ALUNBRIG)

ブリガチニブは国内未承認、米国にて2017年5月1日製造販売承認を得たALK阻害薬である。ブリガチニブはIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療においては第III相試験、2次治療においては第II相試験でその有効性を証明している。

IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてのブリガチニブ単剤療法の有効性を証明した第III相試験はALTA-1L試験(NCT02737501)である。ALTA-1L試験とは、IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてブリガチニブ単剤療法を投与する群、またはザーコリ単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した試験である。

本試験の結果、ザーコリ群に比べてブリガチニブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%統計学的有意に減少(HR:0.49,95%信頼区間:0.33-0.74,P=0.0007)した。

以上のALTA-1L試験の結果は、先述したアレセンサのJ-ALEX試験の結果と酷似しており、アレセンサ同様に無増悪生存期間(PFS)の改善が最も期待できるALK阻害薬である。

また、ブリガチニブ単剤療法はザーコリ耐性後のIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する治療として、第II相のALTA試験(NCT02094573)においてその有効性を証明している。その結果は、本試験の主要評価項目である全奏効率(ORR)53%、頭蓋内全奏効率(ORR)67%と良好な成績であった。

以上の臨床試験の結果より、ブリガチニブ単剤療法はIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてALK阻害薬の中でアレセンサ同様の有効性が期待できる。ただし、ALK阻害薬治療後のIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する治療としての有効性も示しているため、ザーコリ単剤療法後の2次治療以降も選択肢となり得るであろう。

おわりに

以上のように、2018年10月18日現在、国内で承認されているALK阻害薬はザーコリ、アレセンサ、ジカディア、ローブレナの4種類、未承認のALK阻害薬はブリガチニブの1種類ある。これら5種類のALK阻害薬の内、ローブレナを除く4種類のALK阻害薬はIV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療として対照群に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長することを第III相試験で証明している。

そのため、4種類のALK阻害薬の有効性は甲乙つけがたい。しかし、アレセンサ、ブリガチニブの第III相試験の対照群が他のALK阻害薬ザーコリであるのに対して、ザーコリ、ジカディアの第III相試験の対照群は化学療法である。そのため、IV期ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対する1次治療としてのALK阻害薬はアレセンサ、ブリガチニブが選択される機会が増えてくるであろう。

 

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ニュース 肺がん NCT02094573

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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