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電子患者報告アウトカム活用の実態:国内外の取り組みとこれからの課題 第33回日本乳癌学会学術集会より

[公開日] 2025.08.07[最終更新日] 2025.08.05

7月10日から7月12日に、第33回日本乳癌学会学術集会(JBCS 2025)が、京王プラザホテルにて開催された。 シンポジウム14「乳癌領域におけるePRO活用の未来」のセッションの中で、【がん診療におけるePROMの現状と課題】と題して平成人先生(川崎医科大学 乳腺甲状腺外科学)が講演した。 平先生は、医療の基本スタイルは「患者さんの訴えを的確にとらえて医療者が評価し介入すること」だとした上で、実際には患者さんの症状を過小評価している可能性に言及。例えば、臨床試験における有害事象報告では、主治医報告と比較して患者報告の方が、より高い頻度でより早い段階から有害事象が起きることが過去の報告でも示されている。 このような背景から、患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome;PRO)を、①臨床試験の評価項目、➁日常のがん診療における症状モニタリングとして使う意義が見直されてきた。特に➁に関しては、従来の紙での対応では制限があったが、電子デバイスを使った電子患者報告アウトカム(ePRO)が使用可能になったことで、実臨床での使用が進んできている。 海外の先行研究では、ePROモニタリング(ePROM)が通常の診療と比較して、生活の質(QOL)だけでなく生命予後の改善効果も高いことが示唆されている。また、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のガイドラインでは、日常診療におけるがん薬物療法中のePROMが推奨されている。 国内での取り組みのひとつとしては、ePROアプリ「ヒビログ」の開発が行われ、化学療法中の転移乳がん患者さんにおける高い回答コンプライアンスの達成が報告されている(Taira N et al. Breast Cancer 2023)。また同報告の中で、患者さんが最も困っている症状は、倦怠感、続いてしびれや疼痛であることなど、患者さんの実態が明らかとなるというベネフィットも得られた。 また、化学療法だけでなく、比較的有害事象の管理が課題とされているエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)におけるePROMの有効性に関しても、日本で実施されたPRO-DUCE試験によって明らかとなり、平先生によると、もうすぐ論文化される予定だ。 一方で、「成功報告ばかりではない」と平先生。例えば、術後内分泌療法を対象としたePROMのランダム化試験では、症状のモニタリングによるQOLの改善は示されなかった(Okuyama H et al. Breast Cancer 2024)。この結果に関して平先生は、術後内分泌療法自体のQOLへの影響がそもそも小さかったこと、また有害事象として高い割合を占める関節痛に対する適切な介入が確立されていないことなどを理由に挙げた。 現在は、薬物療法を受けている(受ける予定がある)進行・再発固形がんに対するePROMの有用性を検証する多施設共同非盲検ランダム化比較試験(PRO-MOTE試験、UMIN000042447)が進行中である。主要評価項目を全生存期間とQOLに設定しており、がん種横断的なエビデンスとして結果が待たれる。 最後に平先生は、ePROMの課題として、医療者の負担に言及した。実際の医療者へのアンケート等においても、ePROMの有用性には大部分が賛同しているにもかかわらず、自身の患者への利用には躊躇する傾向が示されている(Basch E et al. JCO Clin Cancer Inform 2020)。この問題に対するひとつの解決策の例として平先生は、CANKADOというアプリを使ったドイツの取り組みを紹介。同アプリは、健康状態の把握、必要に応じた症状に関する質問票の提示、患者さんの回答に対する重症度・緊急度の評価、医師への報告のタイミングの判断などが全て自動化されているため、患者さんが医療者へ報告を上げるまでは医療者の介入を必要としない。このアプリを使うことで、患者さんのQOLが改善することが既に臨床試験によって示されており(Harbeck N et al. Annals Oncol 2023)、ドイツではこのアプリが保険償還されている。今後このような取り組みが広がることで、医療者の負担への懸念が減り、課題克服につながっていくことが期待される。 ePROMの目的は、副作用マネジメントやQOL改善だけにとどまらず、治療のアドヒアランスの改善、特定の薬剤に特化した有害事象のモニタリング、更には僻地や離島への応用による医療者負担の軽減など多様性に富んでいると平先生。「日本におけるePROMへの関心は高まってきており、様々な取り組みが始まっていますので、今後益々国内からのエビデンス創出が求められる領域だと思います」(平先生) 質疑の中で、副作用の症状があるときに、携帯等で文字入力をすることの負担が指摘された。この点に関して平先生は、現在(LINEのスタンプのような感覚で)自身の症状に適した画像を選ぶシステムを開発中であるとし、将来的にはより簡便なシステムに移行していく可能性に言及した。 関連リンク: 第33回日本乳癌学会学術集会 ウェブサイト
ニュース 乳がん ePRO

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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