エンハーツによる治療中の転移性乳がんにおける電子患者報告アウトカムモニタリング、QOLの改善に期待ASCO2024


  • [公開日]2024.06.13
  • [最終更新日]2024.06.13

2024年5月31日-6月4日、米国シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会2024(ASCO 2024)にて、エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)による治療を受けている転移性乳がん患者に対し、電子患者報告アウトカム(ePRO)モニタリングと通常の経過観察を比較した多施設共同無作為化比較探索研究(PRO-DUCE試験)の結果が、 関西医科大学乳腺外科学講座の木川雄一郎氏らにより発表された。

PRO-DUCE試験において、T-DXdの対象となるHER2陽性転移性乳がんをePROモニタリング群と通常診療群のいずれかに無作為に割り付け主要評価項目として24週目のEORTC QLQ-C30のグローバルQoLスコアのベースラインからの変化を、また副次的評価項目としてEORTC QLQ-C30の機能的尺度および症状尺度のスコア変化およびGlobal QoLの悪化までの時間を評価した。ePROモニタリング群では、自宅のスマートフォンまたはパソコンを介して週1回の症状と毎日の体温/SpO2の報告が実施され、症状が一定の基準を超えた場合には医療スタッフに電子メールでアラートが送られ、必要に応じて電話相談が行われた。

2021年3月から2023年1月にかけて、日本の38施設から111例が登録され、56例がePROモニタリング群に、55例が通常診療群に割り付けられた。24週間でePROモニタリング群においては全1223件のePRO報告があり、そのうち医療スタッフへのアラート通知は427件(患者1人当たり7.9件)であった。24週目のグローバルQoLスコアのベースラインからの平均変化は、ePROモニタリング群が通常診療群よりも有意に優れていた(スコア平均差8.0 [90%信頼区間:0.2-15.8], p=0.091)。また生活機能、認知機能、社会機能はePROモニタリング群の方が優れており、平均差はそれぞれ10.0(90%信頼区間: 1.1-18.9, p=0.028)、6.3(90%信頼区間: 1.1-11.5, p=0.017)、10.9(90%信頼区間: 3.9-18.0, p=0.003)であった。更に、吐き気/嘔吐には差がなかったが、疲労はePROモニタリング群で有意に改善した(スコア平均差-8.4 [90%信頼区間: -16.1-0.6], p=0.034)。Global QoLスコアが最初に悪化するまでの期間の中央値は、ePROモニタリング群で3.9ヵ月(95%信頼区間: 2.5-13.9)、UCで3.0ヵ月(95%信頼区間: 1.6-6.7)であった(ハザード比0.73, p=0.159)。

T-DXdは、HER2陽性転移性乳がんにおける非常に有効な薬剤であるが、吐き気、倦怠感、間質性肺疾患などの有害事象を伴う。今回の結果から、ePROによる症状モニタリングやアラート通知により、T-DXdを投与されている患者のQOLを改善し、治療負担を軽減できる可能性が示唆された。

参照元:
A randomized study comparing electronic patient-reported outcome (ePRO) monitoring with routine follow-up during trastuzumab deruxtecan treatment in patients with metastatic breast cancer (PRO-DUCE study).(ASCO 2024)

×

リサーチのお願い


この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン