図15
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切除不能な悪性胸膜中皮腫患者に対し、ニンテダニブ(商品名オフェブ)を標準療法であるシスプラチンとペメトレキセド(商品名アリムタ)に併用することにより、病勢が進行するまでの期間である進行無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、安全性も忍容可能であることが、第2相臨床試験(LUME-Meso試験,NCT01907100)の結果から示された。

この結果は、昨年12月4日から7日までオーストリア ウィーンで開催された第17回世界肺癌会議(WCLC2016)で、イタリアのSs Antonio E Biagio HospitalのFederica Grosso氏により発表された。

悪性胸膜中皮腫に対して血管新生阻害薬が有望な可能性

悪性胸膜中皮腫は、アスベスト(石綿)の暴露により発症するリスクが高まる悪性度の高いがんである。また、日本では年間罹患数が1500人程度と希少がんの一種となるが、アスベストを吸入してから発症するまでは20年から40年とされているこのがんは、1960年以降のアスベストの輸入量を考慮すると今後増加の一途をたどり、2030年から2035年にピークを迎えると予想されている。

しかしながら、治療選択肢は少なく、切除不能な悪性胸膜中皮腫に対する標準的な初回治療はシスプラチンとアリムタの併用療法となるが、全生存期間(OS)中央値は1年程度にとどまる。しかも、標準的な二次治療は存在せず、新たな治療法の開発が急務となる。

悪性胸膜中皮腫の初回治療をとしては、標準療法に血管新生阻害薬であるVEGF抗体ベバシズマブ(アバスチン)を追加した第3相臨床試験(MAPS試験)では、無増悪生存期間と全生存期間が改善し、2015年12月21日に医学誌Lancetに掲載。VEGF伝達経路の阻害が注目されている。日本においては、2016年12月22日、アバスチンは悪性胸膜中皮腫適応において希少疾病用医薬品指定を受けた。

胸膜中皮腫 シスプラチンとアリムタの併用療法にアバスチンの上乗せは有効 LANCET

オフェブは、VEGF系伝達経路に関わる血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、繊維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を標的とするトリプルキナーゼ阻害薬ある。日本を含む数多くの国において「特発性肺線維症」の治療薬として承認されており、また、欧州において「1次化学療法後の腺癌の組織型を有する非小細胞肺がんに対する治療薬」としてドセタキセルとの併用することで承認されている。

『シスプラチン+アリムタ+オフェブ』→『オフェブ』 vs 『シスプラチン+アリムタ+プラセボ(偽薬)』→『プラセボ』

LUME-Meso試験は、切除不能な悪性胸膜中皮腫(組織型は上皮型および二相型)において、化学療法未治療の方が対象の二重盲検比較試験である。治療は21日を1サイクルとし、シスプラチン75mg、アリムタ500mgを1日目に、加えてオフェブ200mgまたはプラセボ(偽薬)を1日2回、2日目から21目まで投与した。シスプラチンとアリムタは最大6サイクルとし、その後、進行を認めない場合はオフェブまたはプラセボを維持療法として投与した。

主要評価項目は無増悪生存期間、副次的評価項目は全生存期間および奏効率だった。

本試験では87人が登録され、ペメトレキセドとシスプラチンにオフェブを併用する群(オフェブ群)には44人、プラセボを追加する群(プラセボ群)に43人割り付けられた。両群の患者背景において、上皮型はオフェブ群88.6%、プラセボ群88.4%、二相型はそれぞれ11.4%と11.6%だった。

標準療法にオフェブを併用することで病態進行リスクが44%減少、副作用による治療中止も増加せず

主要評価項目である無増悪生存期間の中央値は、オフェブ群9.4カ月、プラセボ群5.7カ月と統計学的有意に進行リスクを44%減少した(HR 0.56, p=0.017)。このことは、二相型を除くすべてのサブグループで一貫して認められた。奏効率(腫瘍を30%以上縮小する方の割合)は、オフェブ群59%、プラセボ群44%となりと、オフェブ群で高い傾向が得られた。

全生存期間については、未成熟ばデータであるものの、オフェブ群で良好な傾向がみられ、全生存期間中央値はオフェブ群18.3カ月、プラセボ群14.5カ月と22%の死亡リスクの低下を認め、良好な傾向が得られた(HR0.78)。最新データは今後発表されるとのこと。

サブグループ解析では、上皮型の患者にて更に改善が示された。無増悪生存期間の中央値はオフェブ群9.7カ月、プラセボ群5.7カ月と49%の進行リスクを減少した(HR 0.51, p=0.010)。全生存期間中央値は、オフェブ群18.3カ月、プラセボ15.2カ月と38%死亡リスクを減少した(HR0.68)。

有害事象による治療中止はオフェブ群7%、プラセボ群15%に発現し、重篤な有害事象はオフェブ群の36%、プラセボ群の42%に発現した。グレード3(中等度から重度)以上の有害事象で多く観察されたのは、好中球減少(オフェブ群34%、プラセボ群10%)、ALT値上昇(14%、2%)、γ-GTP値上昇(14%、0%)だった。その他の有害事象はプラセボ群と大きな差はなかった。また、血管新生阻害薬阻害薬で多く観察される有害事象である出血、消化管穿孔、血栓塞栓症および高血圧等については、グレード3以上の出血や消化管穿孔はオフェブ群では発現せず、その他の事象の頻度も低く、プラセボ群と差はなかった。

このことは、オフェブを追加しても化学療法の治療サイクル数の減少はなく、重篤な有害事象が増加せず、血管新生阻害薬特有の有害事象も少なかったことを示唆する。

悪性胸膜中皮腫 上皮型に対して、第3相試験が進行中

これらの結果にもとづき、第3相試験がかいしされており、現在、日本を含み現在患者を登録中となる。第3相試験となるこの試験では、組織型を上皮型のみを対象として設定し、450人の登録を目標としているとのこと。

悪性胸膜中皮腫対象 シスプラチン+アリムタ+ニンデタニブの併用療法の第2/3相試験

WCLC2016 OA22.02 – Nintedanib plus Pemetrexed/Cisplatin in Patients with MPM: Phase II Findings from the Placebo-Controlled LUME-Meso Trial

記事:可知 健太

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