2025年5月30日-6月3日、米国シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)にて、既治療の進展型小細胞肺がん(SCLC) 患者に対する二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)イムデトラ(一般名:タルラタマブ)の有効性・安全性を検証した
第3相DeLLphi-304試験(NCT05740566)の結果が発表された。
試験デザイン
対象
プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法中または治療後に病勢進行した進展型SCLC
治療法(レジメン)
試験群:イムデトラ単剤療法(n=254)
対照群:標準化学療法; トポテカン(n=185)、lurbinectedin(n=47)、アムルビシン(n=23)
評価項目
主要評価項目
全生存期間(OS)
主要な副次評価項目
無増悪生存期間(PFS)、患者報告アウトカム(PRO)
その他の副次評価項目
客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性など
結果
有効性
追跡期間中央値が試験群で11.2ヶ月、対照群で11.7ヶ月において、主要評価項目であるOSの中央値はそれぞれ13.6ヶ月と8.3ヶ月で、試験群で有意な改善が認められた(ハザード比:0.60、95%信頼区間:0.47-0.77、p<0.001)。
主要な副次評価項目であるPFSの中央値は、試験群で4.2ヶ月に対して対照群で3.7ヶ月を示し、試験群で有意な改善が認められた(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.59-0.86、p=0.002)。またORRは、試験群で35%に対して対照群で20%、DORの中央値は、それぞれ6.9ヶ月と5.5ヶ月であった。
ベースラインから治療開始18週後の呼吸困難スコア(EORTC QLQ-C30に基づく)の平均変化率は、試験群で-1.94に対して対照群で7.20(p<0.001)、また咳スコア(EORTC QLQ-LC13に基づく)が改善した患者の割合は、それぞれ16.1%と9.0%(p=0.012)であり、いずれも試験群で有意な改善が認められた。胸痛スコア(EORTC QLQ-LC13に基づく)が改善した患者の割合は、それぞれ8.7%と3.5%(p=0.1)であり、有意差はついていないものの、試験群で改善傾向が示唆された。
安全性
グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、試験群で27%に対して対照群で62%に認められ、TRAEにより治療中止となったのは、それぞれ3%と6%であった。試験群の56%でサイトカイン放出症候群(CRS)が起きたが、グレード1が42%、グレード2が13%、グレード3が1%で、重篤症例は17%であった。また免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の発現は6%に認められた。
結論
既治療の進展型小細胞肺がんに対する2次治療としてのイムデトラは、標準化学療法よりも良好な選択肢となることが示唆された。
また、初回の化学療法+イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)後のイミフィンジによる維持療法に対するイムデトラの追加を検討した第3相ランダム化比較DeLLphi-305試験(NCT06211036)が進行中であり、日本も参加国に含まれている。
参照元:
Tarlatamab versus chemotherapy (CTx) as second-line (2L) treatment for small cell lung cancer (SCLC): Primary analysis of Ph3 DeLLphi-304.(ASCO 2025)