米国臨床腫瘍学会(ASCO)の結果が正式に発表される。
ダラツムマブ(daratumumab、商品名:Darzalex;ダラザレックス)は骨髄腫細胞などの造血細胞に過剰発現しているCD38 を標的として抗腫瘍効果を示すヒト IgGκモノクローナル抗体である。今回、本年(2016年)のASCOで発表されたダラツムマブの多発性骨髄腫に対する良好な試験結果が、New England Journal of Medicine誌8月25日号に掲載された。
多発性骨髄腫 ベルケイド/デキサメタゾンにCD38抗体ダラツムマブを上乗せすることは有効 ASCO2016
この試験は多施設無作為オープンラベルの第III相試験。少なくとも1回の前治療受けた再発・難治性多発性骨髄腫患者498人を対象に行われた。患者は試験群であるダラツムマブ+ボルテゾミブ(ベルケイド)+デキサメタゾン投与グループ(251例)または対照群であるボルテゾミブ+デキサメタゾン投与グループ(247例)に無作為に割り付けられた。
ダラツムマブ 増悪または死亡リスク61%減少
結果、12ヵ月無増悪生存率(12カ月時点で病態が一定以上進行していな方の割合)はダラツムマブ群で60.7%、対照群で26.9%であった。無増悪期間(病態が一定以上進行しなかった期間)の中央値はダラツムマブ群では未到達、対照群では7.4ヵ月と、ダラツムマブ群で優れていることが統計学的に証明された。
そのハザードレシオは0.39(95%信頼区間0.28-0.53. P<0.001)であり、ダラツムマブ群は増悪または死亡のリスクを61%減少させることが示された。完全奏効(CR)と部分奏効(PR)を合わせた全奏効率は、ダラツムマブ群82.9%、対照群63.2%と、ダラツムマブ群で優れていることが統計学的にも証明された(p<0.001)。
一方、ダラツムマブ群で頻度の多い有害事象はインフュージョンリアクション(注入時の急性アレルギー反応)であり、45.3%の患者に見られた。ただし、それらのほとんどはグレード*1または2であり(グレード3は8.6%)、また98.2%は初回投与であった。(* NCI 有害事象共通用語規準 v4.3による)
*グレード1~2:軽度から中等度の副作用
FDA(米国)では既に4次治療としては承認済み 2次治療としても最近申請。日本では臨床試験段階
ダラツムマブは2015年11月16日、米国食品医薬品局(FDA)により、プロテアソーム阻害剤や免疫調節薬など3種以上の治療歴がある多発性骨髄腫患者、またプロテアソーム阻害剤および免疫調節薬いずれにも抵抗性の多発性骨髄腫患者に対する治療薬として迅速承認されている。また、2016年8月17日、少なくとも1種類の治療歴がある(二次治療)多発性骨髄腫に対して、ダラツムマブをレナリドミド、デキサメタゾンと併用、あるいはボルテゾミブ、デキサメタゾンと併用する用法での適応拡大を米食品医薬品局(FDA)に申請している。日本では第3相試験の段階にある。
Palumbo A, et al. Daratumumab, Bortezomib, and Dexamethasone for Multiple Myeloma.(N Engl J Med. 2016 Aug 25;375(8):754-66.)
その他、8月16日には医学誌Blood online版には、ダラツムマブをレナリドミド+デキサメタゾンに上乗せする第1・2相臨床試験データが掲載された。
多発性骨髄腫 レナリドミド+デキサメタゾンにダラツムマブ追加 奏効率81.3% 第2相試験結果 Blood Online
記事:加藤 テイジ