多発性骨髄腫 レナリドミド+デキサメタゾンにダラツムマブ追加 奏効率81.3% 第2相試験結果 Blood Online


  • [公開日]2016.08.30
  • [最終更新日]2017.06.30

多発性骨髄腫の単剤治療薬ダラツムマブをレナリドミド+デキサメタゾンに追加 再発・難治性患者対象の第2相試験で奏効率81.3%

多発性骨髄腫を適応とする抗体医薬ダラツムマブ(商品名Darzalex;ダラザレックス)を含む3剤併用療法の第1/2相オープンラベル試験(NCT01615029)で、奏効率が80%を超えた。デンマークSouthern Denmark大学Vejle病院のTorben Plesner氏がBlood Online(2016.8.16)に発表し、その効果は迅速で深く、持続的と表現され、安全性に重要な問題はないと結論している。

相乗効果はベネフィットとリスクのバランスの良さか

ダラツムマブを含む3剤併用療法により得られた相乗効果は、ダラツムマブの抗体依存性細胞傷害(ADCC)や補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)作用ではなく、T細胞の拡充と活性化、ならびに免疫抑制の緩和を介した免疫調節作用に起因する可能性を示唆している。ダラツムマブの単剤治療では、ダラツムマブがCD38陽性細胞に結合することにより、制御性T細胞や制御性B細胞、骨髄由来サプレッサー細胞といったCD38陽性の免疫抑制細胞集団が減少する一方、末梢血や骨髄のCD4陽性、およびCD8陽性のT細胞数が増加することが報告されている。レナリドミドなどの免疫調節薬は、骨髄腫細胞上のCD38を上行調節することも報告されている。これらから、レナリドミドがダラツムマブの標的となるCD38を際立たせ、ダラツムマブのCD38を介した免疫調節が機能しやすくなったと考えることもできる。

2015年2月には、初診の未治療多発性骨髄腫患者を対象とする同様の3剤併用療法の第3相オープンラベル試験(NCT02252172)が欧米の255施設で開始され、目標登録730人の大規模試験として、レナリドミド+デキサメタゾンの2剤併用療法を対照にベネフィットとリスクのバランスを評価している。

試験薬剤概要

ダラツムマブは2015年11月、米国食品医薬品局(FDA)により迅速承認されたヒト化抗CD38モノクローナル抗体適応症は、プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬などを含む3種以上の治療歴がある多発性骨髄腫、またはプロテアソーム阻害薬と免疫調節薬の両方に抵抗性を示す多発性骨髄腫に対する単剤治療である。日本では第3相試験の段階にある。

レナリドミド(商品名レブラミド)は免疫調節薬で、再発、または難治性の多発性骨髄腫の適応で2010年6月に厚生労働省により承認された。米国では2006年6月に承認されている。未治療多発性骨髄腫の適応でも2015年2月に米国で、2015年12月には日本で承認を取得し、既治療、未治療の全ての多発性骨髄腫患者に処方可能となっている。

デキサメタゾンは日本で1963年から販売されている副腎皮質ホルモン製剤(ステロイド)。多発性骨髄腫の適応では2010年7月から販売されている(商品名レナデックス)。

試験方法

第1/2相試験は2012年6月12日、米国、デンマーク、フランス、オランダ、および英国で開始され、Blood Online では2015年10月2日をカットオフ日とする中間結果が発表された。

第1相漸増試験では、2種から4種の治療歴を有する再発多発性骨髄腫患者13人が登録され、レナリドミド+デキサメタゾンと併用でダラツムマブ2mg/kg、4 mg/kg、8 mg/kg、または16 mg/kgが点滴静注された。第2相拡大試験では、1種以上の治療歴を有し、前治療で部分寛解(PR)以上の効果が得られ、治療中あるいは最終治療後に病勢進行(PD)と判定された多発性骨髄腫患者32人が登録され、第1相で決定したダラツムマブの第2相推奨用量16 mg/kgが同様に点滴静注された。1サイクル28日として、ダラツムマブは1サイクル目と2サイクル目は週1回、3サイクルから6サイクル目までは2週に1回、以降は4週毎に反復した。レナリドミドは1日25mgを各サイクルの1日目から21日目まで経口投与、デキサメタゾンは週40mgとしてダラツムマブ投与日を除いて経口投与した。

試験結果:安全性

第1相試験はフォローアップ期間中央値が23.5カ月、治療期間中央値は22.4カ月で、用量制限毒性DLT;これ以上用量を増やせない副作用)は認められなかった。治療中止は6人で、中止理由は有害事象が2人、病勢進行(PD)が4人であった。

第2相試験はフォローアップ期間中央値が15.6カ月、治療期間中央値は14.8カ月で、治療下で発現したグレード3または4の有害事象は好中球減少症が最も多かったが(78.1%)、増殖因子製剤、あるいはレナリドミドの用量調節によりコントロール可能であった。発現した好中球減少症は全てレナリドミドに関連すると考えられ、53%の患者はダラツムマブに関連する好中球減少症と疑われた。グレード3または4の感染/感染症は15%から16%に認められ、上気道感染症、気管支炎、胃腸炎、肺炎、およびウイルス性肺炎(各3%)であった。有害事象を理由とする治療中止は3人で、ウイルス性肺炎の1人は全ての試験薬剤と、咽頭浮腫の1人はダラツムマブの加速静注に関連した。残り1人の胃腺癌は試験薬剤に無関係とされた。

試験結果:有効性

第1相試験のダラツムマブ16mg/kg群(第2相推奨用量)では、3人中2人が極めて良好な部分寛解(VGPR)と判定され、奏効率は66.7%であった。

第2相試験の32人(全てダラツムマブ16mg/kg)では全奏効率が81.3%、反応の内訳は厳格な完全寛解(sCR)が8人(25.0%)、完全寛解(CR)が3人(9.4%)、VGPRが9人(28.1%)、部分寛解(PR)が6人(18.8%)であった。さらに、小寛解(MR)が2人(6.3%)、病勢安定SD)が3人(9.4%)で、判定不能1人を除く全ての患者に効果が認められた。

第2相試験で効果が初めて認められるまでの時間中央値は1.0カ月と速やかで、治療開始後12カ月時点で91%の患者は病勢進行が認められていなかった。病勢進行例も死亡例も少ないため、中間解析では無増悪生存(PFS)期間と全生存期間OS)の特定には至っておらず、18カ月時点でのPFS率は72.1%、全生存率は90.4%であった。効果が得られたほとんどの患者は、フォローアップ期間中に効果判定が向上し、初回判定でPRまたはVGPRであった患者やその他の患者でも、治療後6カ月までには最良の判定に達した。レナリドミドの前治療に抵抗性を示した患者でもsCRに達し、決して多くはない患者集団で25%の完全寛解が確定したことは、ダラツムマブを含む3剤併用療法がもたらす効果の重さを示すと考えられた。

Phase 1/2 study of daratumumab, lenalidomide, and dexamethasone for relapsed multiple myeloma(Blood 2016 :blood-2016-07-726729; doi:10.1182/blood-2016-07-726729)

記事:川又 総江 & 可知 健太

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