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アプリに関する臨床試験結果がASCO注目演題に

2016年6月3日から7日までシカゴで開催された第52回米国臨床腫瘍学会(ASCO:アスコ)Annual Meeting(年次総会)にて、インターネットを介した経過観察アプリケーション(MOOVCARE™)が進行肺がん患者の生存期間を改善するという第3相試験結果が仏ルマンのInstitut Inter-regional de Cancérologie Jean BernardのFabrice Denis氏によって発表された。本試験は、記者会見での注目度が高い演題としてASCOニュースリリースでも紹介された。

本試験では、初回の化学療法、放射線療法、外科手術を終えたステージ3~4期の肺がん患者133人をアプリを介した経過観察群と、標準的な経過観察群に割り付けた。標準的な経過観察群では、医師による診察と3~6カ月ごと、あるいは研究者の判断によってCT検査を行った。

アプリ群の患者は同様のスケジュールで医師の診察を受けたが、予定したCT検査の回数は3分の1とした。アプリの活用手法は以下のとおり。

1.患者はアプリを用いて、毎週12の症状について自己評価を行う(患者の代わりに介護者のデータ入力も可能)
2.アプリは12の症状を解析し担当医にその結果を報告
3.アルゴリズムに則して症状の変化を評価し、医師に注意喚起のEメールを送信。
4.医師は検査や診察の必要性を確認し、患者にフィードバック。

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アプリ導入にて生存期間7カ月延長、死亡リスク67.5%軽減

驚くべきことに、標準的な経過観察を受けた患者群の全生存期間中央値が12カ月であったのに対し、アプリを利用した患者群では19カ月と延長。死亡リスクを67.5%軽減した(HR:0.325, P=0.0025)。
アプリ群では1年生存率は75%であったが、標準的な経過観察群では49%。中間解析時に良好な結果が確認でき、試験は有効中止(患者の有益性を考えて早期に中止すること)となった。

再発率は、標準的な経過観察群51%、アプリ群49%であり両群同様の結果となったが、再発時の患者の健康状態はアプリ群が良好で、患者の74%が再発時の推奨治療を受けることができた。一方、標準的な経過観察群では、がん再発時の最適な治療を十分に受けた患者はわずか3分の1であった。

生活の質(QOL)は、FACTという標準的QOL指標を用いて評価され、アプリ群が全般に良好であった。
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医師の負担少なく導入できるアプリケーション

Fabrice氏によれば、本研究はインターネットを介した経過観察手法にて生存期間に大きな改善がみられた初の試験とのこと。また、症状有した再発またはがん性合併症の早期検出を目的としたアルゴリズムが、早期の支持療法や治療の誘因として利用されたのも今回が初めてであった。

なお、患者が報告した症状の評価は医師にとって負担にはならなず、患者60人の追跡に要した時間は1週間でわずか15分程度で、患者が病院に電話をかけてくる頻度も減少したとのこと。

「このシンプルなオンラインアプリを利用した個別化経過観察を通して、がん性合併症や再発の徴候を発見し、より早期に適切な医療を提供できる。この取り組みは経過観察の新時代の扉を開く。担当医の診察までの間に、患者との継続的なやり取りが可能となるであろう」と、Fabrice氏は話している。

Mobile-Friendly Web Application Extends Lung Cancer Survival(ASCO News release)

Overall survival in patients with lung cancer using a web-application-guided follow-up compared to standard modalities: Results of phase III randomized trial.(ASCO2016, Abstract No.LBA9006)

SIVAN INNOVATION LTD社のMOOVCAREページ(ASCO発表グラフ付き)-英語

記者コメント

メルマガのコラムには先駆けて書きましたが、個人的にはセンセーショナルな結果でした。

薬剤開発は、1000億円かけて開発した薬剤が1~2か月の生存期間を延長して、承認取得するか?、しないか?の世界です。
それが「リモートで自覚症状を患者が入力して、それをチェックするだけ(言いすぎかも。。。)」のアプリを医療現場に導入するだけで生存期間が1.5倍以上改善することはすごいことかと。。。

なお、アプリがすごいというよりは遠隔医療の話でもあります。患者が病院に来ないときに医師がチェックする仕組みがアプリだった。遠隔でのモニタリングによって患者の生存期間が延びるということなのでしょう・・・おそらく。

この結果を知ってから1か月。オンコロジストや識者に会うたびにこのアプリのことを聞いていました。

「患者数が120人では少ない」
「フランスという特殊の環境だから、日本ではこうならない。(ヨーロッパは来院間隔が長い)」
「生存期間までは伸びないかもしれないけれど、日本でもすぐに開発するべき」
「日本でも一部が開発し始めている」
「副作用のサインなどを遠隔で診れるのは非常に利便性がある」
「実際に自宅療養時に悪化して亡くなった人はいる」
「どうやって保険償還するかが課題」
「アプリ自体は保険収載いらず。現状でも保険点数つけれるかも」
「医師は忙しいので、こういったことはできない」
「医師がモニタリングしなくても、看護師とかでもいいのかも」

など、様々な意見を頂きました。

ということで、オンコロでもこういったアプリ開発と臨床試験に協力していければと思うまでです。

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記事:可知 健太


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