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既治療のHER2変異陽性転移性非小細胞肺がんに対するエンハーツ、5.4mg/kg使用で良好な効果と安全性プロファイルを示す Journal of Thoracic Oncologyより

[公開日] 2025.08.14[最終更新日] 2025.08.13

2025年7月30日、医学誌『Journal of Thoracic Oncology』にて、治療歴のあるHER2変異陽性転移性非小細胞肺がんに対するエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)の有効性・安全性を検討した多施設共同第2相DESTINY-Lung02試験の最終解析結果が報告された。

試験デザイン

対象

治療歴のあるヒト上皮成長因子受容体2(HER2)遺伝子変異陽性の転移性非小細胞肺がん患者

治療法(レジメン)

エンハーツ5.4mg/kg(n=102)または6.4mg/kg(n=50)

評価項目

主要評価項目:盲検下独立中央判定による確定客観的奏効率(cORR) 副次評価項目:治験責任医師評価によるcORR、病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、患者報告アウトカム(PRO)、安全性など

結果

エンハーツ5.4mg/kgは、既にHER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対して承認されている。 今回の最終解析では、主要解析から更に8ヵ月間の追加追跡のデータが報告された。

有効性

主要評価項目であるcORRは、5.4mg/kg群で50.0%(95%信頼区間:39.9–60.1%)、6.4mg/kg群で56.0%(95%信頼区間:41.3–70.0%)であった。 また、DORの中央値は、5.4mg/kg群で12.6ヵ月に対して6.4mg/kg群で12.2ヵ月、PFSの中央値は10.0ヵ月に対して12.9ヵ月、OSの中央値は19.0ヵ月に対して17.3ヵ月であった。 奏効は、前治療の数、PD-(L)1阻害薬治療歴の有無、ベースライン時の脳転移の有無にかかわらず、両群に認められた。

安全性

グレード3以上の治療関連有害事象(TEAE)の発現率は、5.4mg/kg群で39.6%に対して6.4mg/kg群で60.0%であり、最も多く認められた症状は悪心(5.4mg/kg群で67.3%、6.4mg/kg群で82.0%)であった。 間質性肺疾患(ILD)の発現率は、5.4mg/kg群で14.9%に対して6.4mg/kg群で32.0%であった。ILDのほとんどがグレード1または2であったが、各群で1例のグレード5が報告された。 PROに基づく生活の質(QOL)評価の結果、治療中のQOLは両用量群ともに維持されていた。

結論

DESTINY-Lung02試験の最終解析結果から、治療歴のあるHER2変異陽性非小細胞肺がんに対して、エンハーツは高く持続的な効果があることが示唆された。特に5.4mg/kgでは、より良好な効果と安全性プロファイルを示し、この集団における標準治療としてのエンハーツの使用を裏付けるものである。 参照元: Final analysis results and patient-reported outcomes from DESTINY-Lung02-a dose-blinded, randomized, phase 2 study of trastuzumab deruxtecan in patients with HER2-mutant metastatic non-small cell lung cancer(J Thorac Oncol. 2025 DOI: 10.1016/j.jtho.2025.07.129.)
ニュース 肺がん HER2エンハーツトラスツズマブ デルクステカン非小細胞肺がん

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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