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HER陽性炎症性乳がんに対する術前療法へのアントラサイクリン系抗がん剤の追加、病勢コントロールを改善する可能性 Breast Cancer Research and Treatmentより

[公開日] 2025.08.15[最終更新日] 2025.08.14

2025年8月2日、医学誌『Breast Cancer Research and Treatment』にて、HER陽性炎症性乳がんに対する術前療法へのアントラサイクリン系抗がん剤の追加効果を検討した後ろ向き研究の結果が報告された。

試験デザイン

対象

2014年から2021年の間に、MDアンダーソンがんセンター、IBCネットワーク施設、ダナ・ファーバーがん研究所でHER2陽性炎症性乳がんと診断され、術前療法と胸筋温存乳房切除術を受けた患者

治療法(レジメン)

アントラサイクリン系非併用群:ドセタキセル、カルボプラチン、トラスツズマブ、ペルツズマブ(n=39) アントラサイクリン系併用群:ドセタキセル、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ドキソルビシン、シクロホスファミド(n=62)

評価項目

主要評価項目:病理学的完全奏効(pCR) 副次評価項目:局所または領域再発までの期間(TLRR)、無イベント生存期間(EFS)、および全生存期間(OS)など

結果

有効性

主要評価項目であるpCR率は、両群で有意な差が見られなかった(アントラサイクリン系非併用群で48.7%に対して併用群で53.2%、p=0.659)。これは、年齢とホルモン受容体陽性率で調整した多変量解析でも同様の傾向を示した。 一方、副次評価項目であるTLRRは、アントラサイクリン併用群で有意な延長が認められた(ハザード比:0.279、95%信頼区間:0.102-0.765、p=0.0131)。 また、EFSに関しても、アントラサイクリン併用群で有意な改善が認められた(ハザード比:0.462、95%信頼区間:0.228-0.936、p=0.032)。 OSは両群で差を認めなかった。

安全性

結論

HER2陽性炎症性乳がんに対する術前療法としてのアントラサイクリン系抗がん剤の併用は、pCR率には影響しないものの、病勢コントロール期間(TLRR、EFS)を改善する可能性が示唆された。 参照元: Neoadjuvant HER2-targeted regimens with or without anthracyclines for HER2-positive inflammatory breast cancer: a multicenter retrospective study(Breast Cancer Res Treat. 2025 DOI:10.1007/s10549-025-07795-3)
ニュース 乳がん 炎症性

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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