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EGFR-TKI薬剤耐性を獲得したがんに効果が期待されるタグリッソ。1年で約1万人に恩恵
日本において年間死亡者数が73,000人に上る肺がん。そのうち、8~9割を非小細胞肺がんが占め、さらに、5~6割が非扁平上皮非小細胞肺がんが占める。そして、非扁平上皮非小細胞肺がんのうち、5~6割の方がEGFR変異が認められ、ゲフィチニブ(イレッサ)などのEGFR-TKIが効果が認められる。
副作用が少ないように設計されているタグリッソ
タグリッソは、薬剤設計時から「野生型のEGFR(がん化には関係のないEGFR)」には結合しないように設計された。 これまでのEGFR-TKIの安全性に関する懸念点は、EGFR野生型にも結合してしまうため、間質性肺炎等の毒性が発現することである。 一方、タグリッソは野生型のEGFRには結合しづらいため、安全性への懸念は少ないとされている。事実、前述の臨床試験では、グレード3(中等度から重度)以上の副作用は1割程度にしか発現しておらず、通常のEGFR-TKIよりも少ないことが示されている。しかしながら、日本人に関しては、グレード3以上の副作用が3割程度発現しており、その原因はわかっていない。患者がよく理解をして、使用することが必要
アストラゼネカ社は、安全性対策の強化体制をしくため、今後、3,000人もの使用成績調査を実施する他、以下の施策を行う。重症副作用予防・対応を可能とする環境整備
タグリッソを納入する施設には、24時間患者からの連絡を受けることが出来るなどの「施設要件」と、肺がんの化学療法に十分な経験があるなどの「医師要件」を設定し、納入先を限定するとのこと。
患者用のツールを作成
アストラゼネカ社は、タグリッソを使用する患者用のツールを様々作成。「薬剤説明冊子」、「服薬手帳」および「(他院等に通院したときに提示する)注意喚起カード」である。そして、タグリッソ患者相談窓口を24時間体制で運営する。


EGFR変異陽性患者に対する今後のアプローチ
リキッドバイオプシー検査の確立が急務
タグリッソは、T790M変異が確認された患者を対象とする薬剤である。すなわち、EGFR-TKI耐性後に、腫瘍組織を採取することが必要であり、ガブリエル氏および大江医師は「一次治療後の全ての患者が組織を採取できるわけではなく、その点が、この薬剤の医療のボトルネックになるであろう」と話された。 筆者としては、血液中のRNAより変異を定量または定性するリキッドバイオプシーによる検査の確立が急務であると言えると考える。初回治療としてのタグリッソの使用
現在、初回治療としてタグリッソを使用する第3相臨床試験(FULAURA試験)が実施中である。AURA試験の初回治療の方のデータでは、タグリッソを初回治療時に使用した場合の無増悪生存期間(病態が進行するまでの期間)の中央値は19.7か月、奏効率(腫瘍が一定以上縮小した方の割合)は77%と、期待ができるデータであるとのこと。ただし、このデータは第1相試験のサブ解析データであり、第3相試験であるFULAURA試験の結果が待たれる。 その他、術後補助化学療法としてタグリッソを使用する臨床試験(ADAURA試験)も実施中とのことである。 AZD9291 Versus Placebo in Patients With Stage IB-IIIA Non-small Cell Lung Carcinoma, Following Complete Tumour Resection With or Without Adjuvant Chemotherapy (ADAURA)(サイト外:Clinical trials.gov)タグリッソ使用後の変異 C797S変異に対応する薬剤開発
タグリッソに対する薬剤耐性機構として、C797S変異という二次変異の存在が明らかになってきている。具体的な言及はされていないが、アストラゼネカ社はこういった変異もターゲットとしての研究開発を進めているとのことであった。
