オプジーボを使用したい全ての肺がん患者さんへ 肺癌学会が書面による’お願い’を発表


  • [公開日]2015.12.18
  • [最終更新日]2017.11.13[タグの追加] 2017/11/13

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■この記事のポイント
オプジーボの肺がん承認追加を受けて、日本肺癌学会が患者宛て文書にてお願いを明記。
・オプジーボは期待はされているが、過剰な期待にはご注意を。。。
・オプジーボと各種薬剤との併用は安全性有効性は確認されていない。使用するなら、設備が整った病院で専門医とよく相談を。。。


12月18日、日本肺癌学会は、肺がんの患者さん・ご家族・関係者宛てに「抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)についてのお願い」を発表しました。

オプジーボは、免疫チェックポイント阻害薬と言われる薬剤で、リンパ球のがん細胞への攻撃力を高める作用があります。初回治療後に再発した際に行われる二次治療において従来の抗がん剤であるドセタキセル(タキソテール)よりも優れた効果が発揮することが、肺扁平上皮がんに対するチェックメイト017試験と非扁平上皮非小細胞肺がんに対するチェックメート057試験という2つの第3相臨床試験にて証明されました。

また、通常の抗がん剤でみられるような嘔吐や脱毛などはみられずに、一般的な副作用は軽いことが示されています。

こういった結果の発表が、一般の方に向けにも報道されており、12月17日の「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」への適応拡大を待ち望んでいた方も多いと考えます。

しかしながら、2002年に夢の新薬とマスコミに称されて登場した分子標的薬であるゲフィチニブ(商品名イレッサ)の発売直後に、副作用として間質性肺炎が多発して合計で800名以上の患者さんが亡くなられたことを、教訓としなければならないとしています。

そこで、日本肺癌学会は、患者さん、ご家族および関係者に以下の点を伝えています。

オプジーボは全ての患者さんに有効な「夢の新薬」ではない

肺扁平上皮がんを対象としたチェックメイト017試験での奏効率(各腫瘍の直径の合計が30%以上縮小する割合)は20%となります(ドセタキセルは9%)。同様に、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象としたチェックメイト057試験での奏効率は19%となります(ドセタキセルは12%)。
→このことを裏返すと、約8割の方は効果が乏しい(30%以上の腫瘍縮小は認められなかった)こととなります。

オプジーボにも副作用があり、重篤になる場合もある

上述の2つの臨床試験にて何らかの副作用があった割合は、017試験では58%、057試験では69%でした。オプジーボは免疫系に作用する薬剤となるため、免疫系の副作用が発現し、以下の通りでした。
図6
この2つの試験では副作用により死亡された方はいませんでしたが、他の試験では死亡された方もいます。また、新しいメカニズムであるため、肺がんの専門医も使用経験が少ないだけに注意が必要となります。

オプジーボが使えない患者が存在

免疫系に作用する性質より、膠原病やリウマチ、間質性肺炎の患者は使用できません。これらの患者は重篤な副作用が発生するリスクが高いからです。また、他の薬剤との併用についての安全性が確認されていません。よって、併用療法は、安全性管理体制が整った医療機関において臨床試験として実施されるもの以外は受けるべきではないとのことです。

最後に、「薬は諸刃の剣であることを忘れずに、肺がん治療に精通した医療機関にて、冷静に得られる利益と危険性のバランスについて検討した後に初めて使用されるべきである」と、締めくくっています。

抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)についてのお願い(日本肺癌学会)

以上が肺癌学会の「お願い」の内容となりますが、もう少し踏み込んで記載させて頂きます。

1つに、上記の臨床試験は「二次治療」の結果であることあげられますが、保険適応は「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」であり、進行再発の肺がんであれば誰でも使用できるということになります。しかし、例えば初回治療におていの効果と安全性はわかっていないのです。

2つに、オプジーボを「餌」とした不確かな治療法との併用療法に騙されないようにする必要があります。Yahooで「オプジーボ 肺がん」と検索してみてください。オプジーボと独自な(不確かな)治療法との複合を宣伝している広告がたくさん出てきます。肺癌学会も書面でも述べているように、これらの安全性と有効性はわかっていません。
また、これらの広告を掲載している医療機関は、使用するオプジーボの用法用量に問題がある可能性があります。オプジーボの肺がんにて適応された用法用量は「体重1㎏あたりにオプジーボ3mgを2週間間隔で投与」となります。上述している臨床試験のデータも、この用法用量にて結果が出ています。しかしながら、これらの医療機関がこの用法用量を守っているかというと、そうでもありません。オプジーボ承認前に自由診療にて行っている医療機関のオプジーボの量は、1回の用量が非常に少量というものや、オプジーボは1回しか投与しないというものもありました。

以上、こういった点も留意もご留意ください。

【非小細胞肺がんに対するオプジーボの最新情報(2016/5/25追記)】
非小細胞肺がん 免疫チェックポイント阻害剤オプジーボ 2年生存期間においても有効性を示唆(オンコロニュース20160525)

記事 可知 健太

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