5月29日~6月2日にシカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO:あすこ)のAnnual Meeting(年次会議)にて、「免疫チェックポイント阻害薬である抗‐PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)の進行肺がん(正確には
既に薬剤治療されている進行肺がん(非小細胞非扁平上皮肺がん)患者を対象に、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名オプジーボ)がドセタキセル(商品名タキソテール)よりも生存期間を延長できることを示した比較した第3相臨床試験(CheckMate-057試験)の詳細情報が明らかになりました。
本試験は、ステージ3B~ステージ4の肺がん患者に対してプラチナ系薬剤(商品名:パラプラチン、シスプラチンなど)を含む併用薬剤治療を受けた方を対象に実施されました。
582人が2週おきにニボルマブを投与される方(292人、ニボルマブ群)と、3週おきにドセタキセルを投与される方(290人、ドセタキセル群)に登録され、両群の生存期間にて効果を確認するのが主な目的の試験でした。
効果が認められた場合、長期間持続する
結果、以下の通りであることが発表されました。
【生存期間の中央値(中央値:一番真ん中の人の値。例えば7人いた場合4番目の方の値)】
ニボルマブ群:12.2か月 vs ドセタキセル群:9.4カ月 *統計学的にも差があると証明(p=0.0015)
【1年生存率(1年間生きられた方の割合)】
ニボルマブ群:51% vs ドセタキセル群39%
【腫瘍縮小効果】
ニボルマブ群:19.2% vs ドセタキセル群:12.4% *統計学的にも差があると証明(p=0.0246)
【効果が認められた方の薬剤効果持続期間の中央値】
ニボルマブ群:17.1カ月 vs ドセタキセル群:5.6カ月
【がん細胞にPD-L1というタンパク質が多く存在していた場合(効果が高いと予想される患者の中央値)】
ニボルマブ群:生存期間中央値は17カ月超えであり、死亡リスクを41%~60&の死亡リスクを低下
【副作用(薬剤に関連したCTCAEグレード3-5(中等度から重度)の副作用)】
ニボルマブ群:10.5%(うち治療関連して亡くなられた方0人) vs ドセタキセル群:53.7%(うち治療関連して亡くなられた方1人)
【副作用によって治療が困難となったからの割合】
ニボルマブ群:4.9% vs ドセタキセル群:14.9%
Paz-Ares氏は「重要なのは、PD-L1はニボルマブの効果を予測する因子であることが明らかになったことである」と述べ、ASCOエキスパートの Gregory A. Masters氏は「たった5年前、肺がんに対する効果的な免疫療法は不可能と考えられていたが、今日、この治療をもって、それが有効性の観点からもクオリティーオブライフ(生活の質)の観点からも標準的な治療を上回った」と述べました。
なお、日本は参加していませんが、同剤の第2相試験の結果がASCOにて発表されており、それとは別に第1相試験を実施中です。
この試験の公開情報はコチラ(JAPIC-CTIに飛びます)
参照
The ASCO POST(英語)
ASCO2015 Abstract(英語)
この試験の情報:Clinical trials.gov(英語)
*わかりやすくするためにPFSや治験終了後の治療については言及していません。
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肺がん 進行肺がん対象抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)の第3試験早期中止 生存期間で効果を証明(2015/4/20)
カチ
【免疫チェックポイント阻害薬とは?】
免疫システムが暴走を防ぐために抑制するタンパク質が免疫系の細胞に発現して制御します。これを免疫チェックポイントといいます。がん細胞にもこのタンパク質が発現するためにがん細胞に対する免疫システムが機能しなくなります。免疫チェックポイント阻害薬はこの制御機能を抑制するため、がんに対する免疫システムを作動させることが期待できます。
【肺がんの組織型について】
【ASCO(あすこ)とは?】
American Society of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会)の略称で、世界最大のがん学会となります。年に1回開かれるこの会議では、世界中から約25,000人ものオンコロ ジストが参加され、5000以上にのぼる研究結果が発表されます。