※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
いくつかのがん種で寛解も認められたが、末梢神経障害が長い影を落としている。
米Incyte社は、経口免疫チェックポイント阻害薬というニッチな分野では、有力候補とは考えられていなかったが、2021年11月10日~14日に開催されたSITC(米国がん免疫療法学会)年次総会でそのアピールに打って出た。低分子のPD-L1阻害薬「INCB086550」は、有望な薬理作用(細胞内へのPD-L1受容体内在化)を示し、一部の患者で有効性が認められた。
残念ながら、経口免疫チェックポイント阻害薬としては初期の臨床研究であり、毒性の値が高く、INCB086550に治療可能な濃度域があるのか、確立している複数のモノクローナル抗体に対抗できるのかどうかは、疑問が残る。Incyte社は、有害事象は対応可能であると主張し、同社のパイプラインとしてほかに2つの低分子化合物の開発が進んでいる。
この2つの化合物とは、「550」と構造的に類似している「INCB099280」と、そうではない「INCB099318」だ。いずれも来年には臨床データが得られる予定で、その時点でIncyte社はこれら3つのプロジェクトのうち1つまたは複数のプロジェクトを承認に向けて進めるかどうかを決定するとしている。
8名の被験者が寛解ただし、現時点で投資家は「550」のデータしか持っていない。具体的には、SITCで発表された第1相の用量漸増・拡大試験において、4月9日のカットオフ時で評価可能であった被験者68人の結果だ。その結果、肛門扁平上皮がん、卵巣がん、膣がん、MSI-H/dMMRがんにおいて、8名が寛解し、そのうち7名は免疫療法(IO)未治療の患者であり、データカットオフ時点で5名の寛解が続いていた。
しかし、悪いニュースとして、免疫チェックポイント阻害薬の典型的な治療関連の有害事象(AE)とは別に、末梢神経障害が報告された。この有害事象は、安全性評価の対象となった79名の患者のうち10名に認められ、4例はグレード3であり、ほとんどが用量変更や投薬中止、ステロイド投与で対処された。
この発見は、「550」の忍容性に疑問を投げかけるものであると、みずほ証券のアナリストは述べている。
Incyte社は電話会議で、経口免疫チェックポイント阻害薬は、現在のモノクローナル抗体の静脈注射よりも投与が容易であり、コスト削減が可能で、他の経口薬との併用も比較的容易であると主張した。
しかし、米国では7種類のモノクローナル抗体が承認されており、米ファイザー社、米メルク社、スイス・ロシュ社、英ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の4社が皮下投与(SC)に迅速に取り組んでいるため、安全性プロファイルがあまり好ましくない経口薬は印象に残りにくい可能性があり、これが現在、Incyte社の「550」の心配事となっている。
それにもめげず、同社はこれまでにそれぞれ“30名程度”と“10名程度“の患者が登録された「280」と「318」の臨床試験を強調し、来年には「550」のアップデートとともにデータが得られる予定だ。Incyte社によると、「280」と「318」は腫瘍縮小の兆候が見られ、どちらも末梢神経障害は見られないとのことだ。
Source: Incyte presentation.同社はまた、400mgの間欠投与を検討するなど、「550」の投与量の最適化に取り組んでいると述べ、このプロジェクトが臨床反応を示した初の経口抗PD-L1治療薬であることを強調した。
これは、数年前にはこの分野で注目されていなかったグループ会社にとって、非常に大きな功績だ。同分野で、多くの人が臨床をリードすると考えていたのが米Curis社のCA-170だったが、このVISTA/PD-L1アンタゴニストは、昨年に第1相試験を完了したにもかかわらず、まだ臨床的に意義のあるデータを得ていない。
しかし、経口免疫チェックポイント阻害薬の領域は、Incyte社の評価額の大きな部分を占めていないため、NASDAQでは、株価は変動しなかった。
■出典 SITC 2021 – Incyte unveils its oral checkpoint blocker