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免疫チェックポイント阻害薬の効果を高める新種の腸内細菌「YB328株」を発見、樹状細胞を介して腸から離れたがんの免疫環境に影響

[公開日] 2025.07.15[最終更新日] 2025.07.15

国立がん研究センターは7月15日、がん免疫療法(PD-1阻害薬)の効果を高める新種の腸内細菌「YB328株」を同定し、腸内細菌が身体の離れた部位にあるがんの免疫応答に影響を及ぼす詳細なメカニズムを解明したことを発表した。 この研究成果は、同センター研究所腫瘍免疫研究分野を中心とする研究チームによるもので、英国科学雑誌「Nature」に現地時間7月14日付で掲載された。 免疫チェックポイント阻害薬に代表されるがん免疫療法は、患者によって治療効果にばらつきがあり、また長期的な治療効果が得られる患者が約20%にとどまることが課題であった。これまでに、腸内細菌がその治療効果を左右する可能性が示唆されてきたものの、腸に存在する細菌がなぜ肺や腎臓など腸ではない臓器のがんに影響を及ぼすのか、その詳細なメカニズムは不明であった。 研究チームは、非小細胞肺がんおよび胃がん患者計50名(ディスカバリーとバリデーションを含め200例近くを調査)を対象に、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果と腸内細菌叢の関係を解析した結果、治療が奏効した患者群ではルミノコッカス科に属する細菌、特に新種のYB328株が多く存在することを発見した。このYB328株は世界で初めて単離・培養された新規細菌株である。YB328株を保有する患者は、そうでない患者に比べ無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、がんを攻撃する免疫細胞であるPD-1陽性CD8陽性T細胞が腫瘍内に多く浸潤していることが明らかになった。 (画像は記者会見資料より) B328株が免疫応答に影響を与えるメカニズムとして、まず、YB328株が腸内で免疫応答の司令塔である樹状細胞を活性化させる。特に、がん免疫に関わるCD103陽性樹状細胞(cDC1)の分化・活性化を効率よく促進することが判明した。この活性化には、YB328株が持つ特徴を認識するToll様受容体(TLR)シグナル経路が中心的な役割を果たしている。 活性化された樹状細胞は、腸から離れた所属リンパ節やがん組織へと移動することが、マウスモデルを用いた可視化実験によって世界で初めて確認された。がん組織に到達した樹状細胞は、がん細胞を攻撃するキラーT細胞(PD-1陽性CD8陽性T細胞)の活性化を促進。YB328株によって刺激された樹状細胞は、T細胞との結合時間が長く、共刺激分子(CD86)や抗原提示分子(MHC-I)の発現が高まることで、T細胞への強いシグナル伝達が可能になる。これにより、T細胞は多様ながん抗原、特に活性化が難しい低親和性・低濃度のがん抗原に対しても効果的な免疫応答ができるようになるという。さらに、YB328株は腸内細菌叢の多様性を高め、これにより樹状細胞がYB328株以外の他の腸内細菌からの刺激も受けやすくなることで、免疫活性化をさらに向上させる可能性が示された。 今回の研究では、これまでPD-1阻害薬の効果が認められなかった患者の治療効果をYB328株が向上させる可能性が示された。また、すでに治療効果が認められる患者にも、さらなる治療効果の向上が期待できるという。さらに、非小細胞肺がんや胃がん以外にも、悪性黒色腫(メラノーマ)、腎細胞がん、食道がんなどさまざまながん種で同様の傾向が確認されているという。 YB328株の臨床応用には、投与量や作用メカニズムの詳細な解明など、さらなる研究が必要であり、今後は、国立がん研究センター発のスタートアップ企業が大量培養および人への経口投与に向けた検討を進めるという。なお、YB328株は、日本人のおよそ20~30%が保有している菌株であるが、特定の食品摂取によって増えるといった傾向は確認されていないという。 参照元: 国立がん研究センター プレスリリース
ニュース YB328免疫チェックポイント阻害薬腸内細菌

茂木 孝裕

オンコロサイト・コンテンツ編集者。法政大学社会学部メディア社会学科卒業後、広告代理店、スポーツ新聞社などを経たのち、医療情報サイトで編集・ライター業務に約6年従事。2019年よりクリニカルトライアル(現3Hメディソリューション)/オンコロに参加。オンコロジー領域以外の医療情報も幅広く取材。

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