(画像は記者会見資料より)
B328株が免疫応答に影響を与えるメカニズムとして、まず、YB328株が腸内で免疫応答の司令塔である樹状細胞を活性化させる。特に、がん免疫に関わるCD103陽性樹状細胞(cDC1)の分化・活性化を効率よく促進することが判明した。この活性化には、YB328株が持つ特徴を認識するToll様受容体(TLR)シグナル経路が中心的な役割を果たしている。
活性化された樹状細胞は、腸から離れた所属リンパ節やがん組織へと移動することが、マウスモデルを用いた可視化実験によって世界で初めて確認された。がん組織に到達した樹状細胞は、がん細胞を攻撃するキラーT細胞(PD-1陽性CD8陽性T細胞)の活性化を促進。YB328株によって刺激された樹状細胞は、T細胞との結合時間が長く、共刺激分子(CD86)や抗原提示分子(MHC-I)の発現が高まることで、T細胞への強いシグナル伝達が可能になる。これにより、T細胞は多様ながん抗原、特に活性化が難しい低親和性・低濃度のがん抗原に対しても効果的な免疫応答ができるようになるという。さらに、YB328株は腸内細菌叢の多様性を高め、これにより樹状細胞がYB328株以外の他の腸内細菌からの刺激も受けやすくなることで、免疫活性化をさらに向上させる可能性が示された。
今回の研究では、これまでPD-1阻害薬の効果が認められなかった患者の治療効果をYB328株が向上させる可能性が示された。また、すでに治療効果が認められる患者にも、さらなる治療効果の向上が期待できるという。さらに、非小細胞肺がんや胃がん以外にも、悪性黒色腫(メラノーマ)、腎細胞がん、食道がんなどさまざまながん種で同様の傾向が確認されているという。
YB328株の臨床応用には、投与量や作用メカニズムの詳細な解明など、さらなる研究が必要であり、今後は、国立がん研究センター発のスタートアップ企業が大量培養および人への経口投与に向けた検討を進めるという。なお、YB328株は、日本人のおよそ20~30%が保有している菌株であるが、特定の食品摂取によって増えるといった傾向は確認されていないという。
参照元:
国立がん研究センター プレスリリースあなたは医師ですか。



