(画像はリリースより)
また、生殖細胞系列病的バリアントを有する症例(14例)に発生した肺腺がんの体細胞変異 (後天的に生じる遺伝子変異)の特徴を調べた結果、BRCA2遺伝子の病的バリアントを有する肺腺がんでは、乳がん、卵巣がんなどでみられるような相同組み換え修復機構の破綻が3例中2例で観察された。これは、BRCA2遺伝子の病的バリアントを有する肺腺がんにおいて、DNA修復経路を標的とするPARP阻害剤が有効である可能性を示唆している。
更に、肺腺がんの若年発症例(57例)と非若年発症例(1,280例)の腫瘍を用いた全エクソンシークエンス解析を行った結果、がん細胞に生じているドライバー遺伝子変異の分布に大きな違いが認められた。具体的には、若年発症例では非若年発症例と比べて、分子標的治療の効果の高いALK融合遺伝子やRET融合遺伝子の陽性割合が高い傾向を示した。
最後に、肺腺がんの若年発症例における生殖細胞系列病的バリアントを調べるため、肺がん症例(10,302名)と非がん症例(7,898名)を対象に遺伝性腫瘍やDNA修復メカニズムに関連する450個の遺伝子を解析した結果、DNA修復に関わる遺伝子ALKBH2の機能欠失型バリアントが、肺腺がんの若年発症リスク因子として同定された。
今回の研究により、若年発症の肺腺がん症例では、環境要因だけでなく遺伝的要因が関わっており、生殖細胞系列病的バリアントにも注視して診療することが重要であることが示唆された。また、遺伝的要因のある肺腺がん症例では、腫瘍にも特徴的な変化が見られ、分子標的治療の対象となり得ることも示された。以上の結果から、今後の課題として、遺伝性腫瘍の患者さんが抱える課題等を共有し、遺伝医学の知見を踏まえた新しいがん医療を築いていくことの必要性が明らかとなった。
参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
あなたは医師ですか。



