※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
独ベーリンガーインゲルハイム社がスイス・NBEセラピューティクス(NBE-Therapeutics)社を買収、わずか1か月強の内にRor1にフォーカスした企業が2社買収されることに。
何年も待ち望んだ新たな免疫腫瘍学のターゲットの取引が、2つ同時にやってきた。米メルク社が米ベロスビオ(Velosbio)社を28億ドルで買収してからわずか1カ月後、ベロスビオ社の競合に当たるNBE社がベーリンガーインゲルハイム社に15億ドルで買収されたのだ。
ターゲットとなった両社はいずれも非公開企業であり、複数の腫瘍型に発現していると考えられているRor1を標的とした抗体-医薬複合体(ADC)の開発に注力している。上場企業である米オンクターナル(Oncternal)社にとって、この動きは非常に重要な意味を持つ。同社はRor1を標的とするネイキッド抗体を別途開発しており、ベロスビオ社の買収以降、その株価は4倍に上昇している。
ベロスビオ社とオンクターナル社は先日のASHカンファレンスで初期臨床データを発表したが、ベーリンガー社は臨床結果を見ることなくNBE社の買収に踏み切った。NBE社の抗Ror1抗体-薬物複合体(ADC)であるNBE-002は、10月末にトリプルネガティブ乳がんやその他のがんを対象とした初のヒト臨床試験に入ったばかりだ。
ベーリンガー社が前臨床データを見て賭けに出ていることを考えると、12億ユーロ(15億ドル)の買収価格の多くは将来の臨床的成功に左右されるものと予想するのが論理的であろうが、その金額の内訳は今のところ明らかになっていない。
NBE社は2012年の設立以来、ひそかに活動を続けてきた。最初の数年間を助成金による資金調達で乗り切った後、2018年にはデンマークのノボ・ノルディスク社のベンチャー投資部門が2200万ドルのシリーズB調達のうち半分を提供するなど、NBEは3ラウンド、合計7000万ドルの資金を調達した。ベーリンガー社もまた初期の投資家だった。
M&Aの引き金を引くようにベーリンガー社を駆り立てた臨床的な要素があるとすれば、それはベロスビオ社がASHで発表したVLS-101の結果だろう。これらの結果では、多くの前治療歴を有する20人のリンパ腫患者における全奏効率(ORR)は55%で、驚くほどクリーンな安全性プロファイルを示していた。
オンクターナル社は、シルムツズマブ(Cirmtuzumab)に関する2つのポスター発表をASHで行い、そのうちの1つは15人のマントル細胞リンパ腫患者で87%、49人の慢性リンパ芽球性白血病患者で92%のORRを示した。ただし、これがイムブルビカ(一般名:イブルチニブ)との併用であったのに対し、ベロスビオ社のデータはVLS-101単剤療法に関するものだった点は大きな違いと言える。
両社の関連性
興味深い関係性がある。メルク社に買収された当時のベロスビオ社の最高経営責任者であったデーブ・ジョンソン氏は、以前オンクターナル社の会長を務めており、ベロスビオ社のためにADCとバイスペシフィック抗体としてのRor1標的薬の開発権を切り開いていた。
ベーリンガー社は通常、呼吸器系の医薬品と関連しているが、がん領域でも存在感を示しつつあることを強調しておきたい。例えば、抗PD-1抗体の自社開発に取り組んでいるほか、事業開発活動としては2018年に仏OSEイムノセラピューティクス(OSE Immunotherapeutics)社との契約により得たCD47/Sirp-alphaのようなホットな領域をターゲットにしている。
驚くべき点は、Ror1を標的とした開発が、おそらく現在に至るまで、目立った成功なしに何年も続いていることだ。米ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、米ジュノ・セラピューティクス(Juno Therapeutics)社の抗Ror1 Car-TプロジェクトであるJCAR024を継承したが、大きな進歩はなかった。一方、米アプテボ(Aptevo)社と米マクロジェニックス(MacroGenics)社は、Ror1に対するバイスペシフィック抗体を放棄したようだ。
ただ、Ror1を標的とした別のADCである韓国・レゴケム(Legochem)社のLCB71は、10月にわずか1000万ドルで中国・シーストーン(Cstone)社にライセンスされた。もし、Ror1の効果の秘訣がADCの種類にあるのであれば、ベーリンガー社はこの領域にいる小さな3社のうち、2番手を連れ出したことになる。