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保険適応外薬を適切な患者さんに届けるために:日本と海外との比較から考える現状と課題 第22回日本臨床腫瘍学会学術集会より
[公開日] 2025.03.18[最終更新日] 2025.03.18
3月6日~8日、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO 2025)が神戸コンベンションセンターで開催された。「会長企画シンポジウム 2」のセッションでは、「ゲノム医療で推奨された保険適応外薬をどのように使うか?」と題して池田貞勝先生(東京科学大学)が発表した。
がんゲノムプロファイリング(CGP)検査が2019年に保険収載されて以来、実臨床でのがんゲノム医療が普及する反面、治療に紐づく遺伝子異常が検出されても、実際に使用できる薬剤が少ない現状がある(4割近くで遺伝子異常が見つかっても、実治療薬に辿り着くのは9.4%とされている)。
日本における薬剤へのアクセス方法としては、保険収載薬の使用、治験や先進医療、患者申出療養等があるが、治験は的確基準や実施施設へのアクセスにハードルがあること、先進医療等は実施数が少ないこと、患者申出療養は新規の立ち上げに時間がかかることなど、それぞれに多くの課題がある。
一方、海外に目を向けると、最近では30.2%が保険適応内で治療でき、また池田先生自身の米国での経験では、CGP検査後の薬剤到達率が約50%に達する施設もあるという。その理由のひとつは、日本と比較して米国食品医薬品局(FDA)で承認されている薬剤が多いことだ。「日本においても使える保険収載薬を増やすのが王道の解決策です」(池田先生)
その他の観点では、まず米国と日本では臨床試験の実施件数が大きく異なる点を池田先生は強調。日本で実施されている臨床試験が465件であるのに対し、米国では8,030件と日本の約20倍だ。また米国では、既承認薬の適応外使用が可能であり、NCCNガイドラインに掲載されているエビデンスレベルの高いものに関しては、保険でカバーされる点も日本と異なる。
その他、日本にはない制度として、米国では既承認薬に関しては、「Compassionate Use(患者さんが死にいたる病気、標準治療や治験ではカバーできない、製薬会社内で決まっている基準に合致などの条件を満たす場合、製薬企業から薬剤が無償提供される)」、開発中の薬剤に関しては、「SinglePatient IND/Emergent IND」などの制度も使用可能だ。特にCompassionate Useに関して池田先生は、とてもスピーディーなシステムであり、薬剤使用後の効果や安全性データも求められることがない、と説明。しかしこれを日本でやろうとすると、混合診療扱いになること、公正取引委員会の規制のハードルがあることなどの課題がある。
「日本の場合、薬剤の無償提供があるのは治験終了後の承認申請期間のみに限られますが、米国では未承認薬から既承認薬まで幅広くできる制度があります。日本でも規制の緩和や新しい仕組みができると、適応外使用の可能性が広がると考えられます」(池田先生)
将来展望として池田先生は、長期的な観点では保険収載薬を増やしていくことが最善だとしつつ、短期的な観点では、バスケット試験のような網羅的な試験デザインによる薬剤開発の加速、分散型臨床試験(DCT)の導入による治験へのアクセスの改善、(CGP検査の結果に合致する)治験検索システムの改善、薬剤へのアクセスの改善(米国では薬剤調達専門家が担当)、米国のような未承認薬のCompassionate Useの解禁などを解決策として挙げた。「海外と比較して日本においてはまだ多くのハードルがありますが、今回のセッションをきっかけに皆で議論していくことで、乗り越えられる壁だと思っています」(池田先生)
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