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高齢がん患者が自分の意志で治療や生き方を決定するために ~第62回日本癌治療学会学術集会より~
[公開日] 2024.10.30[最終更新日] 2024.11.28
10月24日~26日、第62回日本癌治療学会学術集会が福岡コンベンションセンターで行われた。同学術集会の「領域横断ワークショップ1:高齢がん患者に対するがん診療」および「がん医療の基盤整備に対する助成プロジェクト」のセッションの中で、「高齢がん患者への意思決定支援」をテーマに小川朝生先生(国立がん研究センター東病院)が発表した。
小川先生によると、高齢化社会が進む日本では、全死亡症例に対する高齢者が占める割合は増加傾向が続いており、特に新規がん罹患者の72%が65歳以上の高齢者である。
高齢者におけるがん治療は、単なる症状緩和だけでなく、高齢者特有の機能低下や合併症も含めたマネジメントが必要であること、加えて本人の意向、特にend of lifeも踏まえた議論も重要になることなど、一筋縄ではいかない。しかしこれまでの日本では、高齢患者の場合には家族などの第三者が意思決定をすることが当たり前とされてきたため、高齢者に対する意思決定の支援に関する議論がほとんどなされてこなかった。
このような背景のなか、本人と一緒に意思決定を進める方法を明記した日本で初めてのガイドライン「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」が2018年に発表され、高齢患者本人が決めること(治療方針など)をどのように支えるかということが重要視されるようになってきた。
小川先生は、この流れに伴い、高齢患者本人の意思決定能力が十分かどうか、認知症が見られる場合にどのように対応するか、という新たな課題が生まれつつある、と指摘。実際、進行がんの治療方針決定場面で34%が意思決定能力低下、予後が1ヶ月を切ると、約半数にせん妄などの認知機能障害が出てくる。また、がん拠点病院の約7割で院内での高齢患者さんへの支援が必要と考えているにも関わらず、実際に対応しているのは半数以下という報告もある。
そこで小川先生らは、患者の認知能力を最大限に活用し、意思決定プロセスを支援するために、高齢がん患者の診療特性を踏まえた適切な意思決定支援方法を実践するための教育プログラムを開発。適切な意思決定支援を実施するため、資材作成に加え、コアメンバーを養成し各施設の教育の中心を担うことを目的としている。
既にe-Learningと対面セミナーの実施が開始されており、がん領域に加えて、在宅看護や老年看護師などの参加者も多数登録しているとのこと。参加したメンバーがすぐに中心となって院内教育を進めていくことはハードルが高い、という懸念もあるようだが、フォローアップのプログラムも用意しつつ進めているとのことだ。
今後、高齢患者自身による意思決定の支援体制が整っていくことが期待される。
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