※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
新たなEGFRプロジェクトにおける初めてのデータによって同社の株価は236%急騰、では何が問題なのだろうか? 開発中の新薬の製造中止からわずか1年で企業を立て直すことは稀であるが、米Black Diamond Therapeutics社は昨日(6月27日)この快挙を成し遂げた。新たなリード化合物BDTX-1535に関する最初の臨床データが発表され、株価は236%上昇し、2021年10月以来の水準に達した。 このデータは開発初期のものであるという制約はあるが、Black Diamond社がBDTX-1535を肺がんの様々なEGFR遺伝子変異に作用する化合物として設計した、という前提を裏づけるものであると思われる。英アストラゼネカ社のブロックバスターであるタグリッソ(一般名:オシメルチニブ)に効果を示さなかった患者にも有効なチロシンキナーゼ阻害剤の開発競争が今、始まっている。 これはおそらく、昨日Black Diamond社が発表した第1相BDTX-1535試験のデータにおいて最も重要な点であり、これまでのところ同試験では比較的短期間に51名の患者を登録し治療を行っている。奏効したとされる6人の非小細胞肺がん(NSCLC)の患者はすべてタグリッソが無効であり、4人はアストラゼネカ社の薬剤(タグリッソ)を初回治療で使った症例、2人は更に化学療法/免疫チェックポイント阻害剤を受けた症例であった。 第4世代 Black Diamond社によると、BDTX-1535は第4世代のチロシンキナーゼ阻害剤で、脳への浸透性があり、変異型EGFRに対して共有結合活性を有する。ただし、第1相試験の被験者51名のうち27名が膠芽腫であったが、有効性に関するデータは提供されなかった。 その代わりに、同社は100-400mgのBDTX-1535を投与された21人のNSCLC患者に焦点を当て、それより少ない「治療量以下」の量を投与された3人を除外した。Black Diamond社はまた、有効性評価対象集団から9人のNSCLC患者を除外し、奏効率50%を主張しようとしたが、これは投資家が注意すべきごまかしであり、21人を分母とすれば奏効率は29%となる。 奏効した6人のうち5人は典型的なドライバーEGFR変異を有しており、かつてはアストラゼネカ社のイレッサ(一般名:ゲフィチニブ)の適用領域であったが、現在ではタグリッソが第一選択薬として使用されている。6人目はL747Pという珍しい内在性ドライバー変異を有しており、おそらくタグリッソの適応外投与を受け続けたのだろう。また、6例中4例に獲得耐性変異が認められた。 これはある程度、Black Diamond社の広範囲なEGFR遺伝子変異治療薬の効果を裏付けるものである。しかし、この試験ではT790m変異は除外されており、同社はBDTX-1535がここで活性を示すとは主張していない。T790mはイレッサ治療後に獲得されたEGFR変異で、タグリッソが最初に承認された領域であったが、タグリッソが初回治療での立ち位置を確立したことにより、その重要性は薄れてきているのかもしれない。