ベルゲンビオ社は夢見続ける、ジェンマブ社のAXL阻害薬が夢破れてもEvaluate Vantage(202011.25)より


  • [公開日]2020.12.17
  • [最終更新日]2020.12.17

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

デンマーク・ジェンマブ(Genmab)社は、ノルウェー・ベルゲンビオ(Bergenbio)社が全てを賭けるAxlキナーゼに対する抗体-薬物複合体の開発をストップ。

昨日(11月24日)発表されたジェンマブ社のエナポタマブ ベドチン(enapotamab vedotin)の開発中止は、抗がん作用メカニズムとしてAxlキナーゼを標的とすることの有用性について、さらなる疑問を投げかけることになるかもしれない。昨年の世界肺がん学会議で発表された同プロジェクトの第1/2相試験の結果が失望に終わったとき、すでに疑念は生じていた。

このアプローチに最も投資しているのはベルゲンビオ社である。同社は低分子化合物のベムセンチニブ(bemcentinib)を中心にAxlキナーゼ阻害薬の開発に全力を挙げている。とりわけエナポタマブは異なるモダリティを使用しているため、ジェンマブ社の今回の開発中止がベルゲンビオ社の方針転換を促す可能性は低いが、米バイオアトラ(Bioatla)社とスイス・ADCセラピューティクス(ADC Therapeutics)社の2社は、そうはいかないだろう。

エナポタマブと同じく、バイオアトラ社のBA3011とADC社のADCT-601は、それぞれ異なる細胞毒性ペイロードを有する抗体-薬物複合体である。バイオアトラ社は、2018年2月に肺がんに対する第1/2相試験を開始して以来、BA3011について多くを語っていないが、このプロジェクトは同社が今年、7250 万ドルのシリーズD投資を得た1つの動力源であった。同社は現在上場を計画している。

一方、ADC社はADCT-601で苦戦を強いられている。同グループのIPO資料によると、米FDAは同剤の安定性データを要求し、同社の新規リンカー技術と試験プロトコルに疑念を呈し、同剤の開発は保留されていた。

ADCT-601はADC社のパイプラインに見受けられるが、同剤の試験は現在「終了」と記されている

興味深いことに、ADC社は同剤のライセンスをベルゲンビオ社から受けている。ベルゲンビオ社は他にも第1相試験中の抗Axlネイキッド抗体であるティルベスタマブ(tilvestamab)も有している。

とは言え、ベルゲンビオ社は依然としてベムセンチニブにフォーカスしており、同剤を唯一の真に選択的なAxl阻害薬であると以前から主張していた。同剤は、急性骨髄性白血病(AML)に対する二次治療としての単剤療法が試験中であり、また今月の米国がん免疫療法学会議(SITC)では、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する二次治療としての同剤+キイトルーダ併用療法の結果が発表された。

これらの結果は、PD-(L)1阻害薬が効かない試験対象患者に対して、Axl阻害薬を投与することで免疫療法に対する抵抗性が逆転する可能性があるという理論を一定程度裏付けるものであった。一方で、ベルゲンビオ社は強力な対照群を用いた無作為化試験でこの仮説を検証するには至っていない。ベルゲンビオ社の選択性の主張にもかかわらず、ジェンマブ社も同様にエナポタマブが「Axl標的薬」と呼んでいた。

昨年の世界肺がん学会議では、ヒトを対象としたエナポタマブ初の臨床試験における重篤な有害事象の発生率は42%で、さまざまながんを持つ26人の被験者の全奏効率はわずか19%であったことが示された。昨日、ジェンマブ社は、拡大コホートにおいて開発を継続するための基準を満たさなかったと述べた。

にもかかわらず、Axl阻害薬は依然として関心を集めている。先週、米アラバイブ(Aravive)社は、卵巣がんの融合タンパク質AVB-500に関する主要試験の計画を明らかにした。AVB-500の開発が進めば、ベムセンチニブを抜いて、業界で最も開発が進んだAxl標的薬となるだろう。

また、9月には中国の民間企業であるアンハート・セラピューティクス(Anheart Therapeutics)社がAB-329の権利を第一三共から譲り受け、「強力で選択性の高いAxl阻害薬」と評している。それ以前には大日本住友が米トレロ(Tolero)社を2億ドルで買収し、デュベルマチニブ(dubermatinib)とSGI-7079という2つのAxlキナーゼ阻害薬を得た。

前者のデュベルマチニブはAMLや固形がんを対象とした臨床試験が行われているが、後者のSGI-7079はエナポタマブと同様に今やゴミの山となっている。

■出典
Bergenbio dream lives on, despite Genmab’s broken Axl

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