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リアルワールドデータから見えてきた高齢乳がん患者における治療と転帰の実態 第33回日本乳癌学会学術集会より

[公開日] 2025.08.01[最終更新日] 2025.07.28

7月10日から7月12日に、第33回日本乳癌学会学術集会(JBCS 2025)が、京王プラザホテルにて開催された。 シンポジウム12「高齢者に対する薬物療法(機能評価やチーム医療を中心に) 」のセッションの中で、【高齢転移性乳癌患者の治療と転帰-多施設後方視的コホート研究-】と題して、満枝怜子先生(相良病院 乳腺・甲状腺外科)が講演を行った。 高齢患者は、身体・認知機能の低下により標準療法を受けられないことも多く、その治療選択が難しい。また、高齢化が進む日本においては、治療の進歩に反して高齢患者の乳がん死亡数は緩やかな増加傾向にある。 このような背景の中、今回は高齢転移性乳がん患者の治療パターンと転帰についての解析結果が報告された。 同研究は、Japan Breast Cancer Research Groupが管理する進行・再発乳癌データベースプロジェクト(JBCRG-ABCD project)の臨床データを利用して実施された。JBCRG-ABCD project には、2024年9月時点で54施設が参加しており、既に25,000例以上の症例が集積されている。 今回の研究の対象は、2020年6月1日から2023年10月31日までに登録された全症例であり、年齢やパフォーマンスステータス(PS)、合併症、乳がんのサブタイプや転移の有無、再発までの期間、治療内容や治療期間などに関するデータが収集された。検討方法としては、70歳未満、70歳代、80歳以上の3つの集団に関して、患者背景やアウトカム(BRACAnalysis診断システムや遺伝子パネル検査の提出率、治療期間、生存率など)が比較された。 期間内に1,722例(70歳未満が1,317例、70歳代が326例、80歳以上が79例)が登録された。診断時の平均年齢は60.3歳(±12.3歳)、また術後再発症例が約60%に対してDe novo(治療歴のない)IV期が約40%であり、年齢層別に有意な差は認められなかった。 一方で、80歳以上の集団において、有意にPSの悪化や合併症の増加傾向が認められた。また、化学療法の実施割合(70歳未満で34%、70歳代で26%、80歳以上で15%)、およびBRACAnalysisの実施割合(33%、19%、10%)や遺伝子パネル検査の実施割合(7%、2%、1%)は、年齢が上がるにつれて低くなる傾向が認められた。 追跡期間中央値は28.8ヶ月で、初回治療期間に年齢による有意な差は認められず、多変量解析においても、高齢であることは一次治療期間の短縮に影響しないことが示された。一方で二次治療期間に関しては、70歳未満や70歳代と比較して80歳以上の症例において有意に短縮することが示された。また、全生存期間および乳がん特異的生存期間に関しても、80歳以上で有意な短縮傾向が認められた。 以上の結果から、一次治療期間は80歳以上の高齢患者でも変わらない一方で、化学療法と遺伝子検査の利用率は低い傾向を示し、それが全生存率および乳がん特異的生存率の低さにつながっている可能性が示唆された。 今回の結果を受けて発表者である満枝先生は、「国内の高齢転移性乳がん患者の治療内容と転帰に関する実態を示すことができました。身体・認知機能の低下の見られる高齢者の転帰とQOLを改善するためには、適切な評価を通じた過不足のない治療が重要です」と結論付けた。 質疑の中では、80歳以上の患者における二次治療以降の介入が控えられている可能性が指摘され、「高齢患者の二次治療にも使えるような、化学療法に代わる副作用の少ない治療開発が必要であると思います」と満枝先生は強調した。 また、同セッションの座長であり高齢者に対するがん治療研究の第一人者でもある水谷友紀先生(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)は、年齢やPSだけでなく、高齢機能評価(GA: Geriatric Assessment)によって、高齢者の身体的・精神的・社会的な状態を客観的に評価することの重要性についてコメントした。「高齢者のがん治療の実態を知るためには、今回のようなリアルワールドデータは非常に重要です。今の実臨床ではGA評価が一般的ではないですが、今後、年齢に加えてGAによる評価に基づくサブグループ解析データが蓄積していくことで、より正確なエビデンスが得られていくことに期待したいです」(水谷先生) 関連リンク: 第33回日本乳癌学会学術集会 ウェブサイト
ニュース 乳がん 高齢

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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