ASH 2020 プレビュー-ノバルティス社はタシグナの後継品を売り込むEvaluate Vantage(2020.11.23)より


  • [公開日]2020.12.03
  • [最終更新日]2020.12.03

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

スイス・ノバルティス社のアスキミニブは、間もなく開催される第62回米国血液学会議(ASH 2020)で発表される主要なデータががん専門家たちの注目を集めている。

ノバルティス社のBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬アスキミニブは、比較的知られていない期間が何年も続いたが、慢性骨髄性白血病CML)関連製品としては同社第3の柱となる可能性があることが、ASH 2020で発表される予定の最新の主要データから示唆されている。

今回の発表は、CMLのサードライン以降の治療薬としてアスキミニブと米ファイザー社のボシュリフを比較したAscembl試験によるもので、主に血液がんに注目している投資家にとっては大きな関心事となりそうだ。その他、ASH 2020で発表されるオンコロジー領域に関連するデータには、多数のバイスペシフィック抗体が含まれており、そのうち2つの抗CD20抗体はスイス・ロシュ社のものだ。

ノバルティス社にとってアスキミニブは貴重な資産だ。同社のブロックバスターであるグリベックは、BCR-ABL腫瘍性タンパク質を標的とした初めてのCML治療薬であり、この疾患と治療に革命をもたらした。

同じクラスの薬剤としては、米ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社のスプリセル、ファイザー社のボシュリフと武田薬品のアイクルシグが続き、ノバルティス社自身のタシグナも重要なファーストライン治療薬である。しかし、グリベックは現在特許が切れており、タシグナは残り3年の独占権しか残っていない。

今、ノバルティス社は、作用機序的な奥の手を持っていると考えている。これまでに承認されたBCR-ABL阻害薬とは異なり、アスキミニブは腫瘍タンパク質のABLミリストイルポケットに特異的に結合するという、ファースト・イン・クラスの作用機序によって薬剤への耐性獲得を阻害することができると、ノバルティス社は主張している。

8月には、233人の患者が参加したAscembl試験で良好な結果が得られたと報告されており、ASH 2020のLate-breaking Abstracts(LBA)おいて、主要評価項目である24週時の分子遺伝学的奏効率は、アスキミニブが25.5%であったのに対して、ボシュリフは13.2%であり、その差はP値0.029だったことが明らかとなった。重篤な有害事象の発生頻度は、ボシュリフよりもアスキミニブのほうが低かった。

この試験には2種類以上の治療法が失敗に終わった患者が組み入れられたため、ASH 2020でのデータディスカッションでは、ベースラインの不均衡に焦点が当たるかもしれない。アスキミニブの被験者は、サードラインが52%、フォースラインが28%だったのに対して、ボシュリフではそれぞれ40%と38%だった。ファイザー社の薬剤(ボシュリフ)に対するアスキミニブの優位性は、サードライン群で最も顕著だった。

この詳細なデータは、アスキミニブがCMLの市場でどれだけ大きなシェアを占めるのかを決定する上で重要なことかもしれない。ボシュリフはファーストラインの適応を有しているが、通常はセカンドライン以降に使用され、第三世代の薬剤であるアイクルシグはセカンドラインかそれ以降の重要な選択肢となっている。

もし、ノバルティス社の目的がアスキミニブによるCML領域のシェア維持だとするならば、ロシュ社が高齢化リンパ腫/慢性リンパ芽球性白血病のブロックバスターであるリツキサンのようなCD20を標的とした製品開発を進めている背景にもノバルティス社と同様の考えがあるのかもしれない。

この目的を達成すために、ロシュグループは現在第3相試験中の2つの抗CD20バイスペシフィック抗体、モスネツズマブとグロフィタマブの中間臨床データを発表している。同様の作用を持つ米リジェネロン社のオドロネクスタマブは開発の初期段階にあり、ASH 2020では同じセッションで取り上げられる。

現状見受けらえる奏効率は、抄録で開示された早期カットオフ時点でのデータだが、より重要なのはASH 2020でアップデートされるデータであり、それはおそらくより後期のカットオフ時の結果を含むだろう。

Immuno-Oncology製品に注目している人たちは、かつて一躍脚光を浴びたTIM3やICOSなどの抗原を標的とする薬剤は今でも存在していることに触れるだろうし、米アッヴィ社のTNB-383Bのような多発性骨髄腫に対するBCMA(B細胞成熟抗原)標的療法もいつも通り多数存在している。

TNB-383Bは別の意味で重要なのかもしれない。アッヴィ社は昨年、米テネオバイオ社から同剤の開発に向けた戦略的提携を結んだからだ。抄録に引用された全寛解率は高用量でもわずか52%であり、ASH 2020のデータは同社のディールの手腕にさらなる疑問を投げかける可能性がある。

ASH 2020は、12月5日~8日にバーチャル形式で開催される。

■出典
Ash 2020 preview – Novartis touts its Tasigna follow-on

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